Voyage of Prayer―祈りの旅
Voyage of Prayer―祈りの旅 (JUGEMレビュー »)
今西 勇人
祈りの姿勢は、手を合わせ目を閉じる形だけではありません…人が祈る姿は千差万別なのに、祈るという行為やその思いには共通性が感じられるのです。
宗教の奥にある、世界じゅう一人ひとりの心の静けさに。
紹介記事【2016.09.06】
チャンス [DVD]
チャンス [DVD] (JUGEMレビュー »)

「人生とは心の姿なり」
シャーリー・マクレーンは、本作の撮影中にピーター・セラーズが前世について話した事を著書「アウト・オン・ア・リム」で書いていました。
それを意識したせいでスピリチュアルな印象を受けましたけど、むしろ本作の笑いはそうした見方にあるような。
無知な老人チャンスが教養人を翻弄するシュールな寓話、ですが予想外に可笑しいのです。
紹介記事【2016.10.08】
逮捕しちゃうぞ [DVD]
逮捕しちゃうぞ [DVD] (JUGEMレビュー »)

藤島康介が原作の、婦警コンビが活躍するOVAです。
図々しいまでに快活な夏実と大人しそうで冴えたドラテクの美幸、という動と静のバランスは同じ原作者の「パラダイスレジデンス」を思わせますが。
この後に続く同名のTVシリーズにはない凝った実車ディテールや派手なカー・アクション、まだ昭和の気配が色濃い東京の風景は90年代のトレンディ・ドラマっぽいけど…ま、肩の凝らないノリが好い案配なのです。
紹介記事【2016.08.21】
となり町戦争 (集英社文庫)
となり町戦争 (集英社文庫) (JUGEMレビュー »)
三崎 亜記
2016年に読んだ小説から一冊を挙げるのは本当に悩みましたが、本書は外すことが出来ません。
デビュー作でこれって、凄すぎない?
ちょっとシュールでフワフワとした空気の中、自治体行政の地域活性化という名目で遂行されているらしき戦争…“僕”が聞く唯一の銃声は終戦を告げる号砲で、これは「地獄の黙示録」で引用されていた詩の一節“これが世界の終わりのすがただ/ドンともいわないで、すすりなきのひと声で”を連想させます。
文庫の表紙カバーに惹かれたのですけど、これが衝撃的な場面とリンクしてたとは…戦争とは銃器や死体ではなく、本質は経済の真の顔なのだと実感しました。
紹介記事【2016.11.13】
Yesterday,Yes a day (フラワーコミックス)
Yesterday,Yes a day (フラワーコミックス) (JUGEMレビュー »)
岩本 ナオ
話の舞台が共通する「雨無村役場産業課兼観光課」も好かったけれど、個人的には先に読んだ本作の方が好みかも。
地方暮らしの女子高生とか恋愛未満のリアリティが新鮮、この年頃だって恋愛が日常の中心にある訳じゃないんだよねっていう。
紹介記事【2016.03.30】
Eagle Has Landed: Live
Eagle Has Landed: Live (JUGEMレビュー »)
Saxon
どう見てもビジュアルが「スパイナル・タップ」そのものですが、当時の僕にとってはAC/DCの「BACK IN BLACK」とマイケル・シェンカー・グループの「MSG」と並ぶHR/HM愛聴盤でもありました。
でも他のメンバーはあんまりメタルっぽい出で立ちじゃなくて、ストラト遣いのポールは野球帽かぶってたし…ぶっちゃけボーカルのビフ以外はギブソンSG遣いのグラハムも当時は滅多に見かけなかったプレベ弾きのスティーブも見た目がオッサン臭くて、そういうビジュアル無視な姿勢が僕には却ってシブく思えたのです。
意外にロックンロールしてるベースラインや無駄に手数はないけどツーバス並みに速いドラムスやメタルにしては珍しいワウペダルを使ったギターソロなど今でも充分カッコイイ!
リフ中心とはいえメロディアスなフレーズも織り込み、改めて聴くと楽曲構成も隙がないなと感じました。
紹介記事【2016.02.27】
アイアン・スカイ [DVD]
アイアン・スカイ [DVD] (JUGEMレビュー »)

2018年、月からナチスが攻めてくる?!
パルプSFテイストにシニカルなユーモアを絡めた、おバカ路線のB級映画。
フィンランド人がサウナで酔っ払いながらアイディアを出し合い、製作費のうち約1億円をカンパで集めたというフィンランド・ドイツ・オーストラリア合作。
ほぼ全編ブルーバック撮影というレトロ活劇「スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」と併せてオススメします、もちろん両作品とも特撮だけの映画じゃあありませんよ?
紹介記事【2016.04.16】
忘れられた日本人 (岩波文庫)
忘れられた日本人 (岩波文庫) (JUGEMレビュー »)
宮本 常一
本書は主に、対馬や周防大島や伊予といった西日本の村落で聞き取った話から構成されています…本業の傍ら、農家に泊めてもらうので米を持参で戦時中も日本各地を歩いて回ったそう。
正直、読み始めは部外者が首を突っ込んでいるような取っ付きにくさを感じたのですが…間をおいて開いたら、妙にスラスラ入ってきました。
何だか不思議です、本書自体が村の古老のようで…この深い根っこに繋がるような安心感、古臭く陳腐な表現ですが「元気が出る」のです。
紹介記事【2016.06.21】
幻想水滸伝III
幻想水滸伝III (JUGEMレビュー »)

