スキャナー・ダークリー [Blu-ray]
スキャナー・ダークリー [Blu-ray] (JUGEMレビュー »)
俳優の仕草や表情をアニメとして再構築する、非常に手間の掛かった映像が生理的に苦手な人もいるでしょうね。
しかしながら出演者も(誰々が出てるから)という理由で観て欲しくはないでしょう、自伝的要素の強い原作を尊重した結果としてのスキャニメーションは実に効果的です。
意義を見出せない業務に延々と従事させられる主人公、彼の破滅を前提とした麻薬撲滅作戦…小さな政府がもたらした民間委託の陥穽、委託された組織間のマッチポンプは緩いディストピアですが。
どこまでが虚構でSFなのか、エンディングには賛否が分かれそう。
紹介記事【2019.07.27】
ブレイク・ビーターズ [ ゴードン・ケメラー ]
ブレイク・ビーターズ [ ゴードン・ケメラー ] (JUGEMレビュー »)
旧東独、といっても今じゃ通じなさそうですが…80年代の社会主義国でヒップホップに目覚めちゃった若者と、彼らの活動を体制翼賛に取り込もうとする当局との丁々発止を描く青春コメディ。
飼い慣らそうとする権力側と調子を合わせつつ苦悩する主人公たち、ベルリンの壁が崩壊して彼らを待ち受けるラストのほろ苦さとタフさに男泣きです。
自分でいる事を描いている点で、英国のサルサ映画「カムバック!」と併せてオススメ。
紹介記事【2019.11.02】
ダーリン・イン・ザ・フランキス 1《完全生産限定版》 (初回限定) 【Blu-ray】
ダーリン・イン・ザ・フランキス 1《完全生産限定版》 (初回限定) 【Blu-ray】 (JUGEMレビュー »)
荒廃した世界で生き残りを賭けて地底人と戦う少年少女、その謎が明らかになるにつれ絶望の色は増すばかりですが…絵空事に潜む「茶色の朝」の未来、大人目線で子供たちの希望を切に願ってしまいました。
次の世代のために何が出来るだろう、この気持ちを失わずにいたいです。
紹介記事【2019.08.28】
月曜日の友達(1-2巻 全巻) 全巻セット
月曜日の友達(1-2巻 全巻) 全巻セット (JUGEMレビュー »)
中学生になったばかりの頃の、世界の拡がりに戸惑う姿は性別や世代を超えて響きますね。
作画力もストーリーテリングも卓越してます、些細な一瞬を捉える巧さが。
忘れていた何か、忘れたくなかった何か…最後のコマに、胸が苦しくなりました。
紹介記事【2019.11.11】
TVアニメ『プラネット・ウィズ』オリジナルサウンドトラック [ 田中公平 ]
TVアニメ『プラネット・ウィズ』オリジナルサウンドトラック [ 田中公平 ] (JUGEMレビュー »)
(↑※サムネイルのリンクはサントラにしています)
所謂スピリチュアルなストーリーでありながら、どこか70年代アニメっぽいお約束とフォーマットをごちゃ混ぜにして力技で着地させたような奇想天外さが独特。
戦隊ヒーローに学園モノ、ジャンプ的な熱血インフレ勝負など…ネタの重ね掛けでも訳分からなくならない見事な構成、思いがけずラストに泣かされました。
正義のあるところに悪がある、よって正義は愛ではない…ならば善とはなんなのか? 先ずはご覧あれ。
紹介記事【2019.09.10】
ポルノ☆スターへの道 [ ニック・スウォードソン ]
ポルノ☆スターへの道 [ ニック・スウォードソン ] (JUGEMレビュー »)
ラジー賞を独占した下ネタ満載ムービー、とりあえず下品ですけど線引きはキッチリしてますね…笑わせる内容は、少なくとも男性なら他人事じゃないというか。
女性同士の巨乳幻想みたいなね、目の付け処が上手いなぁと。
まぁ万人向けではないにせよ、僕は感心しつつ大笑いしました。
紹介記事【2019.10.17】
夜長姫と耳男 (岩波現代文庫) [ 近藤ようこ ]
夜長姫と耳男 (岩波現代文庫) [ 近藤ようこ ] (JUGEMレビュー »)
原作者の作品は知らないので、本作は衝撃的でした…こんな物語が書かれていたのかと、まるで伝承の聞き書きか夢を書き起こしたような浮遊感!
印象としては南伸坊が中国の怪異譚を漫画にした「仙人の壺」に近い、無闇に説明しようとしない描線のアッサリ感が素晴らしいです。
空白の多さに、却って想像力を掻き立てられました。
紹介記事【2019.11.25】
さよならの朝に約束の花をかざろう 通常版 [Blu-ray]
さよならの朝に約束の花をかざろう 通常版 [Blu-ray] (JUGEMレビュー »)
不老不死というか不死者の物語にハマっているとはいえ、ファンタジー世界が舞台だとなぁ…と思ってましたが、不死者の(一般的な寿命の人間社会で生きる哀しみ)というツボを丁寧に描いていて好感が持てました。
寓話的なラストが作品世界と相まって、爽やかに切ないです。
紹介記事【2019.09.23】
おとなのけんか [ ジョディ・フォスター ]
おとなのけんか [ ジョディ・フォスター ] (JUGEMレビュー »)
血生臭い原題の割に、ほぼダイニング一間で完結している会話劇です。
子供の喧嘩に親が出て、大人同士で和やかに話し合って解決する目論見が破綻してエスカレート。
隣人を愛せれば戦争なんて起きない訳で、そんな皮肉な原題と裏腹に子供同士は親心を知らず…淡々としてますが大いに笑わせてくれます、個人的にはオススメ。
紹介記事【2019.10.22】
【中古】 山本耳かき店 ビッグCスペシャル/安倍夜郎(著者) 【中古】afb
【中古】 山本耳かき店 ビッグCスペシャル/安倍夜郎(著者) 【中古】afb (JUGEMレビュー »)
