【中古】嘘解きレトリック <全10巻セット> / 都戸利津(コミックセット)
【中古】嘘解きレトリック <全10巻セット> / 都戸利津(コミックセット) (JUGEMレビュー »)
「ウソを聞き分ける」が故に孤独だった少女が貧乏探偵の助手に、というレトロモダン路地裏探偵活劇…お世辞や方便に欺瞞を感じる、そんな読者少女を分かってますなぁ。
およそ100年前という地続きな設定、現代とは異なる感覚の豆知識も興味深いです…本格推理ファンには物足りないでしょうけど、見せ方から筋運びまで完璧!と感じる漫画家ですよ。
紹介記事【2023.02.01】
【中古】 ルーマニア賛歌 Europe of Europe /みやこうせい(著者) 【中古】afb
【中古】 ルーマニア賛歌 Europe of Europe /みやこうせい(著者) 【中古】afb (JUGEMレビュー »)
地理的にはウクライナの南、ブルガリアの北で西側はハンガリーとセルビアに接するルーマニア…つい東欧と一括りに捉えがちですが、カトリックと東方正教が混じり合った歴史を感じさせる万華鏡のような風土と文化のモザイクは旅心をくすぐられます。
紹介記事【2023.01.02】
フェーム 特別版 [ アイリーン・キャラ ]
フェーム 特別版 [ アイリーン・キャラ ] (JUGEMレビュー »)
ミュージカル映画かと思ってたんですが群舞シーンは意外と少なめ、ストーリーを追うより時代の空気を味わう映画かも…各エピソードにオチも後日談もなく、ドキュメンタリーのようにシンプルな構成でしたが最後はグッと来ましたよ。
紹介記事【2023.05.26】
ルックバック (ジャンプコミックス) [ 藤本 タツキ ]
ルックバック (ジャンプコミックス) [ 藤本 タツキ ] (JUGEMレビュー »)
(薄いなー)という第一印象を覆す、先入観なしに読んでほしい一冊です…尺は短めでも完成されてる、低予算ながら良質の自主制作映画を思わせます。
山形を舞台に描かれる、十代の少女2人の漫画愛&成長譚…ところが中盤の転換点から怒涛の勢いで感情を振り回され、喪失の痛みを知る人ほど「作り話の存在証明」を思い知らされるのでは。
紹介記事【2023.06.15】
COYOTE SPECIAL ISSUE 安西水丸 おもしろ美術一年生 Coyote MOOK / 安西水丸 【ムック】
COYOTE SPECIAL ISSUE 安西水丸 おもしろ美術一年生 Coyote MOOK / 安西水丸 【ムック】 (JUGEMレビュー »)
僕にとって安西は小説家であり、70年代の映画みたいな乾いた文章と裏腹な湿り気が印象的で…どこかで彼に嫉妬していたのかも、そう気付かされた本書で自分の絵心を取り戻せそうです。
紹介記事【2023.02.07】
ああ爆弾 [DVD]
ああ爆弾 [DVD] (JUGEMレビュー »)
舞台美術を融合させた和製ミュージカル、小気味好いカットインでテンポよく繋いでゆく独特な映画です…大筋は任侠コメディでもコミカルなシークエンスに関連性を与えているに過ぎず、目の前の滑稽に食い付いて心をスッキリ空っぽにする映画かと。
紹介記事【2023.04.20】
STYLE 男のファッションはボクが描いてきた [ 綿谷 寛 ]
STYLE 男のファッションはボクが描いてきた [ 綿谷 寛 ] (JUGEMレビュー »)
どこかノスタルジックなロックウェル調の画風、本番アメリカでも絶えてしまったファッション・イラスト…バイヤー並みの製品知識と造詣が描き出す「写真と非なる情報量」は、安西水丸の認識と真っ向から対立するようで興味深く感じられたりも。
紹介記事【2023.03.13】
ヒヤマケンタロウの妊娠 (BE LOVE KC) [ 坂井恵理 ]
ヒヤマケンタロウの妊娠 (BE LOVE KC) [ 坂井恵理 ] (JUGEMレビュー »)
男が妊娠・出産するようになり、10年が経過した世界…色々と自分のバイアスを揺さぶられました、現実の世間の根っこを「男の妊娠」一点で掘り返してます。
決して「弱者に」的な描き方ではなく、でも少子化対策の先送り感が浮き彫りに…一時しのぎじゃ逃げられないと腹を括る男たち、そういう腰が重さがリアル。笑
紹介記事【2023.06.03】
里見八犬伝 [ 薬師丸ひろ子 ]
里見八犬伝 [ 薬師丸ひろ子 ] (JUGEMレビュー »)
かつてガッカリした方こそ芝居感覚で観てほしい、長大な原作を2時間強でまとめた冒険活劇としては当時なりに高水準だったと認識を改めました…筋運びを追う映画じゃなく見せ場を繋ぐ芝居の手法で、和合メタファのご来光やハリボテ大ムカデも笑い所だったのでは?
紹介記事【2023.03.11】
太田裕美 / こけていっしゅ [CD]
太田裕美 / こけていっしゅ [CD] (JUGEMレビュー »)
LPのジャケに改めて絵画のような価値と、差し向かいで聴く音楽の魅力を実感…久々に通しで何度も聴いちゃいました、こんな時間が今では日常の贅沢なんですな。
一聴して分かる特徴的な抜け感と透明感、この声質を引き立てる楽曲群…80年代シティ・ポップ前夜の、シャレオツとは言い難いからこそ魅力的な一枚です。
紹介記事【2023.05.12】
今夜すきやきだよ (バンチコミックス) [ 谷口 菜津子 ]
今夜すきやきだよ (バンチコミックス) [ 谷口 菜津子 ] (JUGEMレビュー »)
凸凹アラサー女子の協同生活、共感する要素は皆無な2人ですが何故か身に詰まされ…「人並み」の世間に属する異端な感覚、それは割と普遍的かつ根源的なのかも。
所詮は自分も誰かの「人並み」だし、共存の間合いという発想は大局的に地球をシェアするカギかとも…隣人と共存する一歩は、思想を語るより有意義そうです。
紹介記事【2023.01.08】
ハイツひなげし [ 古川誠 ]
ハイツひなげし [ 古川誠 ] (JUGEMレビュー »)
最初は(吉本ばななっぽい題名だな−)と思ったら掴まれました、料理とかスポーツとかの「簡単そうに見せる上手さ」みたいな?…面白味の薄そうな日常を退屈させずに描ける奥深さ、読んでる内に素になっちゃうような。
紹介記事【2023.05.04】
【中古】 9・11 N.Y.同時多発テロ衝撃の真実/(ドキュメンタリー) 【中古】afb
【中古】 9・11 N.Y.同時多発テロ衝撃の真実/(ドキュメンタリー) 【中古】afb (JUGEMレビュー »)
“衝撃の真実”かはともかく、ドキュメンタリーの撮影中に遭遇した視点そのものの衝撃…フィクションのようにしか感じられない自分への罪悪感、理不尽な災害への行き場のない気持ち…人の持つ気高さと、本質的な善意が胸に沁みます。
紹介記事【2023.02.05】
関連記事「9.11オフィシャル・レポート」【2023.01.20】
【中古】[PS2]Zill O'll 〜infinite〜(ジルオール インフィニット) 通常版(20050623)
【中古】[PS2]Zill O'll 〜infinite〜(ジルオール インフィニット) 通常版(20050623) (JUGEMレビュー »)
遂にPS2本体も三代目、全エンディング達成後は初見イベント探しに夢中です…どの出来事にも裏があり、全体像を知るにつれ各キャラの印象も大きく変わる仕込みの多さには驚かされます。
紹介記事【2023.01.04】