明代中国の伝奇歴史小説「水滸伝」をベースにしたRPGシリーズの1つで、本作の特徴は同じ物語を複数の主人公を通じて体験するという趣向です。
今回は商業国家の騎士団長、名門貴族のクリスでプレイ…以前にプレイした平原部族の少年ヒューゴや大国の傭兵を率いるゲド隊長と違ってしがらみだらけの気丈な女性。
商業国家と平原部族の対立に乗じて領土拡大を画策する大国と、裏で暗躍する一味…シリーズの他作品は知りませんが、異世界クライム・サスペンスといった感じ?
絶対悪など存在しない、なんて分かってはいても相互理解は難しいというね。
小説や漫画などとは異なる、RPGという形式ならではの物語を味わえます。
紹介記事【2016.06.29】
イノセンス スタンダード版 [DVD]
イノセンス スタンダード版 [DVD] (JUGEMレビュー »)

前作「ゴースト・イン・ザ・シェル」から引き続き押井守監督が描くは、攻殻機動隊のバトーとトグサが挑む「暴走ガイノイド連続殺人事件」の顛末。
そして、ネット上の全一となった少佐こと草薙素子を、もはや見つめる事も触れる事も叶わないバトーの愛の物語でもあります。
重厚なCGアニメで表現される電脳社会の、二重の意味で人工的な儚さ…「私」や「貴方」の定義とは何か、肉体は自由の枷なのか。
前作のラストで少佐が言っていた“2501…それいつか、再会する時の合言葉にしましょ”という台詞を覚えていると、ちょっと感動的かもしれません。
紹介記事【2016.11.27】
二週間の休暇 (MouRa)
二週間の休暇 (MouRa) (JUGEMレビュー »)
フジモト マサル
まるで村上春樹ワールドの絵物語、といったら失礼でしょうか…あの読後感を簡易化して視覚的にまとめたような一冊、安直すぎるオチも却って心地よく感じられました。
うぐいす色と黒の二色刷り、計算されたコマ割りとアングル…奥付けページの縁に這わせたカマキリに至るまで、ちょっと手元に置いておきたくなります。
紹介記事【2016.02.04】
パートナーズ・イン・クライム
パートナーズ・イン・クライム (JUGEMレビュー »)
ルパート・ホームズ
1曲目「Escape (the pina colada song)」は、ケイト・ブッシュの「Babooshka」と対になるようなシチュエーションを歌っていながらライトで喜劇的な展開…また「Answering machine」ELOの名曲「Telephone line」と対になるような、どこか惚けた味わいのある留守番電話の歌なのです。
フェイズ・ギターに'79年リリースという時代を感じます、今でこそ好きな音ですけど十代の頃は中途半端なエフェクト感が気持ち悪かったので一概にオススメとは言い難いのですが。
紹介記事【2016.01.23】
クン・パオ! 燃えよ鉄拳〈特別編〉 [DVD]
クン・パオ! 燃えよ鉄拳〈特別編〉 [DVD] (JUGEMレビュー »)

本当にね、どんだけ買って観てんだ僕は!
70年代のB級カンフー映画を元にデジタル処理で大胆に改変、正直この笑いは人を選ぶと思います。
実際、ちょっとオススメしにくいコメディです…特にCGパートなんて、全然オススメ出来ませんけども。
音声バリエーションの豊富さで、何度でもどこかツボにくるのです僕は。
紹介記事【2016.06.19】
図説 国旗の世界史 (ふくろうの本)
図説 国旗の世界史 (ふくろうの本) (JUGEMレビュー »)
辻原 康夫
いつもながら面白い、河出書房新社の図説シリーズ「ふくろうの本」の一冊です。
紋章学の見地に基づいて、色遣いや図柄で世界各国の国旗を分類すると…割と知ってる国旗の雑学レベルから歴史的な成り立ちが見えてくる、この切り口が実に面白い!
本来は支配者の紋章であり権力への服従を意味していた「旗印」が、フランス革命から民衆の団結や社会の理想を表明するように…赤青白で構成された国旗を“民主主義国家の旗印にふさわしい配色という固定観念”と断言し、9・11後の「SHOW THE FLAG」を“恫喝的スローガン”とブッタ斬る著者は本書自体も“疑問の解明に寄与するとは到底思えない”と切り捨てますが。笑
「世界史を読みたくなる」歴史ネタの雑学本、として辻原康夫(編)「読みたくなる世界史」と併せてオススメします。
紹介記事【2016.11.24】

最近読んだ本
ウィリアム・ギブスン(著)、浅倉久志(訳)「あいどる」

先日読んだ「ニューロマンサー」がイメージと違ってたので、また引っ張り出して読み直してみましたよ…それにしても、いくらスチームパンク系の蔵書が本書しかなかったからって表紙カバーがボロボロになるまで読んだっけかなぁ〜?笑
読み比べてみた印象としましては、長編を書き慣れて文章がこなれたのか単にハードボイルド文体は疲れるとか不人気だったとかで変更したからか…本書の方が格段に読みやすいですね、まぁ翻訳者が違うっていうのも大きいのでしょうが。
それに執筆時からは近未来に相当する現代と付かず離れず程度のサイバー描写、という点も関係ありそう。

でも一番の違いは、本書で2人に設定された語り手が両者とも世間に疎いって事かも…片や十代の少女ですし、片や一種の“カウボーイ”ではあれど特殊な成育環境を経て特殊な才能を獲得した孤独な青年ですし。
2人が関わるのは、ワールドワイドなビジュアル系ユニット“ロー/レズ”メンバーとバーチャル・アイドルの結婚話…そして国家級ナノテク兵器を追うロシア系マフィアからの接触、って分かりやすいというかいささかラノベ的といいますか。笑
本書はスプロール三部作ではなく所謂“橋”三部作の二作目であり、大地震後のエキゾチックジャパンな東京の描写が興味深いです。


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    | books | 2018.02.20 Tuesday | comments(0) | trackbacks(0) |
    最近読んだ本
    片岡義男「花のある静かな休日」

    今まで僕は、著者の筆致をドライだのプラグマティックだのと評してきたけれども…今回は読んでいて、登場人物すべてに心が枯れ果てている印象を持った。
    もしも登場人物が「嬉しい」とか「素敵」などと言っても、その感情が伝わってこないのだ…だが仮に「退屈」と言えば、それは寧ろ違和感なく受け取れる筈。
    何故かと考えてみて、心理描写がないからだと思った…退屈そうなのは描写がスタティックだからであり、感情吐露が白々しいのはエモーショナルな発言に相応しい内面を読者の想像に一任しているせいだろうと。
    こんな上っ面だけの言動を読んで、何が面白いのか?