耳かき店ブームの火付け役、なんて書いては申し訳ないのですけども…決してブームに便乗した後追いではない、と。
穏やかな時間の流れる小さな町で、耳かき屋さんを訪れる客の脳内イメージが秀逸です。
こんな表現があったのか、こんな漫画があったのかと目からウロコ耳から(略)。
紹介記事【2019.12.23】
グラン・プリ [Blu-ray]
グラン・プリ [Blu-ray] (JUGEMレビュー »)
最初はソール・バスの映像分割がスタイリッシュというより情報過多に感じましたが、それが後から効いて来るんですね…世界各地を転戦するF1レーサーと彼らを取り巻く人間模様が主軸ながら、走行シーンも見甲斐があります。
クールなドラマと60年代のムードが、ダンディな三船敏郎も含めて現代とは別世界のようです。
紹介記事【2019.12.21】
絵はがきにされた少年 [ 藤原章生 ]
絵はがきにされた少年 [ 藤原章生 ] (JUGEMレビュー »)
アフリカに対する先入観や固定観念が、ことごとく覆されます…偏見を持たないように心掛けていたつもりでも、日本にいて伝わってくる情報自体にバイアスが入っている訳ですが。
西欧支配の呪縛に歪められた各地の民族性や搾取の構造など、日本では見えにくい暗部が著者の目を通して見えてくるようで。
アフリカの話であり、同時に現代の実像でもあるのでは?と。
紹介記事【2019.09.1】
【中古】 マンガでわかる 戦後ニッポン /手塚治虫(著者),水木しげる(著者),つげ義春(著者),はるき悦巳(著者),ちばてつや(著者) 【中古】afb
【中古】 マンガでわかる 戦後ニッポン /手塚治虫(著者),水木しげる(著者),つげ義春(著者),はるき悦巳(著者),ちばてつや(著者) 【中古】afb (JUGEMレビュー »)
現代に至る国内の移ろいを漫画に語らせる好企画アンソロジーです。
漫画にしか出来ない表現は、例えば三輪自動車が走る風景でありリンチされる米軍の操縦士であり…基本的に主観視点であるが故の、俯瞰の効く文学表現よりも接地した仮想体験なのかも。
いわば漫画こそが伝え得た戦後の一片、切り口を変えて続けてもらいたいですね。
紹介記事【2019.12.12】
あきれたあきれた大作戦 [ ピーター・フォーク ]
あきれたあきれた大作戦 [ ピーター・フォーク ] (JUGEMレビュー »)
笑いって鮮度があると思ってました、本作を観るまでは。
先が読めずに引き込まれましたが、確かに繰り返し観たくなるかも…計算されたシナリオが効いた笑いと、映像的な古さもまた味わい深いです。
スタンダードでバカバカしくて無駄のない、意外な傑作。
紹介記事【2019.12.10】
人気マンガ・アニメのトラウマ最終回 極限編 [ 鉄人社編集部 ]
人気マンガ・アニメのトラウマ最終回 極限編 [ 鉄人社編集部 ] (JUGEMレビュー »)
面白可笑しい切り口で紹介されてるので、ファンの方にしてみれば物申したい点も多々ありそうですが。
様々な事情から意外な最終回を迎えていた、有名な作品の数々に先ずビックリ…知って何かの役に立つ訳ではありませんけど、やはり切り口が面白いのですよ。
紹介記事【2019.09.24】
【国内盤CD】【ネコポス送料無料】ファウンテインズ・オブ・ウェイン / トラフィック・アンド・ウェザー
【国内盤CD】【ネコポス送料無料】ファウンテインズ・オブ・ウェイン / トラフィック・アンド・ウェザー (JUGEMレビュー »)
「Stacy's mom」の青春パンクをイメージしてたら好い意味で裏切られました。
どこかSDP「スチャダラ外伝」に通じる旅アルバム、共通する根っこは世代なのかグローバル環境なのか…しかしELOっぽさを連想させるサウンドも厭味なく無理して頑張ってない感じだし、三人称のスキットみたいに様々な切り口で綴られる旅の寸描が詩的。
パッキング上手で飽きさせない仕上がりかと。
紹介記事【2019.07.08】
【中古】[PS2]ローグギャラクシー ディレクターズカット(Rogue Galaxy Director's Cut)(20070321)
【中古】[PS2]ローグギャラクシー ディレクターズカット(Rogue Galaxy Director's Cut)(20070321) (JUGEMレビュー »)
無印版も僕は楽しめましたが、ダレ要素を改善して全体的にボリューム・アップしておりオススメです。
難を言えば、このDC版では攻略本が出てない事ですね…特に武器の合成レシピが違っているし、追加武器はノーヒントで試行錯誤の連続に。
水の惑星にある3連宝箱は、多分エリアボスに乗って飛び移らなきゃ取れないと思うので、これからプレイする方は気を付けてね!笑
紹介記事【2018.07.19】
【中古】PS2 スターオーシャン3 Till the End of Time
【中古】PS2 スターオーシャン3 Till the End of Time (JUGEMレビュー »)
ディレクターズ・カット版が出てるようなので、そちらをオススメします。
僕も終盤でメニュー画面を開こうとしてブラックアウトや異音と共に「ディスクからデータを読み込み中です」と表示されたままフリーズでプレイ断念中です。笑
リアルタイム・バトルの忙しさは好みの問題として、城下町などの雰囲気が最高!
中世レベルの惑星に来た主人公がハイテク宇宙人側、という立ち位置はユニークで楽しめました。
紹介記事【2018.07.25】