最近聴いたLP
THE BEACH BOYS「BREAK AWAY」

(レコード・プレーヤーは使わずにいるとターンテーブルを回すゴムベルトの劣化が早まるんじゃないか?)という疑念から、もう少しレコードを聴くようにしようと思いまして…折角ですから、手元に残してるアナログ盤の中でも再生回数が最も少ない本作を聴き直していました。
といっても(そんなアルバム出てないだろ!)と思われた方もいるでしょう、本作は「THE BEACH BOYS CAPITOL YEARS (邦題:ビーチ・ボーイズ・ボックス −カリフォルニアより愛をこめて−)」(←リンク先はamazonのCDセット)と題された7枚組セットの6枚目なのです…何故1枚目から聴かないのかというと、それは再生回数が関係しておりまして。

キャピトル・レコードに在籍した黄金期'62〜69年の楽曲をコンパイルした7枚は、最初の数枚にヒット曲が集中しているため特に1〜3枚目は割と聴いてたんですよ…といっても子供時代の宝物だったから、本当に数える程ではありましたが。
小学6年生の誕生日プレゼントとして、親に頼み込んで¥12,600もの大枚叩かせたのでね…当時のLPが1枚¥2,800だったのを思えば格安とはいえ、自分の小遣いで買ったレコードとは別格の扱いをしていたのです。
最初に買った洋楽シングルも、彼らの「I get around」でした…「ボーイズ ボーイズ」から西海岸に憧れていた僕には、彼らの音楽が特別だったのです。

大事にしてた割に外装は黄ばんでるしジャケもシミだらけ、プレーヤーもA面の途中まで回転ムラがあったりと聴き手の僕も含めてポンコツ感タップリでしたが…おそらく最初の一度ぐらいしか針を落としてないであろう6枚目は、時系列に沿ってコンパイルされた中でサーフ/ホットロッドから最も遠い「PET SOUNDS」後の楽曲群です。
といってもA面1曲目の「恋のリバイバル」は'68年のヒット曲ですし、ラストを飾るタイトル・ナンバーはウケ狙いシングルであれど個人的にはビーチ・ボーイズのエッセンスが詰まった名曲ですね…A面2曲目のジャジーなコード感やセルジオ・メンデス風味の3曲目、スキャットのみの4曲目とか3拍子の8曲目はソフトロックの趣きがあります。