    これが面白いのだ、もはや個人的な欲望や情念などといった内面を掘り下げる物語を必要とする読者はトレンディドラマを観ているだろう…著者は敢えて登場人物たちに人間味を感じさせず、ある意味トレンディドラマ以上に現実感の希薄なキャラクターを描こうとしたのではないか?
    本書に収録された話は短編というよりも短く、目次がないばかりか一話毎の改ページもない…前の話から二行空けて題名があり、一行空けて本文が続いてゆく。
    基本的には男性と女性の会話を中心とする一幕物で、たまに女性の独白や空想で完結している話がある「片岡版ショートショート」。

    例えば最初の「桟橋にて」は“彼”が実家での見合いに行くため年上の女性から車を借りる際の会話文であり、次の「午後二時三十分、会議。四時三十分まで」は退屈な会議に上の空な女性が浸っているセンチメンタルな妄想を描いている。
    「水を飲むだけ」は空っぽの部屋を何度となく訪れてる女性の話、こんなモチーフで読ませるのは驚きだ。
    「空の青さ」は一夏をリゾートホテルで過ごす、ボディ・ビルディングが好きな翻訳家“優子”のスケッチ…海外の現代作家が書いた短編小説のような印象と、著者にしては珍しく登場人物に固有名詞が与えられていて新鮮に感じられた。

    本書は結婚を話題にする話が多く、著者の価値観を反映したのか「恐怖小説の発端」などシニカルな意見が全体として目に付く気も。
    「あの美しいグリーンを見てほしい」の、女性の瞳が緑色からブルーに変わる話は個人的に興味深い…1ページ超の短さで綴る「雨の彼方からの手紙」と、長い時間経過をトリッキーに用いた「男性がふたりに、女性がひとりの場合」は“彼女”の現状を想像させる。
    「コーヒー一杯だけ」は雨の夜に行く先々が定休日で、文章の色気が心地好い。
    しかし2章立ての「結婚して三年」と、続く「結婚することになりました、と彼は言う」はくだくだしい。

    「私たち五人」の辿った結婚と離婚のロンドは本当に(何が面白いのか?)と思ったが、上司の酒席に付き合わされた帰途を描く「彼女との会いかた」はインディアンの(怒りの手放し方)を連想して深く心に残った。
    ビアンというかネコ化した女性の「ブルーベリーが落ちる」、フィージー音楽のLPが録音された場所にあるモカンボ・ホテルの英国式朝食で衝撃を受ける「一杯の紅茶の、ずっとむこう」…ロランド・ハナの曲に触発された「ブラックベリーの冬」の思い出話は恋愛が生む孤独感を、また「D・ホックニーのプール」は屋内プールの浮遊感と閉塞感を絶妙に捉えている(「現在は否定されざるを得ない」に関しては、以前の記事に書いたので省略)。

    巻末の3話「防波堤で会話する」「ふたりの湖面標高」「なにか気になること」は共通して、旅先の男女が会話しながら物語の骨格を組み立ててゆく話だ…殊に最後の「なにか〜」は前述の「水を飲むだけ」制作裏話みたいで興味深い反面、何故か興を削がれたような鼻白んだ気持ちになった。
    著者が実際に、このようにして知的な女性とゲームを楽しむようにストーリーを構想している気は何故かしないのだが…こうした入れ子めいた構造は意欲的とはいえ説明的な進行感は否めず、作風が煮詰まった苦肉の策ではないかと勘繰りが浮かんでしまうのは残念。
    しかし再読したら、またいつか読み直したくなった。


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      | books | 2018.01.31 Wednesday | comments(0) | trackbacks(0) |
      最近読んだ本
      ウィリアム・ギブスン(著)、黒丸尚(訳)「ニューロマンサー」

      初版'86年のハヤカワ文庫刊、本格的サイバーパンク到来を告げた著者が'84年に発表した長編第一作です…本書も「虎よ、虎よ!」並みに値段が高止まりしてたんですけど、気が付けば¥372まで下がっていたので送料込みで¥629なら買い時かなと思いポチッと購入。
      しかし第一章が「千葉市憂愁 (チバ・シティ・ブルース)」とは、のっけからパンチの利いた訳出だわ…浅倉久志が“IDORU=あいどる”と訳したのが本書の名訳“さらりまん”に由来しているように、著者の造語に対する黒丸の名訳が以降の邦訳サイバーパンクにおけるデファクト・スタンダードになったのも納得。

      ちなみに表紙カバーを手掛けたのは奥村靫正(ゆきまさ)で、これまた「あいどる」表紙カバーの元ネタと思えなくもないな…と度々「あいどる」を引き合いに出してるけど、思えば著者の小説って他は「ヴァーチャル・ライト」を読んだ筈なのに内容は覚えてないと気付いて今更ビックリ。笑
      とはいえ、先ず面食らったのは(ギブスンってこんな読みにくい文章だったっけ?)という意外さでした。
      如何にもハードボイルド小説を意識した硬さは、もしや期待の重みに緊張した表れか…主観視点で一切の説明なしに近未来へ放り出されるのはともかく、読み慣れるまで結構かかったな。