最近読んだ本
池澤夏樹「ハワイイ紀行【完全版】」

'96年の単行本に、新たにミッドウェイ環礁とマウナケア天文台の2章を加えた初版'00年の新潮文庫です…そもそも僕がハワイをハワイイと記すようになったのも単行本で読んだ影響でした、しかも本書は【完全版】と銘打っただけあって「ミッドウェイ紀行(本書では『鳥たちの島』に改題)」と「ハワイイ紀行【最終編】(同じく『マウナケア山脈の大きな眼』に改題)」の2章が追加された上にハワイイ諸島の全体図を表紙カバー裏側に印刷する配慮がなされております。
この全体図、口絵にある各島の個別マップを繋げただけではありますが位置関係が一目瞭然で何気に便利。

大小10の島で形成されるハワイイ諸島と同じ10章+2章、しかし意表を衝いて先ずモロカイ島から始まる辺りは著者らしい気も。
そして早速“旅の値打ちを見たものの数や、名所史跡の数々、買物の量、撮った写真などで計ってはいけない”と、本書がミーハーなトリップ・ガイドではない旨を宣言…とはいえ、飽くまで“旅はただ気持ちよく過ごした時間の長さでのみ評価されると考えよう”とマイルドに提言します。
どうしても通り一遍な観光に終始しがちなハワイイですが、折に触れ独自に発展した文化や歴史を紹介しながら写真も添えて現地の空気を感じさせてくれます。

それにしても「クック船長の艦隊が錨を下ろした港が再来の言い伝えがある大地の神ロノの港+マストと白い帆はロノの象徴&豊穣の祭礼の時期にも重なっていた」とは、単なるカーゴ・カルトの悲劇じゃなくエルナン・コルテスを再来神と間違えて滅亡した中南米のパターンを踏襲する滅亡フラグで薄気味悪いですな!
とはいえハワイイの文化は辛うじて滅亡を免れたし、クック船長が残した計測図が無ければ伝統的な航海術は完全に失われてのかもね…そしてホクレア号の航海は、60年代初めにブルワット島とサタワル島で勃発した航海競争に端を発していたという話も興味深い。

でも本書で一番好きなのは、やはり「ハワイイは土地毎に雨や風の固有名詞がある」という話ですね…以前は読んでて欧米の搾取に憤りを感じましたが、改めて読むと著者にしてはその辺を抑えめに書いてる気も。
新章で描かれる、ロンドンの裏側というサンド島は妙に行ってみたくなりました…マウナケア山の天文台銀座も、ハワイイの現代的な側面を感じさせますね。
それとハワイイじゃないけど「独立した後も植民地時代から残った実務官僚の多くがインド人だった」というアフリカの話は、前に観た「栄光への5000キロ」で感じた疑問に答えが見えたような感じがしました。