B面2曲目はブライアン・ウィルソン名義となっているものの、Wikipedia情報ではチャールズ・マンソンとの関わりが示唆されていて意外というかビックリ…3曲目はカントリー調で4曲目はロジャー・ニコルズを思わせるコード進行が心地好く、若干サイケな香り漂う5曲目やアルバム初収録という6曲目の「輝く星座〜アクエリアス」っぽさは新たな方向性を模索していたかのようでもあり。
L.A.のガレージ・バンドからインスト主体だったサーフロックにフォア・フレッシュメン的なハーモニーを持ち込んだ初期、フィル・スペクターとの交流が顕著に現れる中期を経て結束が失われていったキャピトル末期からの選曲ですが僕は新鮮に感じられました。

長らく楽曲製作を主導したブライアンが、ビートルズをライバル視したという「PET〜」前後のアートロック志向…そこで培われた技巧的な音響とアレンジは、ポップスへと回帰した楽曲に洗練された味わいをもたらしたのではないでしょうか。
とはいうものの、まぁ音質は団子ですね…キャピトルの録音設備は60年代中盤からステレオ録音が可能だったにも関わらず、モノラル録音の比率が高い事も無縁ではなさそう。
CD化によって4枚組となった際には、もしかするとリマスタリングが施されているのかもしれませんけども…因みに7枚目はブライアンが手掛けた番外編とでもいうべき作品集で、CD化では除外されておりますが前に聴いたコンピの方が充実してますね。

追記:モノラル比率の高さは、Wikipedia情報によりますとブライアンの難聴が関係してるようです、本作の解説書では有能なマネージャーと評されてる父親からの暴力が原因と読んだ覚えがあるんですけども。


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    | music | 2024.03.18 Monday | comments(0) | - |
    最近聴いたCD
    フラワーカンパニーズ「新・フラカン入門」

    前に聴いた気がする彼らの「フラカン入門」を、どんなだったか聴き返そうとしたらPCに保存してなくて…(じゃあいっか)と思ってたら、たまたま図書館で目に留まり。
    タイミング好いなぁ、しかも隣に本作が…ならば新旧で聴き比べか?とも思ったけれど、そもそも比較の仕様がないので'13年の本作を新たに聴いてみようと借りてみた次第。
    “入門”と謳ってるからにはベスト盤なんでしょうか、こちらも変わらず石ノ森章太郎キャラが散りばめられております…クレジットによると、どうやら同氏の「マンガ家入門」及び「新・マンガ家入門」表紙をオマージュしてるっぽいですね。

    印象としては(言葉遊びを控えた奥田民生)というか、あと「一生一緒に居てくれや」的ハートウォーミング系ラップのロック版といった感じも…そうね、がむしゃらさを失くしたガガガSPかな?笑
    ごめんなさい、基本的に肯定的な見方をしたいんですがね…でも決して悪く言いたいんじゃなくて妙にモヤモヤさせられるんです、メチャクチャ心に引っ掛かって来るんですよ。
    どうやらアラフォーらしき率直な心情がムズ痒いといいますか、自分でも作詞作曲とかしてたから(率直過ぎるよ)と思っちゃうんだわ…個人的に応援ソングみたいのが苦手なのもあり、気持ちは分かるけど(そこまで言ったら野暮だろ)と。

    だから逆にズバリ心に刺さる人もいるとは思うし、そういうファン層に向かって歌う事を野暮だと言いたい訳じゃないんですよ…長渕剛とかも根強い人気がある訳ですし、こういう保守的なフォークロックも王道ブルースと同じくらい意義はあるのだと思うのです。
    ワードセンスは心に残るものがあり、先日の70年代フォークに比べれば相応にアップデートされてますね…逆にサウンド面はロックにしようと意識してるような、単なる歪み系フォークでしたが。
    全15曲の74分、たっぷりメソメソ気分に浸れます…まぁ僕が凹んでる時に聴くかと言われたら、フォークな歌詞をR&Bで歌うRCにするかな。


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      | music | 2024.03.02 Saturday | comments(0) | - |
      最近聴いたCD
      EGSCHIGLEN「Sounds of Mongolia モンゴルの音楽」

      '14年にリリースされた「決定版!!」シリーズの一枚、図書館の棚を眺めていて半年前に聴いた「モンゴル出身の音楽家による馬頭琴&生ホーミー」を思い出し…更に昨年末の朗読劇で(声を意識しよう)と思った事も思い出して、何か参考になればと聴いてみた次第。
      いや忘れてた訳じゃないんですよ、散歩しながらトーニングしてたりするし…でも声を出すだけじゃなく、発声や呼吸なんかも意識してみようかと。
      きっと端目から見れば変な人なんでしょうが、そういう参考にはなりません…ホーミーと一口に言ってもバリエーション豊富なのですね、それに「森山周一郎の声でブーツィー・コリンズのベースサウンドを真似る」くらい難しいと思います。

      例えばホーメイと呼ばれる北方のトヴァ共和国だと低音に重点を置いて響かせるそうで、歌唱法も西部アルタイ地方で発達したハイラフ(唸り声唱)など様々なのですね…考えてみればモンゴルと総称される諸民族の活動範囲って広大ですし、チベットや中華圏など近隣の文化とも交流してた歴史もある訳ですから日本国内の民謡や雅楽より複雑なのかもしれません。
      解説書によれば、そもそもモンゴルとはチンギス・ハーン以降の総称であって元は数ある部属の一つを指していたそうです…そしてモンゴルの文化圏は、現在のモンゴル国を含む四つの地域に分けられるのだとありました。