      侵入対抗電子機器の頭文字を取ったICE、その氷を割るのを生業とするカウボーイ…クライアントを裏切って神経を焼かれた元カウボーイのケイスは、今やチバの外人街で半端仕事を請け負って食い繋ぐ有様。
      そんな彼をスカウトし、治療ついでに仕込んだ真菌毒の時限解除を枷にデカいヤマを依頼する謎の男…相棒は人体改造した女アサシン、先ずはケイスの師匠“フラットライン”の記録人格と厄介な氷を割る羽目に。
      ブラック・アイスは後の「攻殻機動隊」でいう攻性防壁、ケイスもまた脳死寸前の目に遭いつつニューロマンサー攻略…同時進行する冬寂の正体、そして目的。

      Wikipedia情報を後から読んで(そういうコトか!)と思う点ばかりでした、こんなの一度じゃ分からないって…それとマイクロソフト社は既に創業していたそうなので、本書から何かヒントを得た訳ではないのね?
      ただし“遅効ウィルス”といい、明らかに「攻殻〜」は影響下にありますな…しかし意外にも「ブレードランナー」は本書より早かったようです、もしかしたら先行する著者の短編にアジア的な未来絵図が描かれていたのかもしれませんが。
      本書はまた「スプロール三部作」の一部らしく、スプロールでググると“虫食い状に拡がる都市を意味する”とあったのですけれど。

      このググるという行為自体が本書の執筆時には存在し得なかった事を思い、何気なく読み飛ばしていた描写の中に現代のリアルな感覚が予言されていたと考えてゾクゾクしました…その一方でキーパンチされた細長い紙を吐き出すコンピュータなんかも描かれている辺りは、やはり先日の「2300年未来への旅」で感じた(その時代や文化の延長としてイメージされた未来)でしかないんだなぁと。
      他者の意識や感覚をモニターしたり視覚ハッキングなどは先鋭的ですが今や「攻殻〜」でイメージしますね、スペースコロニーの貴族的退廃は「未来惑星ザルドス」の流れを感じたりも。
      「ニューロマンサー」(←左クリックで拡大表示されます)


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        | books | 2018.01.16 Tuesday | comments(0) | trackbacks(0) |
        最近読んだ本
        うえお久光「紫色のクオリア」

        所謂まとめサイトの「オススメのSF小説を教えろ」的な記事で名前が挙がっていて、Amazonで検索したら中古が¥1(送料込みで¥258)!…それなら試しに読んでみるかと、ついでに関連性が指摘されてた「虎よ、虎よ!」も買って予習済み。
        あとがきによると、本書のイラストを担当した漫画家・綱島志朗と「ロボットと女の子」というテーマの誌上コラボ企画で書いた短編が元になったそうで…2編+αの連作構成となっている本書の1編『毬井についてのエトセトラ』が“初出時「紫色のクオリア」より改題”とあるので、それが元の短編だったようです。
        初版'09年、電撃文庫刊。

        電撃、でお察しの通りラノベです…最近はアニメみたいなイラストの口絵ポスターで登場人物紹介にするのが流行りなのね、まぁ爆乳幼女パンチラ的な絵柄じゃなくて好かった(あの手はデカい釣り針に思えて逆に読む気も萎えるので)。笑
        本書の主役は、自分以外の人間がロボットに見える紫色の瞳の少女…あおいちゃんみたく「はわわ」などと口走るのは見た目どおりですが、いわゆるガンプラを直感で速組みする一面も。
        決して(メカに強い)とは描かれないのだけれど、そんな彼女だからこそロボット(に見える人間)を改修してしまえるのであります。
        この発想はなかったなぁ!

        そして視点人物、つまり話の語り手は彼女の友人で平凡なスポーツ少女…ですが「1/1、000、000、000のキス」では友人の命を救うため、改修で生じた能力を駆使して未来に過去に並行世界へ大活躍!
        ここら辺は確かに「虎よ、虎よ!」のクライマックス部を発展させた感じがありますね、むしろ元より面白くなってるのですが…やや(ご想像にお任せします)的な忙しない展開は、夢オチか妄想に思えてきたりも。
        あるいは、そこが本書のギミックなのかも…例えば「人が個々の事象を関連付けてしまう」物語性と、東洋思想的な「時間や空間という幻想」のブリッジング?

        この2話目ではもう一人、紫色の瞳に関心を抱く謎の組織から留学生として派遣された金髪碧眼の少女が重要な役回りを果たします…つまり、主要なキャラはたった3人しかいない訳で。
        1話目では主役と過去の因縁を持つクラスメイトやシリアルキラーも活躍(?)しますが、描かれ方は脇役然としていてね…それと主役少女が見ている(人間=ロボット)設定も1話でこそ活かされましたが、2話目では彼女の稀少価値を説明しているに過ぎないし?
        このカルト作品にありがちな浅彫り感、狙っての事なんだか…ロボットの外観が対象の潜在能力に依存する辺り、もっと彫れるだろ!