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以下、個人的メモ
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    | books | 2020.09.22 Tuesday | comments(0) | - |
    最近読んだ本
    遠藤ケイ「おこぜの空耳 山界風聞」

    再々読か、いや再々々読になりますかね…なので敢えて付け加える事はないんです、言うなれば宮本常一っぽい実話系怪談というか。
    関東平野の果て、埼玉/群馬/長野/山梨の4県が接する山間辺地…秩父大滝村周辺の山間集落を訪ねて老いた杣人(そまびと)らから聞き取った、そうした体裁で綴られるのは現役時代に彼らの心胆を寒からしめた得体の知れない怪異の話。
    昭和の半ば、といっても都会を沸かせる高度経済成長の気配すら届かない…それこそ「鬼滅の刃」の炭焼き暮らしを思わせる世界、ただし語られるのは主観的な現象であって立ち向かうべき相手は判然としません。

    筋を書いてしまえば、中には(肝の据わった山衆でも思い込みに怯えるのだな)などと軽んじる人もいるでしょう…むしろ害を為す相手が分からないからこそ、本書の語り口は原初の恐怖が引き立つのですけど。
    怪談の妙は筋ではなく語り口に表れると思うので、敢えて僕は本書を怪談と形容したのですが…どのタイミングで何を如何に語るか、それも含めた語彙の構成で言えば諸々の実話怪談の比ではないとも思うのです。
    ただし最後に収められた表題作は、山の祠に供えられた虎魚の視点という不思議な一編です…重い余韻を残す5話から最後に寓話で締め括る、その趣向も見事です。


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      | books | 2020.09.16 Wednesday | comments(0) | - |
      最近読んだ本
      キャリー・パテル(著)、細美遙子(訳)「墓標都市」

      初版'17年の創元SF文庫、思った以上にSF仕立てのサスペンスでした…しかも三部作の第一巻というね、なんか面白味に欠ける気がしたけど案の定でした。
      意外だったのは英国調の地下都市を舞台としてる割に、著者はテキサス州の女性だった事ですね…'15年の本著がデビュー作で長編三部作、本職は洋ゲー会社のストーリー制作だそう。
      一方は市警の女性捜査官、一方は孤児院出身で貴族の繕い物と洗濯で生計を立てる娘…連続殺人に潜む極秘計画と暗躍する謎の男、やがて2人の主人公は禁忌とされる旧文明に絡む14年前の事件を発端とする政権転覆に巻き込まれて行く?

      こう書くと引き込まれそうなプロットなんですけどね、どうも地下都市の全体像がイメージ出来ないんです…完全に地上と隔絶されてる訳ではない様子だけど半地下でもないし、区画を隔てるトンネルや交通機関も想像力を掻き立てないし。
      とはいえ貴族議会に警察権を握られた都市国家の潜入捜査×ギリギリ自立している洗濯娘の庶民的日常という対照的な視点は、特異な未来世界を浮き上がらせる機能としては有効ですな。
      都市生活者の知らない地上に踏み出す終盤、ようやく崩壊した旧文明の痕跡にSFらしさが出て来たと思えば慌ただしい幕引きで大状況は明かされず仕舞いに。

      個人的にはイギリスっぽさやサスペンス展開が「エンデュミオンと叡智の書」と似てる印象でした、こういう続き物は表紙に明記してくれたら避けられるのに!
      というか、こういう無名の続き物って邦訳を出す方が様子見なんだろうな…まぁ気持ちは分かるわ、あんまり売れそうな気がしなかったんだろうってのはね。笑
      巻末の訳者あとがきによれば、次巻は中近東っぽい都市の話らしい…テッド・チャンの短編みたいな感じなら面白くなりそうだけど、また話が犯人探しになるんだとしたら微妙な気もします。
      こう考えると謎解きだけで読ませるのって、実は難しいのかもしれませんな?
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        | books | 2020.09.10 Thursday | comments(0) | - |
        最近読んだ本
        町山智浩「最も危険なアメリカ映画」

        初版'19年の集英社文庫、初出は'12〜15年に集英社インターナショナルHPで連載された「なぜ『フォレスト・ガンプ』は怖いのか――映画に隠されたアメリカの真実――町山智浩の深読みシネマ・ガイド」…この初出時のタイトルを読了後に見て納得、戦前から時系列に沿って紹介される数々の映画は最終章で「フォレスト・ガンプ」(以降FG)に潜んでいる恐ろしさを解説するための前置きに過ぎなかったのですな?
        大体FGってアメリカ以外でウケる要素ないのに日本でもヒットしたよね、後から観た時に感じた違和感が著者の解説で氷解したかと言えばそうでもないけど。