      内蒙古のチャハルとオルドスを挟んで東がホルチン、西が新疆オイラートで北のロシア領を含むブリヤート…歌は大きく二つに分けられ、長い歌の「オルティン・ドー」は裏声など技巧を凝らす馬子歌で短い歌「ボキノ・ドー(ボグンドー)」は拍や節が明確で民謡に近い感覚だとか。
      “美しい旋律”ことエグシグレンはウランバートルの音楽院で'91年に創立された、舞踏家を含む7名のアンサンブルだそう…本作は民謡から舞謡曲まで、伝統的なモンゴル音楽を幅広く押さえた入門編といった選曲のようです。
      7種の弦楽器を主体に口琴(ヘル・ホール)、6孔の横笛(リンベ)縦笛(ツォール)の編成。

      曲名のフフー・ナムジルことモリンホールはチェロに似た2弦楽器、二胡に近いホーチルは2弦ずつ同じ調律の4弦楽器…語り物の伴奏に用いられるショダルガやシャンズは筒状のバチで弾く三味線、北方だけでなく新疆や西部のモリンホールを使わない地域でも欠かせない2弦楽器トプショールはハイラフで歌うマクタール(讃歌)の伴奏用?だそう。
      漢族の揚琴に由来しホーミーの伴奏に用いるヨーチンや、椅子に座って弾く筝のヤッタグを朝鮮楽器カヤグムで代用するのは元代の名残りでしょうか…ベース音を鳴らすイホール、それとシャマンが儀礼に用いる大型のタンバリンに似た太鼓は北米シャーマンのインディアン・ドラムを連想して「精霊の橋」の世界が脳裏に思い浮かんだりも。

      2曲目の旋律に中東っぽさを感じ、平沢進「白虎野の娘」を思わせる朗々とした男声の2ビート「白い胸の雀」は琴の音が中華風…多彩な鳴り物を交えた弦と琴の悠々たる響きに中華モンゴル感が漂う6曲目は終盤の疾走感が日本の箏曲を思わせるインスト曲、ホーミーの地声と倍音が分離して聞こえる「ブヤント・ゴル」も印象的。
      8曲目は牧歌的なリズムに男女の合唱でハイラフ+ホーミーも聞けて盛り沢山、4ビートのジャズ・バイオリン風で中盤から中華街の賑わいへ変調するのがユニークな10曲目はモンゴル最大の祝祭ナーダムを歌う現代曲…12曲目はホーミーの即興曲で様々な技巧が駆使されていると思われ、ホーミーを聞きたいならオススメです。

      せせらぎのような鳴り物とトライアングル(?)がアクセントの14曲目はヨーチン独奏で後半からリズミカルなベースとドラムが加わり鮮やかな速弾きに、ホーミーの生まれ故郷「チャンドマニに捧ぐ」はカーチャーシーに似た爪弾きとホーミー交じりの明朗な歌声が終盤のテンポアップで盛り上がります…ラストの17曲目は英雄歌で、ディジュリドゥを思わせるホーミー×弦の地響きから転じてフィドルのような弦楽に浮遊するホーミー同士のユニゾンも聴きどころかと。
      まぁ全体として素人耳には中国からの風圧が強い印象を受けたものの、逆に中国もまたモンゴルから吹き寄せるシルクロード経由の音楽から大きく影響されていたのでしょうな?


      関連記事:
      【最近聴いたCD】ナムギャル・タツァンの僧侶「チベット密教 極彩の響き」| 2009.02.06
      【本日の脳内BGM】THE HU「Wolf totem」| 2021.12.21

      〈モンゴル・中央アジア〉関連記事:

      *以下の動画は、携帯からでは視聴できないかもしれません。

      『Chandmani nutag (Dedication to the Chandmani Region)』(「チャンドマニに捧ぐ」です;Sound Only)


      『Temujin (Folk Legend)』(英雄歌「テムジン」です;Sound Only)



      以下、トラックリスト。

       
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        | music | 2024.02.11 Sunday | comments(0) | - |
        最近聴いたCD
        太田裕美「手作りの画集」

        前にレコード鑑賞会の主催者から頂戴したLPが凄過ぎて、脳内再生されるだけでもディテールの細やかさに感心しております…そんな次第で、ちょうど図書館で見付けた本作も聴いてみるかと。
        しかしCD選書シリーズは歌詞しか記載されておらず、しかもCDサイズに縮小された手書き風の書体が読み辛い!…なのでWikipedia情報をチェックした所、全11曲中1曲が太田自身の作詩作曲で他は前に聴いた「こけてぃっしゅ」同様に松本隆筒美京平コンビの作詩作曲と判明。
        荻田光雄も6曲のアレンジに名を連ねておりますが、全体的にフォーキーなトーンです。