        あ、因みにラノベ王道キャラの金髪碧眼留学生少女ね…苗字がフォイルで所属組織がジョウント、これも「虎よ、虎よ!」ネタです。
        っていうか「虎よ〜」繋がりって2話目だけじゃん?
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          | books | 2018.01.09 Tuesday | comments(0) | trackbacks(0) |
          最近読んだ本
          アルフレッド・ベスター(著)、中田耕治(訳)「虎よ、虎よ!」

          寺田克也の印象的なカバーイラストが気になってはいたものの、定価(+送料)で買ってまで読もうとは思わず放置していたら…たまたま¥200の古本を発見、送料が¥257でも買うなら今だ!
          といった次第で、古典的SFの名作と誉れ高い本書を遂に入手しました…ちょうど「紫色のクオリア」に興味を抱いて検索したら本書のオマージュ的な要素があると知り、では先ず本書から読んでおこうかなと。
          だけど個人的には、それほどかぁ?といった感じでしたね…リアルタイムで読んでたら違ったのでしょうが、名作故に散々パクられまくって今となっては新味が薄れてしまったのかも。

          あ、結構ネタバレありますので予めご注意くださいね…と予防線を張っといて早速ですが、この「凡庸な男が神の座に至る」という神話の世界そのまんまなストーリーの骨格に関しては度々「新しい太陽の書」シリーズを連想しました。
          名もない人物の放浪流転が雪だるま式に視野を拡げ、やがて驚くべき世界の全貌を明らかにしていく的な。
          まぁ本書の主人公ガリー・フォイルは能動的ですし、本書の方が先に書かれた訳ですし…そもそも「モンテ・クリスト伯」の復讐譚を下敷きにしたという本書、自分を見殺しにした者への怒りに駆り立てられ、巨大な権力や絶望をも凌駕していきます。

          '39年にSF作家として登場した著者は、40年代をアメコミやテレビの脚本家として過ごし50年代にカムバック…'56年の本書などで名を馳せるも60年代は旅行誌ライターやテレビ業界の内幕物に専念、70年代に三再びSF小説に復帰するも80年代から闘病生活の末に永眠したそう。
          本書の初邦訳は'78年、という事は石森章太郎が「仮面ライダー」の改造人間や「サイボーグ009」の加速装置を着想したのは原書に由来するのかな?…共感覚の描写に用いたフォントの手法は邦訳から間もない時期に模倣され、寺沢武一は「コブラ」でその視覚的表現を試みていましたね。

          もしかしたら「新しい太陽の書」シリーズを連想してしまったのは、その分量に匹敵する程の奇想天外なアイデアが凝縮されているせいなのかも…とにかく矢継ぎ早に新たな難関が迫り来る目まぐるしさは、連載物にありがちな感もあり。笑
          宇宙船の残骸で救助を求める序盤から、人体改造を施されて生還した地球で宇宙船を見付け出すも暗黒の迷路で終身刑となる辺りで1巻分かな…闇医者の整形でサーカスの座長になりすまして密かに当時のクルーを捜し回る辺りで2巻、火星のカルト教団に潜入してから怒涛のクライマックスまでを3巻としても充分な位、勢いよく話が展開します。

          脇役達も小惑星帯の原住民やら宇宙移民出身のテレパスやら、放射能まみれの科学者にダルマ状態のカルト信者などキャラ立ちまくりで。
          更に星間戦争が勃発するわ究極兵器が出てくるわ、復讐に生きる男もラストは時空に呑まれて最終解脱しちゃって…っていうこの「8時だよ!全員集合」前半コントのバラシみたいな投げっぱオチが、一番「新しい太陽の書」っぽいんじゃ?笑
          二十四世紀は宗教が廃れてもスコダとかシトロエンとかRCAビクターといった企業が貴族の家系になっている政治的レトロフューチャーって70年代に流行ったのかな、その辺は微妙に「未来惑星ザルドス」っぽい気も。


          追記:本書の初邦訳は、Wikipedia情報によると“1958年に講談社SFシリーズの1冊として『わが赴くは星の群』の書名で刊行された”そうで、その後“1964年に早川書房のハヤカワ・SF・シリーズから再刊されたときに『虎よ、虎よ!』に改題された”との事でした・・・因みに'78年はハヤカワ文庫版としての刊行年で、僕の(石ノ森章太郎が原書で読んだ説)は思いっ切り勘違いでした。訂正してお詫びします。


          以下、個人的メモ
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            | books | 2017.12.30 Saturday | comments(0) | trackbacks(0) |
            最近読んだ本
            リチャード・バック(著)、五木寛之(創訳)、ラッセル・マンソン(写真)「かもめのジョナサン【完成版】」

            あのカモメが、約40年の時を越えて帰ってきた!
            3章立てだった旧版に「Part Four」を付け加えた【完成版】、実は新たに書き足したのではなく'70年に旧版を発表する前から書き上げられていたのだそう。
            例えるなら、ビートルズの未発表トラック的な?…まぁ研究者には資料的価値があるでしょうけどね、当時の著者が推敲を重ねた結果(この物語に不必要ない)と判断じて削除した最終章。
            それは後に書かれた「ONE」の(ページ教)というエピソードに反映されている気がして、やはり本書は旧版の方がスッキリまとまっていると思いましたよ。
            「Part Four」は蛇足。笑

            Amazonでのレビューを見ると、旧版は刺殺されたオウム真理教の元幹部が愛読書として公言していたようで…それを本書の内容に絡めて、だから何?って気が。
            それだけ読み手に委ねる間口の広さを示している、という意味では興味深いと言えますけどね…まぁ気味が悪いなら読まなきゃ好いです、多分そういう人には面白がれない物語ですから。
            因みに訳者はこの【完成版】から“創訳”と謳っていますが、旧版のあとがきにも“創作翻訳=創訳”の記述がありました…要は既に日本語化してある原訳を下敷きにして、訳者は小説家である自身の言葉へと移し変えただけだったのです。

            なるほど、つまり村上龍は先例に倣っていたのか!
            因みに村上訳の「イリュージョン」は、本書と対になっているような印象がありますね…フレッチャー若しくはアンソニーを主人公リチャードに、ジョナサン・シーガルをドナルド・シモダに置き換えたら一つの事象を二つの側面から描いたと解釈も出来そう。
            野暮は承知で、初版'77年の旧版と本作との違いを探してみたら…“「無事着陸を祈る、ジョナサン」(旧版p.58)”が“「さようなら、ジョナサン」(完成版p.68)”に変更された程度で、他は写真のコントラストが弱くなって旧版より淡い位ですが写真を目立たなくしたいのか(カット数は増えてるけど)?