        著者の主張を簡潔に記すれば(無理矢理な陰謀論)と受け取られたり「個人的な政治見解を娯楽作品に絡める輩」と見なされかねないけど、映画創成期からアメリカ映画史を彩ってきた多数の作品を解説しながらFGに至る論点の数々は説得力があります…個人的には「南部ローカル・ジョーク」と名付けていた、度々アメリカ映画に見られる奇妙な要素のニュアンスを垣間見たようで。
        トランプ大統領を支持する白人層とポピュリズム、奴隷所有の過去を正当化するプロパガンダ…ローカル意識は百年程度じゃ変わりようがないにせよ、映画による燃料投下が繰り返されなければ違っていたのかも。

        そしてFGと同じロバート・ゼメキスの出世作「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(以降BTTF)もまた、レーガン〜ブッシュ〜トランプ支持層にとっての「在るべきアメリカ」を描いていたという指摘は説得力がある一方で賛否両論になりそう…FGはともかくBTTFは娯楽作品としての完成度が高い事は間違いないですし、敢えて粗を突っつく野暮という意見も分からなくはないというかね。
        実際「政治的な正しさ」は時に面倒臭いし、全方位を頷かせるのは「イワンのばか」にも出来ないし…所詮はアメリカという国の特殊性で僕らは関係ない、とも言い切れない対岸の火事。

        それこそ「反戦活動してた頭デッカチのヒッピーが後のアメリカをダメにした」的な史観を日本に当て嵌めると「安保反対とか言ってテロした左翼が後の特定アジア問題を作り上げた」的な応用も効きそうですし、僕もまた実像を知るにつれて学生運動やフーテン族といった60年代後半の若者文化に対する憧れからの反動的な揺り返しが高まるばかりではあるのですけど。
        そういうザックリとした決め付け自体が危なっかしいし、例えばネットの自己責任論もアメリカで繰り返される論調のように誘導じみて感じられる時があり…世論工作の手口を知っておく、という点で有意義では?

        個人的に驚きだったのは、戦前のディズニーは親ナチで戦後はアカ狩り推進派&戦時中には敵国の大都市爆撃を説く映画を大統領に送ってた事…そこから英首相チャーチルはディズニー爆弾というバンカーバスター開発、またスプラッシュマウンテンは南部の奴隷制度を美化したディズニー初の実写「南部の唄」をテーマにしたアトラクションと。
        C&Wに欠かせないバンジョーが“黒人が発明した新しい楽器”でフォークダンスの定番「オクラホマ・ミクサー」も元々は黒人蔑視の歌、BTTFでマーティの母が近親相姦的な理由とドアーズの歌詞と父殺しは50年代の家庭がルーツ?

        チェイニー元副大統領はハリバートン社のCEOで、これは後述しますがBTTFの主役がマイケル・J・フォックスでなければならなかった理由…BTTF3とカウボーイ外交、FG原作は感動要素皆無のハチャメチャ歴史改変コメディ?
        レイナード・スキナードの「Sweet home Alabama」ニール・ヤングがアラバマで横行する黒人への差別と暴力を非難した「Southern man」への開き直りアンサーソング、黒人運動を弾圧した州知事ウォレスを地元民は愛してるって…ただしWikipedia情報によると歌詞の件は微妙なニュアンス、両者とも白人だし当事者じゃないからなのかなぁ?
        (以下は個人的メモ、長文です)

        追記:後で知ったのですが、正確には「オクラホマ・ミクサー」はフォークダンスの形式で例の曲は「Turkey in the Straw」だそう。歌詞は複数ありますがミンストレル・ショーの定番曲だった事と、典型的なキャラと同名の「Zip Coon」という古い歌詞を著者は指していると思われます。


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          | books | 2020.09.03 Thursday | comments(0) | - |
          最近読んだ本: 「最も危険なアメリカ映画」の続き
          個人的メモが非常に多くなったので、記事ページを分けてみました。
          元記事:【最近読んだ本】町山智浩「最も危険なアメリカ映画」 | 2020.09.03

          では以下、個人的メモの続き(かなり長文)。
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            | books | 2020.09.03 Thursday | comments(0) | - |
            最近読んだ本
            高千穂遙「ダーティペアの大脱走」

            初版'95年のハヤカワ文庫JA、シリーズ第4作目ですか…安彦良和による表紙カバーではユリがセーラー服で、もしや回想譚か?いやでもケイはトラコン・スーツだから違うよなぁ?
            と思ったら、女学園への潜入捜査だったんですね…基本的にケイ視点で書かれるのもあるけど、この役割分担によってユリは出番が少なめといった印象ですね。
            本作の舞台は銀河連合随一の財団が仕切る惑星オフィーリアの超お嬢様学園、謎の奇病発生に何故かラブリーエンゼルが派遣され…まぁ男子禁制は分かるとして医療トラコンでもないのに?という疑問は、早速ウジャウジャ化け物で棚上げ。