        実は基本的に彼女の楽曲って、'74年のデビューから一貫して松本&筒美+荻田が関わっていたんですね…ただ本作の半年後にリリースされたアルバムでは全曲を異なる作曲家に依頼したり、1年後の「こけてぃっしゅ」でフォーク路線から“ウエストコーストサウンドやフュージョンを意識した”サウンドにシフトしたりなど方向性の模索に至る直前のアルバムだったようで。
        実際、ジョー&ビングを思わせる筒美アレンジで始まりながらも終盤までは従来路線のリスナーに寄せたかのような退屈さで…期待した荻田アレンジも、聴きどころは9曲目のデヴィッド・T・ウォーカー風ギターやフルートを効かせた11曲目のソフトロック味くらい。

        太田らしくない歌唱が耳に残る10曲目の筒美アレンジは吉田美奈子っぽいものの、フォーク至上主義者からのソフトランディングに苦心したのかと勘繰ってしまったり。笑
        歌詞に関しては4曲目に忍ばせた「木綿のハンカチーフ」に次ぐヒットシングルとなった「赤いハイヒール」にアラン・ドロンの名を織り込むなど、後の(時代に消費される歌)というシティーポップス的な発想で書かれている印象を受けた「こけてぃっしゅ」以前から松本の作風だったのだなと気付かされました…それと「赤い〜」に感じた色彩の対比は、本作のタイトルコンセプトに絡めたのかも?
        ま、どの曲も太田の巧みな歌唱に今更ながら唸らされましたよ。


        関連記事:
        【最近読んだ本】松本隆「松本隆対談集 KAZEMACHI CAFE」| 2009.07.03
        【最近聴いたCD】V.A.「筒見京平 トリビュート the popular music」| 2016.04.07
        【最近聴いたLP】太田裕美「こけてぃっしゅ」| 2023.05.12

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        〈昭和・サブカル〉関連記事


        *以下の動画は、携帯からでは視聴できないかもしれません。

        『太田裕美「オレンジの口紅」 from album "手作りの画集" 1976年 [HD 1080p]』(どこかジョー&ビングっぽい1曲目です;Sound Only)
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          | music | 2024.01.26 Friday | comments(0) | - |
          最近聴いたLP
          エドワルド・マータ指揮ダラス交響楽団「ボレロ/ラヴェル管弦楽曲集」

          本作が、私の所有する唯一のクラシックのアルバムです…RVCより'80年に発売された、当時の最新技術デジタル・レコーディングを謳った点が特徴です。
          クラシックは幼い頃に歌曲を基にした絵本や、名曲集で多少は馴染みがありましたが…特に音楽教育を受けた訳ではなく、本作を購入する直前に観た映画「愛と哀しみのボレロ」で流れていたタイトル曲に心射たれたという安直な理由からでした。
          映画の内容に関しては、ローティーンだった私に理解出来ていたか甚だ疑問ですが。

          クラシックの場合、同じ楽曲でも指揮者やオーケストラによって無数にレコーディングされています…本来なら映画のサントラ盤を買い求めるところですが、地元のレコード店には置いてなかったので(ボレロだったら何でもいいや)と買ってきたのが本作でした。
          しかもデジタル・レコーディングです、よく分からないけれど何か凄いのだろうと思って聴いた覚えがあります…まぁ感想は(映画と同じだ)という、クラシック愛好家には程遠いレベルでしたが。
          それでも何やら高尚な気分に浸りたい時など、A面の表題曲ばかりよく聴いていたような記憶があります。

          大人になってからは恐らく一度も聴き返す事なく、過去にレコードを整理する際に(インスト物だけ残そう)と思って処分を免れたままに…たまたま掃除の最中、一枚々々ジャケットを眺めていて思い出したように聴いてみたという次第です。
          A面曲については「ボレロです」としか言い様がありません、きっと他の指揮者や演奏者だったとしても私には区別が付かないでしょう…B面には「道化師の朝の歌」と「スペイン狂詩曲」が収められており、2曲目の「スペイン〜」は「夜への前奏曲」「マラゲーニャ」「ハバネラ」「市場」の4楽章構成となっております。

          そういえば表題曲およびB面の楽曲も、大人になってから別の指揮者と演奏者による録音を聴いた事があります…このブログを始めるより遥か以前の事ですが、やはり私の耳には違いが分かりませんでした。
          ジャケット裏と解説書の説明文は藤田由之、また解説書のジョン・ファイファーによる「デジタル録音とは?……数字で決まるクォリティー」の訳文は森田真とあります…本作の録音は'80年3月27〜28日、録音形式はPCMながらマスター・テープのみで原盤のカッティングはアナログ方式だそう。
          そうはいっても、素人耳には充分クリアな音質だと感じられます。


          関連記事:
          【最近聴いたCD】O.S.T.「愛と哀しみのボレロ(完全盤)」| 2009.09.11
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            | music | 2024.01.04 Thursday | comments(0) | - |
            最近聴いたCD
            JON CLEARY「Dyna-Mite」