            ところで今って、著者の奥さんはレスリーではなくキャサリンというのね…「ONE」や「僕たちの冒険〜翼にのったソウルメイト」でのラブラブっぷりを思うとこっちは寂しい気持ちになりましたが、著者ほどの理解をもってしても男女の機微はまた別問題とは深いなー。
            例えばジョン・レノンだって、生きていたら今頃はオノ・ヨーコじゃない誰かと「ベッド・イン」しただろうと思えば分からなくはないんだけども…結婚しようが愛情なんて永遠じゃなく、魂の成長の一過程に過ぎないと理解していてもね。
            既にレスリーとは一緒じゃなくなっていた、その事の方が本編よりも様々な事を考えさせてくれましたよ。


            〈リチャード・バック〉関連記事:
            【最近読んだ本】平五木寛之(訳)「かもめのジョナサン」| 2008.06.08
            【最近読んだ本】村上龍 (訳) 「イリュージョン」| 2008.09.17
            【最近読んだ本】平尾圭吾(訳)「ONE」| 2009.08.28
            【最近読んだ本】五木寛之(訳)「かもめのジョナサン」| 2010.12.26
            【最近読んだ本】五木寛之(訳)「かもめのジョナサン」| 2011.02.03
            【最近読んだ本】佐宗鈴夫(訳)「イリュージョン 悩める救世主の不思議な体験」| 2014.01.07
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              | books | 2017.12.21 Thursday | comments(0) | trackbacks(0) |
              最近読んだ本
              シルヴィア・ウォー(著)、金子ゆき子(訳)「あの星への切符」

              如何にも海外ジュブナイルっぽい表紙カバーのイラスト、そして新井素子のデビュー作みたいな邦題…まぁ簡単に言っちゃえば「パパとママは宇宙人?!」とショックで家出した娘の小さな冒険物語、ってSFぶっといて実は勘違いなんて話だったらどうしようかと。
              原題は「Earthborn」、おぉ如何にもSFっぽい!…でもまぁ、蓋を開けたら誠にジュブナイルでした。笑
              宇宙人の文化や母星のディテールが曖昧なので、確かにSF感は薄いのですけども…地球人と同化した暮らしぶりの気遣いが本物っぽくて、ファンタジーSFとしては興味深い設定です。

              オーミンガット星から地球人の文化を探査に来ている両親は帰還指令に寂しさ半分のウキウキ状態、だけど地球生まれのネスタ12歳は超ブルー…絶対に今いる家から離れたくない、でも指令に背けば両親は二度と母星に戻れない二律背反。
              舞台はイギリス北部のノース・ヨークシャー州、ちょっと前に読んだ「奇術師」の地域からは遠いにせよイギリス感とでもいうか相通じる雰囲気がありますな。
              読んでる途中に出てくる、自称オーミンガット星人の少年に(もしや?)と思えば案の定…実は本書、三部作の二作目だったのだそう。
              原著は'02年、邦訳は'06年ランダムハウス講談社刊。

              “中学校の国語教師だった”著者が孫に捧げる今風おとぎ話、流石に学校内の描写は簡素にしてリアリティありますね…もしかして“学校の食堂で食べない生徒たちが持参した昼食を食べることができる”というサンドイッチルームも、現地の学校には実際あるのかな?
              “子供たちは生まれながらにして、お話はお話であるということに気づいている”という一文に「僕とおじいちゃんと魔法の塔」を連想し、似てる要素があるなと思いました…何といいますか、子供の反抗心をこそ愛で育てるべし的な?笑
              退屈かと思いきや、意外と物語に惹き込まれました。


              関連ありそうな記事:
              【最近読んだ本】ジーン・ブルーワー「K−パックス」| 2010.03.06
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                | books | 2017.12.12 Tuesday | comments(0) | trackbacks(0) |
                最近読んだ本
                村上龍「空港にて」

                これまた再読、前に読んでいて(片岡義男っぽいな)と感じたのを思い出しまして(じゃあ読み比べでみよう)と…ただし著者の作風が似てるとかいう意味ではなく、本書の文体が似てるように感じたからなのですが。
                まぁ結果からいえば、あんまり似てなかったですね。
                確かに本書は、どの短編も情景が映画的かつプラグマティックに書かれているとは思うのです…だけども登場人物の誰も内面を吐露せず情景描写に徹している片岡作品に対して、本書は第三者視点ではなく語り手たちの目線を通じてその内面が重点的に描かれていて。
                思考の揺らぎや他人との関係に、人間臭さがありますね。

                片岡作品を字幕付きの洋画に例えるなら、差し詰めこの短編集は邦画でしょう。
                描写の生活臭と肉感に加え、心情的な起承転結が明確なのです…冒頭の「コンビニにて」で連想したのはアニメ映画「イノセンス」の緻密なCGで棚に並ぶ商品まで再現した店内でして、むしろ片岡作品とは読み比べてみると大違いでした。
                芝居の一幕物みたいに連続した時間と空間で、語り手の回想としてカットバックを織り込む手法を著者は“時間を凝縮させた”と表現していますが…場所を移動したり数分のタイムラグはあるにせよ、現状に至る過去の記憶に耽溺する心の動きが生々しくて濃密です。