            奇病と化け物の根っこは何か、冒頭のモノローグを担った少女パミーナが如何に絡むのか…状況が読めないまま防戦一方のラブリーエンゼル&電波中毒で暴れる完全生物ムギと、後手々々に回ったまま話が進むので(どうやって打開するの?)とヤキモキさせられます。
            しかし敵を上回るムギの電波干渉能力が大活躍、化け物の正体と正義の古代遺産を解析…女生徒たちを護衛しつつ古代文明のシェルターに避難するも、マッチポンプの罠に落ちてしまい。
            化け物こそが古代生命体の成れの果て、ウィルス化した遺伝子を人体に感染させた?…誘導策を実行したのはAIで、今や敵の手中!

            財団の物量作戦で制圧するも、歯切れの悪い幕切れに…と思わせての逆転また逆転、更に苦肉の大脱走も新たな窮地でどうなる次巻?
            思わずWikipedia情報を確認しちゃいましたよ、まぁ続きが出ていたのでホッとしましたが…しかしリアルタイムで読んでいたら、本作の次が5年後に出たと思えば新人時代のエピソード「独裁者の遺産」じゃあ文字通りオチ着かない気分だったろうなと思いますよ。
            安彦良和も巻末の解説に“僕はたぶんこの文庫版とのおつきあいを最後に輝かしい大傑作の絵師という重任から解放されるだろう”と書いてるし、本編も最後の行は“さようなら”だし!

            だけど最新巻が'18年刊と、ここまで息の長いシリーズになっている事には驚かされました…初めて読んだ「大冒険」では、5年越しに続巻「大逆転」が出た時も意外に思ったものです。
            それと“ユリとケイのすっとんだ会話の原型”が“スタジオぬえの二女史のノリ”だったとか“ユリとケイのコスチュームは高千穂の注文”で「地獄の黙示録」プレイメイトに基づいていたとか、そんな裏話を知ってしまうと「大冒険」から読み直したくなってきました…だけど“ぶないじゃない”だの“あによォ”といった2人の台詞は、間が空いちゃうと慣れるまで正直ちょっと照れ臭いのよ。笑


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              | books | 2020.08.28 Friday | comments(0) | - |
              最近読んだ本
              オノ・ヨーコ(著)、南風椎(訳)「グレープフルーツ・ジュース」

              初版'98年の講談社文庫で、元になった「グレープフルーツ」の発行は'64年だそう…当時は僅か500部が東京で出版され、'70年に加筆された英語版が世界発売されてジョン・レノンがそれを読んだのだとか。
              本書は約30年後の'93年に英語版から改めて訳し直され、日本の写真家とのコラボレーションとして新たに発表されたので“グレープフルーツ”+“ジュース”な訳ですね…という事は「キャロル&チューズデイ」の「シンディ・ローパーは『グレープフルーツ・ジュース』1冊を手に家出した」というエピソードは有り得ない訳です、だって家出の時点では“ジュース”じゃないでしょ。笑
              って、そういう検証のため買ったんじゃなく逆に読んでる途中でアニメを観たんですよ…単なる偶然ですな、或いは何かの兆しとか?

              ともあれ'70年版「グレープフルーツ」から新訳された本書、意義に賛同し作品を提供した写真家33人には三好和義淺井愼平に篠山紀信といった大御所も含まれます…しかも、どれも'56年から'67年に発表された写真ばかりなのですよ。
              つまりオノ・ヨーコが本書の言葉を記した時代の写真と空気を合わせたのでしょう、この点が本書の重要な点だと僕は感じます。
              些細なこだわりのようですし、僕も最初は(写真を後付けしたって「かもめのジョナサン」に完成版を出す位の野暮)と思ってました…でも不意に気付いて奥付けを見たのです、やはり同じ時を撮っていたのかと。

              ジョンが「ぼくがこれまでに燃やした本の中でこれが一番偉大な本だ」、と書いた理由は読み終えた時に分かります…本書は詩の言葉で書かれた指示書であり、それが現実に実行が不可能かどうかは試してみない限り何とも言えないという事に思い至る人でなければ読み終える事も出来ません。
              可能と思える事だけ、やってみたって面白くないでしょ?…不可能だと思えても、それを想像してみる事から可能性は生まれる訳で。
              その自全こそ、この言葉が今の時代によみがえった必然なのではないでしょうか…因みに英語版テキストも巻末収録されて、お子様の英才教育に最敵な予感。笑
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                | books | 2020.08.22 Saturday | comments(0) | - |
                最近読んだ本
                木原浩勝、中山市朗「新耳袋 現代百物語 第十夜」

                初版'08年の角川文庫版、遂に千話達成でシリーズ完結ですか…毎回99話の途中に差し挟まれていた無題の1話が、そういう趣向だった事も明かされています。
                しかし最後だからといって、余り物の寄せ集めじゃないのは流石というか…ちょっとナメてました、いい加減ネタ切れするだろうと。
                実は木原が東日本担当で中山が西日本担当だったそうで、最初の3話は京都で新撰組にまつわる話から…明里エピソードは何処かで読んだ気がするし他も幾つか知ってるパターンが目に付いて(うーん)と思っていたら、第十八話「河原の子」から急にソゾゾっと来て以降は怖気のオンパレード!