            シンプルというか素朴なジャケから(カントリー・ロックだろうな)と思いきや、意外にスワンピーで南部テイスト強めでした…しかもジョン・クリアリーはロンドン出身のシンガー兼ピアニストなんですね、B3オルガンやウーリッツァーの他ギターにマンドリンなども弾いてます。
            解説書によると、ボ・ガンボスが活動していた80年代後半&スタントン・ムーアギャラクティックが登場した00年代に“ニューオーリンズ・ブーム”があったのだとか…そのニューオーリンズで90年代に頭角を現し、ボニー・レイットジョン・スコフィールドのアルバムに参加するなどサザンロック界隈で注目を集めたとか。

            '18年リリースの本作は全10曲47分、来日記念盤として本邦ではリリースされてたようです…という訳で演奏スタイルとしては新味なき王道ですが、やっぱ聴いてて古臭くないんですね音が。
            でもこういうのが好いんですよ、変に新しいコトやろうと意気がらず音を鳴らしてるような…例えばNRBQとか、オズ・ノイシュガー・ブルーにも感じたけど(爪痕を残すゾ)的な邪念のなさが。
            ヒットチャートを賑わせてる人たちの新しさって、どこか理屈っぽい音に聴こえるんです…まぁ別に悪気はないと思いますし、それで売れてる事にケチを付ける気はないけど。

            ブルースロックであれサザンソウルであれ、そういう(連綿と受け継がれ整えられてきたスタイル)がバックボーンにある…つまり型を踏襲した上での型破りが、形無しのまま様々な旨味を嵌め込んで作る華やかさよりも安定した抜けが感じられるように思うのです。
            そんなの聴いてて楽しければ関係ない事ですが、例えばブルーノ・マーズっぽい歌唱の奥にボビー・ウーマックの渋味が乗ってる気がして…これは決して誰かを貶める評価ではなく、原酒の味わいを丁寧に活かしてる的な意味合いでね。
            新しくはないけど古くもない、それも彼らではなく一人のリスナーとしての勝手な楽しみ方に過ぎないのです。

            かつては往年のスターや誰もが名作だ名盤だと口を揃える古い物すべてをクソと決め付けていた僕も、寄る年波には勝てず遂に保守化してきたのでしょうか…否、むしろ器がデカくなってるんです。
            否定のための否定という決め付けから自由になり、そういったヴィンテージも食わず嫌いを止めたんです…自分なりの評価軸が定まって、若い頃よりも鑑賞の解像度が上がった自分を信じられるようになったからっていう。
            なので今も、流行りの尻馬に乗って誉めそやす気はありません…ただね、声のデカいミーハー(死語)が嫌いだからってアーティストや作品まで巻き添えにするのは気の毒だなと。

            かなり脱線してしまいましたが、そういった次第で僕は(古くて新しい音楽)の魅力を自分的に再発見してる最中なのです…配信で聴く今時のリスナーなら音楽の地層なんて発想は無意味でしょうけど、これは「新人vs.十年選手のコンテスト」じゃなく「石の記憶」みたいな話なんです。
            要は引き出しですね、本作を聴き込んでもいないし聴き手としての引き出しも浅いクセに偉そうですが…それに今の音を手掛けるエンジニアだって配信世代なんだろうけど、掘り出した石の地層を踏まえて聴けるようになった今の僕だから(古くて新しい音楽)に惹かれているんだなと本作で合点が行ったのです。
            Jon Cleary - Dyna-Mite(←クリックで拡大表示されます)
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              | music | 2023.12.13 Wednesday | comments(0) | - |
              最近聴いたCD
              V.A.「Disco Gold: Scepter Records & The Birth Of Disco "A TOM MOULTON MIX"」

              CDとしては'11年にACE RECORDSからリリースされておりますが、オリジナル盤は'75年なんですね…この時点で既にDISCOという単語が存在してたのか、しかもディオンヌ・ワーウィックバカラックと組んでスイートなR&Bで売ってたイメージしかないセプターですよね?っていう意外性に惹かれて手にした次第。
              いや驚きましたよ、セプターのエンジニアだったトム・モールトンがリミキサーの元祖的な存在で音楽的な火付け役だったとは…元祖とか火付け役という言い回しは語弊ありそうだから、その第一人者としておきますか。

              初期のディスコはヒッピー文化の産物で、プレイする音楽は“グルーヴがあるものなら何でも”のノージャンルだったそう…ファイヤー・アイランドのボートホテルで開かれていたビーチ・パーティは性的マイノリティの社交場でもあり、クラブ・カルチャー自体がゲイ・カルチャーに端を発していたとも言えそう。
              3分程度のシングルを次々と流していたDJたちに渡した自作ミックステープが大評判になり、モデルだったトムはシグマ・サウンドで編集作業をするまでに…既存曲の間奏を継ぎ足したロングバージョンから始めて、やがてラジオを通さずチャートインするまでに。

              それまで賄賂を贈ってラジオOAでレコードを売っていた業界の常識が覆され、セプターの重役メル・シェレンがシングルB面にインスト・バージョンを収録…そこから両者が手掛けた初の12インチ・シングルが誕生し、ディスコ・ブームの原動力となったのだとか。
              一気に爆発的な狂乱状態となった結果、今では“ポピュラーミュージックに大規模かつひどい影響を及ぼした”と見なされる世界的な氾濫に至った訳ですが…そもそもリミックスとは、本来あらゆる再生環境を想定しミックスされた音源をダンスフロアに最適化させる作業だったんですね。