                あとがきによれば、留学情報誌のために書かれたのは「コンビニにて」「居酒屋にて」「公園にて」「クリスマス」の4編…そして別の掲載誌に書いた「駅前にて」「カラオケルームにて」「披露宴会場にて」「空港にて」の4編もまた“他人と共有することのできない個別の希望”を意図したそうで、コンセプチュアルな統一感によって本書は8つのエピソードで構築された長編にも感じられます。
                著者は作中に登場する、成金趣味ではない気でいる成金や集団就職を棄民政策のように思っている人物らを肯定も否定もしませんが…こうした人たちの坩堝に自らを置き徹底して観察してきたのだと感じ、とても真似出来ないと思いました。


                〈村上龍〉関連記事:
                【最近読んだ本】リチャード・バック(著)「イリュージョン」| 2008.09.17
                【最近読んだ本】はまのゆか(絵)、Ralph McCarthy(訳)「ポストマン」| 2009.09.15
                【最近読んだ本】ベン・シモンズ「東京欲望」| 2011.05.07
                【最近みたDVD】村上龍「CUBA〜音楽の勝利」| 2013.01.02
                【最近読んだ本】村上龍「空港にて」| 2014.01.01


                以下、個人的メモ
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                  | books | 2017.11.21 Tuesday | comments(0) | trackbacks(0) |
                  最近読んだ本
                  片岡義男「彼とぼくと彼女たち」

                  再読です。
                  本作は、題名のないショート・ストーリーが40編、収録されています。
                  僕は本書を短編小説集だと思っていたのですけれど、あとがきを読むと実はエッセイ集だったようですね…エッセイというのは必ずしも身辺雑記という訳ではなく、著者にとっては商業広告として依頼されたショート・ストーリーもまたエッセイに含まれるようです。
                  それで例として再録された、ある洋酒を“肯定的なかたちで文中に登場させて”書かれたエッセイが本編を読み解くカギとして使えそうだと僕は考えたのです。
                  でも流石に、具体的な商品名は本編に出てきません。

                  というか、どれも商業広告にしては長すぎると思うんですよね…それに何かの宣伝になるような内容でもなかったりで、当初の目論見は外れてしまったのです。
                  ただ、ふとサーフィン雑誌に彼が連載していた文章を思い出したんですね…あの感じに、似てる気がして。
                  なんといいますか、どこに焦点が合っているのか分からない奇妙な読後感が印象に残っていたのですが…その感想は考えてみると彼の小説全般にも当てはまるように思えてきて、今更ながら(この作家は何だ?)と不思議になってきました。
                  少なくとも、彼の書く人物は「金持ち喧嘩せず」を地で行く美男美女なのです。

                  その点は、自身でも“苦労を知らずに、きちんとした家庭のなかですんなりと育ったような、頭のいい、人好きのする、明るい女性”と描写する位に意図的なんですよ…苦悩も葛藤もなく、修羅場も愁嘆場もない精神衛生の保たれた世界。
                  おそらく著者の作風をカタログ的と評する論調はあった事でしょう、でも何故こんな平坦な視線に虚無的な感覚を受けるのだろう?
                  “日本でありながら身のまわりすべてが完璧にアメリカという不思議な環境のなかで育ちつつあった少年時代”に著者は、友人宅で初めて掘り炬燵に「お入りなさい」と言われ四つん這いで頭から入ったのだそう。

                  そして男同士で「冷えたミソ汁」の旨さを語り合う場面に漂う、意外な程の昭和的四畳半臭…著者はそのアメリナカイズされた生育環境に起因する独自性を自身のセールス・ポイントと自覚しつつも、傍目からは気付かない程そこにアイソレーションを抱いていたのでしょう。
                  そのように仮定してみると、80年代前半に栄華を極めた作風から年齢と共に下町の風景写真へとシフトしたのも分かる気がしてきます…むしろ、分かりやす過ぎて違和感もありますが。
                  映画的な描写と洋画字幕じみた会話文、そして飽くまで昭和でフィルタリングしたアメリカっぽさが著者ならではの妙味なのです。


                  〈片岡義男〉関連記事:
                  【最近読んだ本】片岡義男「名残りの東京」| 2009.11.21
                  【最近読んだ本】片岡義男「頬よせてホノルル」| 2010.02.25
                  【最近読んだ本】片岡義男「今日は口数がすくない」| 2010.03.09
                  【最近読んだ本】片岡義男「彼とぼくと彼女たち」| 2011.10.29
                  【最近読んだ本】片岡義男「花のある静かな休日」| 2012.01.01
                  【最近読んだ本】片岡義男「缶ビールのロマンス」| 2013.08.01
                  【最近読んだ本】片岡義男「缶ビールのロマンス」(再読)| 2016.12.01

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                    | books | 2017.11.09 Thursday | comments(0) | trackbacks(0) |
                    最近読んだ本
                    宮部みゆき「あやし」

                    前に読んだ漫画版「あやし」の原作で、本書はコミカライズされなかった分と合わせて9編を収録しております…いわゆる時代小説ではありますが、どれも市井の人々が遭遇する怪異な出来事を描いております。
                    漫画版を読んでから、本書の事は気になっていました…読みたいけれど(先の漫画版と比べてしまう読み方になったら厭だな)などと思っていたら、古本屋の100円コーナーで発見!
                    読んでみると漫画の場景が目に浮かぶ時はあっても違和感がなく、細やかな味わいのある原作と視覚的表現に合わせて再構成された漫画版のどちらにも好さが感じられて安心しました。笑

                    原作が負ける事は滅多にないし、著者は時代物でも創作怪談でも当代きってのストーリーテラーですが…物語を咀嚼して過不足なく尺に収めていると感じられた漫画版が、もしも原作よりも劣っていたらと考えて比べたくなかったのですよ。
                    例えば、巻末の「蜆塚」のラストね…漫画版の思い切った演出が原作を忠実に踏襲していたら、僕が不老不死者に惹き付けられる契機とはならなかった筈です。
                    特にその一点で僕は、漫画版の凄味を推します…この原作(本書)に、そこまでの強烈な衝撃を受けはしなかったので。
                    ただし漫画版は話数が少なく、読み応えとしては原作のボリュームが適当です。