                というか「河原の〜」も状況として珍しくはないのですけど、やはり語り口の上手さなのでしょうね…ありがちなエレベーターの怪異も百鬼夜行も一味ちがうし、大阪ミナミの怪物件も油断を衝かれるような怖さ。
                道玄坂のドッペル実況やローマ駅のドッペル時間差ニアミス、化け狸のキャパオーバーやクラス全員が同じ顔の心霊集合写真には斜め上の恐怖が…写ってる筈のない少年が現像中に実体化するとか、マンション入口に佇む女の百目じみた全身絆創膏とかは想像力を掻き立てられる不気味さ満点。
                今回の無題話は第一夜の牛女“件”後日談、それと別の第一夜絡みもあります。

                最後は両著者が出会った大学時代のエピソード10連発でしたが、最後の最後で含みを持たせる謎のオチって?…あとがきによると、この続きが第四夜の「山の牧場」になっているそう。
                こうした相互リンクの仕掛けは、全巻を揃えていたり通読してたりすると強烈な臨場感を味わえるでしょうね…そういう怖さマシマシを望まない僕としては、バラ読み位で丁度好いかな!子供時代から怪談蒐集を始めた木原と、その記録係を買って出た中山…「ダ・ヴィンチ」連載を経て'98年から単行本化、その完結を待たず始まった'02年の文庫化時に約束した京極夏彦の解説も合点が行きます。

                両著者の作風は“霊の仕業”的な“愚にもつかない裏付け”がなく、解釈は読者に丸投げなんです…しかしこの“紙背行間”を読ませる文の研ぎ方が、下手に「実話怪談」を謳う創作には大きく欠けているのです。
                それと言われてみれば納得なのですが、両著者それぞれが取材した話を互いに“語りあう”過程を経て怪談たらしめていたんですよ。
                岡本綺堂の受け売りですが、怪談の醍醐味とは語り口にあると僕も思うのです。
                語る内容もさることながら、むしろ「語られない何か」が聞き手の想像力を刺激する…言葉が輪郭を切り分ける先の、不明瞭な分からなさに怪は潜むのですな。

                補足:木原の単緒「九十九怪談」シリーズとは、テイストは似てますが別シリーズですね・・・何故か、ずっと勘違いしてましたけど。笑


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                  | books | 2020.08.16 Sunday | comments(0) | - |
                  最近読んだ本
                  ロバート・アスプリン(著)、斎藤伯好(訳)「銀河おさわがせ中隊」

                  初版'92年のハヤカワSF、原書は'90年の「PHULE'S COMPANY」…この“おさわがせ”という響きが実に90年代チックですな、オビにある“ユーモア・ミリタリーSF”はともかく“進め、爆笑精鋭部隊”って!
                  例え書題のハードルを乗り越えて棚から手にしても、これまた80年代っぽい表紙イラストで折れるでしょうね…まぁ百均コーナーにあるのも納得、それでも余程の物好きじゃなきゃ読む気も起きない代物ですよ。
                  買っちゃってから不安に駆られて先に読んだ大森望の巻末解説も、2ページ延々と大阪漫才調の苦しい紙数稼ぎで稀に見る地雷臭!笑
                  ハヤカワの黒歴史かコレ?

                  内容はオビにある“宇宙一のダメ部隊の指揮官となった億万長者。知力と財力にモノをいわせて大活躍!”そのまんま、解説の漫才パートで喩えに挙がった中では「がんばれベアーズ」筒井康隆の「富豪刑事」が当たらずとも遠からずで流石に“正真正銘、爆笑の一冊”とか“吉本新本格スペオペ”ってのは盛り過ぎ。
                  バカ中隊とフールの会社が二重の意味になっていて、著者の事務職キャリアで培われた企業経営&再建ノウハウがミリタリー色を薄めていますね…軍人としては迷惑千万なウィラード・フールことジェスター大尉が、左遷された辺境惑星で有能な実業家の本領を発揮。