              本作の収録曲は12曲と少なめでエクステンデッド感も控えめですが、確かに70年代前半の音圧じゃないですね…原曲を知らないので比較は出来ませんけども、ディスコ・ブーム以後の80年代リミックス物にはない不思議な質感なんですよ。
              録音とミックスの機材も大違いでしょうから当然とはいえ、ノウハウすら確立されていない初期のアナログなリミックス音源はレアでしょう…しかも通常シングル盤で単発されるリミックス音源を、当時こうしてアルバムにコンパイルしていた点も重要でしょう。
              ややマニアックではありますが、個人的には一聴をオススメしたいです。


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                | music | 2023.11.23 Thursday | comments(0) | - |
                最近聴いたCD
                YELLOW MAGIC ORCHESTRA「同」

                いやはや、実は彼らの「BGM」というアルバムと勘違いして借りちゃったんですよ…ジャケの色味が似てるとはいえ、自分でも唖然としましたけど。
                オリジナルのリリースは'78年で、本作は'99年に坂本龍一監修と銘打ったリイシュー盤だそう…当時はコンピューター音楽という語られ方だった本作ですが、本質的には細野晴臣エキゾチックトロピカル三部作から展開したエレクトロ・ディスコだったのねと今更ながら納得。
                リイシューに際して個別にインタビューされた三者の回想からも、結成に至る経緯や思惑からはディスコ・ミュージックを(グローバル・スタンダードなフォーマット)と認識していた様子が伺えます。

                細野はスライ&ザ・ファミリーストーンがリズムマシンを使用した時点からシーケンサーに接近しており、坂本はボニーMの「ラスプーチン」が旋律を解体した切り貼りの楽曲で世界的ヒットとなった事やジョルジオ・モロダーが手掛けた「I feel love」の衝撃を挙げていました…またユキヒロが「クリック音でジャストに叩ける」と評価されていたのは、裏を返せば大半のドラマーがフィルインでのズレこそグルーヴと認識していてクリックを嫌っていた当時の業界的な感覚があったそう。
                ディスコブームに便乗した企画盤と思わせ、実力派プレイヤーの野心的アプローチを大衆性に潜ませるとはね!

                意外だったのは、本作収録の「コンピューター・ゲーム」に使用されているゲーム効果音が実機ではなく一種の耳コピだった事…シンセサイザーを“生楽器のシミュレーション”として研究していた冨田勲が、こうした発想の逆転に“非常に驚いた”というエピソードにも時代の空気を感じます。
                ユキヒロは加藤和彦がロックを“西洋人の民族音楽”と評した事を挙げ、坂本も“黒人と同じようには絶対できない”と発言しており…それぞれに音楽的アイデンティファイを模索していた彼らが、はっぴいえんどで日本語ロックを掘り下げトロピカル三部作で欧米への追従に抗った細野と合流したのも思えば必然だった気がします。

                スター・ウォーズとスペース・インベーダー、そしてディスコが同時に世界を統一した時代…ドイツの実験音楽からシーケンサーがディスコに持ち込まれ、スティーヴィー・ワンダーやアメリカのファンク勢がシンセサイザーをダンス・ミュージックに活用していたタイミングという点も大きいですね。
                ボニーMがエキゾチックなフレーズをディスコ形式に変換し、シーケンサーの単調な反復もディスコ形式に変換し得る…この発想は、当時のアルファ・レコードでYMOと双璧を成したカシオペアが肉体的なテクニックを追求したのとは実に対照的な手法といえます。

                プレイヤーとしての技量は隠し味に留め、潮流を先読みして新たな音楽のスタイルを提示した…半世紀後の視点で俯瞰すれば成功者のロジックになりますが、変化の濁流に揉まれながら状況を把握する事の難しさは言うまでもありません。
                現在の音作りからすればチープな電子音が、本作を成立させる技量の高さを逆説的に際立たせます…やはり個人的にはベースの肉感性が強く感じられますね、機械的な乾いた空気を装う中で妙に生臭いといいましょうか。
                だからこそ無機質なテクノ空間にソウルを感じさせ、その有機性が異物の音に親和感を認識させる役割を担っているのでしょう。


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                  | music | 2023.11.09 Thursday | comments(0) | - |
                  最近聴いたCD
                  V.A.「俺たちのフォーク! 旅情篇」

                  なるべく音楽は偏見を持たず広く浅く聴くようにしてる僕ですが、実は無意識に日本のフォークソングを避けていたんですね…でも最近までGSを(若向けベタ甘ムード歌謡)と誤解していたように、先入観もあるのかな?と。
                  そこで勇気を出して踏み込んでみよう!と、思い切って2枚組アンソロジーを借りてみた次第です。
                  まぁ海外の音楽でも(きっと歌詞で評価されてるんだろうな)としか思えない歌は結構ありますし、だったら音楽的に詰まらなそうな日本のフォークソングだって歌詞で聴けたりするんじゃない?ってね。