                    いわば漫画版は手の込んだ単品メニューで原作は納得のコースメニュー、つまり両方を読めば最高!と…これだけ原作小説と漫画の幸福な関係って、なかなかあるもんじゃありませんぜ?
                    コミカライズから洩れた4編は、奉公人の少年が見た白昼夢「居眠り心中」と同名ゲームソフトと内容的には無関係な復讐譚「影牢」と…怪談アンソロジーに収録されていた「布団部屋」と人情噺「安達家の鬼」、因みに漫画版にも収録されていた「時雨鬼」のサスペンスフルな構成と非怪談なクライム・ノベルの妙味はメインディッシュ級でしたよ。
                    それと「梅の雨降る」に、某漫画家の体験談を連想。

                    〈宮部みゆき〉関連記事:
                    【最近読んだ本】宮部みゆき「日暮らし」上下巻| 2007.06.24
                    【最近読んだ本】宮部みゆき「本所深川ふしぎ草紙」| 2007.10.17
                    【最近読んだ本】宮部みゆき「天狗風」| 2008.05.03
                    【最近読んだ本】宮部みゆき「幻色江戸ごよみ」| 2008.05.17
                    【最近読んだ本】宮部みゆき「平成お徒歩日記」| 2008.05.19
                    【最近読んだ本】宮部みゆき「今夜は眠れない」| 2008.05.21
                    【最近読んだ本】宮部みゆき(文)、黒鉄ヒロシ(絵)「ぱんぷくりん」鶴亀2巻| 2008.10.04
                    【最近読んだ本】宮部みゆき(作)、吉田尚令(絵)、東雅夫(編)「悪い本」| 2013.01.27
                    【最近読んだ本】日本SF作家クラブ・編「SF JACK」| 2014.02.18
                    【最近読んだマンガ】宮部みゆき(原作)、皇なつき(作画)「お江戸ふしぎ噺 あやし」| 2014.10.19
                    【最近読んだ本】こうの史代(絵と文)、宮部みゆき(原作)「荒神絵巻」| 2015.10.10
                    【最近読んだ本】高橋克彦「ホラー・コネクション」| 2016.08.15
                    【最近読んだ本】V.A.「5分で凍る! ぞっとする怖い話」/V.A.「七つの怖い扉」| 2016.08.17

                    〈長命/不老/不死〉関連記事:
                    【最近読んだ本】「道教の本―不老不死をめざす仙道呪術の世界」| 2007.12.02
                    【最近読んだマンガ】里中満智子「マンガ ギリシア神話3 冥界の王ハデス」| 2009.05.18
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                    【最近読んだマンガ】高山しのぶ「あまつき」10巻| 2011.06.27
                    【最近読んだ本】松谷みよ子、樋口 淳・責任編集「死と再生の民話」| 2011.07.13
                    【最近読んだ本】舟崎克彦(文)、橋本淳子(絵)、小林敏也(構成)「大仙人」| 2012.12.31
                    【最近みたDVD】「ハンコック」| 2013.02.23
                    【最近みたDVD】「未来惑星ザルドス」| 2013.03.14
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                    【最近読んだマンガ】田辺イエロウ「終末のラフター」| 2014.07.26
                    【最近みたDVD】「AVALON」| 2014.10.28
                    【最近みたDVD】「THE NATURAL」| 2014.10.31
                    【最近読んだ本】トバイアス・S・バッケル「クリスタル・レイン」| 2016.03.27
                    【最近読んだマンガ】池田さとみ「さよならのJAMU」| 2016.04.20
                    【最近やったゲーム】PS2ソフト「幻想水滸伝III」| 2016.05.11
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                    【最近読んだ本】志村有弘・編「戦前のこわい話 近代怪奇実話集」| 2014.02.12
                    【最近読んだ本】小原猛(作)、三木静(画)「琉球怪談百物語 不思議な子どもたち」| 2014.04.29
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                    【最近読んだ本】木原浩勝+中山市朗(著)、恩田陸(編)「新耳袋コレクション」| 2014.09.11
                    【最近読んだ本】蒲松齢(作)、柴田天馬(訳)「和訳 聊斎志異」| 2014.11.19
                    【最近読んだ本】小野不由美「鬼談百景」| 2014.12.09
                    【最近読んだマンガ】山岸凉子「ゆうれい談」| 2015.09.06
                    【最近読んだ本】日本民話の会・外国民話研究会(編訳)「世界の妖怪たち」| 2015.10.31
                    【最近読んだ本】小林和彦(著)、柴田ゆう(画)「知識ゼロからの妖怪入門」| 2016.05.17
                    【最近読んだ本】加門七海「怪のはなし」| 2016.06.26
                    【最近読んだ本】加門七海「怪談を書く怪談」| 2016.07.21
                    【最近読んだ本】小田イ輔「実話コレクション 呪怪談」| 2016.07.26
                    【最近読んだ本】雨宮淳司「恐怖箱 水呪」| 2016.07.27
                    【最近読んだ本】V.A.「怪談−黄泉からの招待状−」| 2016.07.28
                    【最近読んだ本】戸神重明「恐怖箱 深怪」/福澤徹三「忌談 終」| 2016.08.16
                    【最近読んだ本】V.A.「超−1 怪コレクション 黄昏の章」| 2016.11.19
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                      | books | 2017.10.29 Sunday | comments(0) | trackbacks(0) |




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