                  基本的にゴロツキ&能無しの吹き溜まりだった大所帯を適材適所で活かしてゆく、いわば人材活用ストーリーなので派手なドンパチやメカメカしい展開のない地味なSFです…こう言っちゃ何ですがチャラい「下町ロケット」というか、豚もおだてりゃ木に登る的な?
                  なので地雷って訳じゃないものの、ただハヤカワSFを読むようなタイプを満足させる要素は皆無かと…じゃ誰が読むの?ってなると、まぁいないんだよね!笑
                  だけど上手く脚色して「スペース・ビリオネア・ベアーズ」とかって映画化すればウケそうだわ、お色気キャラもいるし最強部隊を手玉に取る辺りもアツいし。

                  個人的にはジェスターが道化を意味すると知って、だったら「ローグギャラクシー」の主役は道化役だったのか!と新たな発見が。笑
                  ジェスター以前のコードネームはクイーンの「Bohemian rhapsody」を連想させるスカラムーシュ、これまたイタリア喜劇由来の“道化とか愚か者を意味する”そう…それとフェンシングのエペは決闘の掟が相手の死から“最初に流れた血”になり発展した競技って、もしや「ランボー」の原作「First Blood」にはその意味が込められていたの?
                  娼婦の俗語フッカーの起源は、南北戦争時代の“フッカー将軍の女”という言い回しから来ているとも。

                  どこまで事実かはともかく、思いがけない雑学的フックも印象に残りました…とはいえ、本書がSFである必然性って実際のところ全然ないんじゃないの?笑
                  隊員たちに、有能とは“手元にある物あるいは人を使って任務を遂行する能力”で“諸君はない物ねだりに時間をかけすぎたために、自分自身の強さを見失っているのだ”と檄を飛ばす中隊長…彼の“人間は、基本的に自分を善人だと思っているものだ”という信条も覚えておいて損はない気がしました、まぁ僕は管理職って柄ではないんだけど。
                  続編への繋ぎっぽいエイリアン遭遇は微妙、というか続きって邦訳されてる?

                  追記:巻末解説によると、著者は「シェアードワールド・ファンタジー」自体の創始者らしいです・・・要は複数の作家が主要な人物や舞台設定を共有する壮大な架空世界ですかね、日本のSF界では無名でも本国アメリカじゃ大成功を収めてる人物なのかも?
                  それと続編、この後5冊も邦訳されてました! 但し3巻からは合作となって6巻からは10年以上音沙汰ないようで、尻切れトンボに終わってそう。笑
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                    | books | 2020.08.07 Friday | comments(0) | - |
                    最近読んだ本
                    筒井康隆・編「12のアップルパイ」

                    筒井康隆がアップルパイという言葉を使う意外さに惹かれて手にした本書、裏表紙の解説には“著者の意図がユーモア小説だったのか、どうかは兎も角として、編者の独断と偏見を最優先。時代物から未来物までと幅広く、最も高度なユーモア精神に溢れたSF的傑作、話題作12編を収録”とあります…但し巻末の「解説・編集後記」によると、本書は初版'87年の集英社文庫ながら元は立風書房から'70年に出版されたアンソロジーの文庫化あるいは再版らしいので収録作の初出は更に古いという訳です。
                    野暮を承知で言うなら、半世紀以上も昔のユーモアと覚悟して読むべきでした。

                    本書収録作の著者12名、当時はいざ知らず今や鬼籍に入られた方も含めて僕でも名前ぐらいは知ってる大御所中の大御所ばかり…代表作ではないにせよ、本書で一読の機会を得たのも何かのご縁なのでしょう。
                    とは言うものの、トップバッターの遠藤周作「初春夢の宝船」は題名からして文芸誌の新年号企画ですな?
                    だって今更「ミクロの決死圏」パロディとは、'90年が遥か未来だった頃に書かれただけあって賞味期限的にね…まぁ時代を思えば際どいエログロをスマートに扱っていて、そういった手加減なしでは厳しい印象。
                    本書の幕開けとして、その心構えをさせてくれます。
                    (続きは下段にて)


                    〈筒井康隆〉関連記事:
                    【最近聴いたLP】「ザ・インナー・スペース・オブ・ヤスタカ・ツツイ」| 2008.05.13
                    【最近読んだ本】「エンガッツィオ司令塔」| 2009.08.15
                    【最近観たアニメ】「時をかける少女」| 2009.08.24
                    【最近読んだ本】「ジャズ小説」| 2009.09.12
                    【最近読んだ本】「七瀬ふたたび」| 2010.03.12
                    【最近読んだ本】「近所迷惑」| 2010.05.25
                    【最近読んだ本】「ヘル」| 2010.07.27
                    【最近読んだ本】「W世界の少年」| 2011.08.12
                    【最近読んだ本】「出世の首」| 2013.03.28
                    【最近聴いたCD】タモリ「TAMORI」| 2013.04.01
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                    【最近読んだ本】「農協 月へ行く(上)」| 2016.03.08
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                      | books | 2020.08.01 Saturday | comments(0) | - |




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