                  しかしながら、結論としては(やっぱ70年代ってクヨクヨしてたんだな)と…旅情篇という切り口だから多少は仕方ないにしても、余りにも全体としてセンチメンタル・ジャーニーが過ぎるんですよ。
                  陽気な旅路の歌もあれど、基本的に失恋ソングでなけりゃ受けなかったのか?…'80年の松山千春「人生の空から」はAORの影響を感じさせる曲調でしたが、それ以外ほとんどは60年代のボブ・ディランやPPMで時代が止まってる印象の楽曲ばかり。
                  70年代後半なのに、キャロル・キングジェイムス・テイラー辺りの洒落た雰囲気は感じられず…正直に言うと、ダルい!の一言。

                  '68年の高石ともや「北の国へ」から'86年の谷村新司「いい日旅立ち」まで全40曲、楽曲的には単調で面白さは感じられません…それと「異邦人」はフォークじゃないでしょ、単に旅情を誘うからって紛れ込ませたのか?
                  日本のポップスが遅れたのは、こうしたフォーク勢の内向的な音楽性が足を引っ張ってたのでは?…むしろ60年代のGSは本場のマージー・ビートやR&Bにも劣らないレベルだったのに、70年代のフォーク・ブームで逆行しちゃった感じ。
                  むしろジャズ上がりの専業作曲家が手掛けていたムード歌謡の方が、音楽的には注目に値する気がしますよ。

                  ただ、歌詞に関しては秀逸な歌も割とありました…例えばよしだたくろう名義の「襟裳岬」は、今更ながら言葉選びのセンスに感嘆させられましたし。
                  だけど、そういうのはボブ・ディランと同時代にやっといて欲しかったな…まぁ日本語をポップスに仕立てる礎となったのかもしれませんが、メジャー&マイナー・コードの単純化はミニマライズというより退行しちゃったとしか感じられず。
                  ほとんどの楽曲が退屈の極みでしたけど、この時代にしか書けない歌詞の味わいは捨て難いものがあります…それこそクヨクヨ邦画にも匹敵する、現代とは隔絶した情感がディテールに滲んでてね。

                  音楽的な面白さとして特筆に値するのは、スティービー・ワンダー「迷信」にインスパイアされたようなR&B調アレンジの岡本正「北鎌倉」('74)かな…狩人の「あずさ2号」('77)はフォークというより完全に仕上がりは歌謡曲ですが、わさびーず「信濃の人とお茶の話」('69)はJフォークが目指すべき理想だったような気も。
                  また西岡たかし「夏」('76)はフォークから頭抜けたサウンドがはっぴいえんど的な印象、永井龍運「道標ない旅」('79)のアレンジは尾崎豊の「卒業」に使い回されてた気も…高石ともや「北の国へ」('68)は同時代のフォーク・ロック感があり、その後にJフォークが陳腐化したのは作り手の大衆化もあったのだろうと思ったりしました。


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                    | music | 2023.10.26 Thursday | comments(2) | - |
                    最近聴いたCD
                    MARLENE「Initial」

                    再聴です。
                    タイトルの通り、初期の代表曲をセルフカバーした'11年のアルバムです…全9曲47分でプロデューサーはスクェアの安藤まさひろ改め正容、ラストナンバーは彼とマリーンが共作した新曲だそう。
                    解説書が欠落していて詳細は不明ながら、どうやらスクェアカシオペア“周辺のトップミュージシャン”が演奏しているようで…この“周辺”というボカシ方が気になりますが、そこは期待してた訳でもないのでスルー。
                    でもやっぱり、この選曲でオリジナル・バージョンのベストが好かったんじゃ?と思ったりはしました。

                    とはいえ多分、実際に聴き比べればミックスを古臭く感じたりアレンジの野暮ったさが気になったりするんだろうけど…まぁ前に聴いた時よりは耳が馴れたのか、本作のセルフカバーにも違和感はあまりなくなったかな。
                    じゃあ本作のアレンジが今っぽいかというと、コレはコレで新鮮味はないんだよね…以前も(イケてない)と感じたし、改めて聴いても中途半端な印象。
                    いっそこの時期の流行りっぽい音に作るか、逆にスタンダード的なカッチリした方向でとか思い切った味付けをしたら面白くなったのでは?なんて。
                    要はリメイク集なんだから、もっと遊んだら好かったような。

                    あるいは彼女のファン層が保守的で変化を望まないから、といった理由から(ここまでにしとこう)的な感じだったのか…なんて、勝手に深読みしちゃったり。
                    そうはいっても決して出来が悪い訳ではなく、無難に手堅いアルバムなのですよ…むしろ彼女の持ち歌に統一感を持たせ、落ち着いて聴けるまとめ方になっていると思うし。
                    実際、20代だった頃のアップテンポなナンバーを今の彼女が歌うに相応しいアレンジなんですよね…要するに「マリーン入門編」としては逆にオススメかもしれません、だけど当時の(ジャズシンガーの枠からはみ出てる女性歌手)といったイメージを引きずってる僕としては今一つなのよ。


                    以下、トラックリスト。
                     
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                      | music | 2023.10.10 Tuesday | comments(0) | - |




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