最近読んだマンガ
清水玲子「夢のつづき」
萩尾望都「11人いる!」
わかつきめぐみ「黄昏時鼎談」
すべて再読です、どれも(読んだのは覚えてるけど)レベルだったのですが…大体8〜12年ぶりに読み返した割に感想は以前と大差なかったので、3in1にしてみました。
先ずは清水玲子の「夢のつづき」から、この表題作は如何にも80年代ニューロマなロックスター×彼に惚れ込んだ宇宙一のお嬢様というトンデモ展開…と見せかけて脇役の奴隷執事が主役だったという、オチを知って読み返すと唸らされます。
併録の「8月の長い夜」は、消化不良気味のバイオサスペンス要素が10年後の「秘密 トップシークレット」で開花したのかも…本作の時点では付け焼き刃っぽく、謎解きの手段に留まってる印象ではありますが。
萩尾望都の「11人いる!」は宇宙船で密室劇という点に「冷たい方程式」を連想しましたが、SFらしい設定が上手く機能してて流石ですな…続編「東の地平 西の永遠」は脇役だった美少年によるスピンオフで、密室ミステリーからスペオペ大河ロマンスに大転換。
更に7つの連作短編「スペース ストリート」は残りメンバーにスポットを当てるかと思いきや、宇宙大学でのドタバタコメディです…三編とも話の雰囲気に合わせて絵柄を変えてるのか執筆期間が離れてるのか、初出不明で分かりませんが。
初版'94年の小学館文庫で新編集版だからなのか、中島らもによる巻末エッセイのプロフィールには“二〇〇四年没”と入ってて感心。
わかつきめぐみの「黄昏時鼎談」は七話の表題作&一話目の続編2つ+16話と盛り沢山、'84〜97年と10年以上の幅があるのに絵柄が変わってないのは驚きです…驚きといえば巻末解説が南條竹則だったのもですけど、氏が“気になるもの”として挙げた話が僕と被っていた事も意外でした。
特に印象的な「彼女の瞳」は邪視を扱っており、それは基本的に(視線に宿る妄執)を指す概念なのですが…稀に(目が合うだけで悪意なく人を狂わせる)という凶悪な邪視も、いわゆる「本当にあった怖い話」系の怪談や都市伝説にはあります。
「彼女の〜」は僕が知る4つ目の後者パターンながら、まったく怖くはありません。
そして今回も引っ掛かったAI物の「トライアングル・プレイス」に、氏は肯定的に捉えていますがAIが身近となりつつある現代の感覚では恐怖を覚えてしまいました…亡き妻の意識を取り込んだAIと友情を築く描写も、それをプログラムした亡き妻に感謝する感動的な場面も僕には語り手の狂気としか感じられませんでした。
また氏も“やろうとしたことが”と記している「小春日和」の“流しのリコーダー吹き”設定は、出せる音がCのブルースハープと一緒だから吹ける曲なんて高が知れてるよね…と野暮な考えが先に浮かびましたが、そういうトボケた事を思い付く天然さが年頃の少女には魅力的だったりもするのでしょう。
因みに表題作は原則的に一人一話ずつ語っていく形式なんですが、何故だか第四話だけ3人が順に語っているんですよね…その中でも4ページしかない月魚(つきうお)の話は、中国の神仙譚のような味わいが感じられて心惹かれました。
満月に月へと渡る魚を育てた女の子の許に、月魚が満月の度に新月を迎えるまで帰って来る…短過ぎて謎しかない話なのに、その分からなさが妙に心地好いのです。
こういうミニマルなストーリー漫画は、描き手にしてみれば一種のやっつけ仕事なんでしょうかね…切り詰めた物語を漫画で描き表すってのも、なかなか難しそうですが。
実際、超短編ばかりの本作はタイパ感覚で画面だけ追われたら何の余韻もなさそうだし?
〈清水玲子〉関連記事:
【最近読んだマンガ】清水玲子「ミルキーウェイ」| 2009.08.26
【最近読んだマンガ】清水玲子「秘密 トップ・シークレット」1巻| 2009.12.22
【最近読んだマンガ】清水玲子「天女来襲」| 2015.11.17
【最近読んだマンガ】清水玲子「夢のつづき」| 2016.02.25
〈萩尾望都〉関連記事:
【最近読んだ本】松本隆「松本隆対談集 KAZEMACHI CAFE」| 2009.07.03
【最近読んだマンガ】萩尾望都「イグアナの娘」| 2015.12.15
【最近読んだマンガ】萩尾望都「11人いる!」| 2011.07.03
【最近読んだマンガ】畠中恵(原作)、萩尾望都ほか(漫画)「しゃばけ漫画 佐助の巻」| 2021.11.01
【最近読んだマンガ】V.A.「もしも、東京」| 2022.09.23
以下は個人的メモ画像(3枚)
萩尾望都「11人いる!」
わかつきめぐみ「黄昏時鼎談」
すべて再読です、どれも(読んだのは覚えてるけど)レベルだったのですが…大体8〜12年ぶりに読み返した割に感想は以前と大差なかったので、3in1にしてみました。
先ずは清水玲子の「夢のつづき」から、この表題作は如何にも80年代ニューロマなロックスター×彼に惚れ込んだ宇宙一のお嬢様というトンデモ展開…と見せかけて脇役の奴隷執事が主役だったという、オチを知って読み返すと唸らされます。
併録の「8月の長い夜」は、消化不良気味のバイオサスペンス要素が10年後の「秘密 トップシークレット」で開花したのかも…本作の時点では付け焼き刃っぽく、謎解きの手段に留まってる印象ではありますが。
萩尾望都の「11人いる!」は宇宙船で密室劇という点に「冷たい方程式」を連想しましたが、SFらしい設定が上手く機能してて流石ですな…続編「東の地平 西の永遠」は脇役だった美少年によるスピンオフで、密室ミステリーからスペオペ大河ロマンスに大転換。
更に7つの連作短編「スペース ストリート」は残りメンバーにスポットを当てるかと思いきや、宇宙大学でのドタバタコメディです…三編とも話の雰囲気に合わせて絵柄を変えてるのか執筆期間が離れてるのか、初出不明で分かりませんが。
初版'94年の小学館文庫で新編集版だからなのか、中島らもによる巻末エッセイのプロフィールには“二〇〇四年没”と入ってて感心。
わかつきめぐみの「黄昏時鼎談」は七話の表題作&一話目の続編2つ+16話と盛り沢山、'84〜97年と10年以上の幅があるのに絵柄が変わってないのは驚きです…驚きといえば巻末解説が南條竹則だったのもですけど、氏が“気になるもの”として挙げた話が僕と被っていた事も意外でした。
特に印象的な「彼女の瞳」は邪視を扱っており、それは基本的に(視線に宿る妄執)を指す概念なのですが…稀に(目が合うだけで悪意なく人を狂わせる)という凶悪な邪視も、いわゆる「本当にあった怖い話」系の怪談や都市伝説にはあります。
「彼女の〜」は僕が知る4つ目の後者パターンながら、まったく怖くはありません。
そして今回も引っ掛かったAI物の「トライアングル・プレイス」に、氏は肯定的に捉えていますがAIが身近となりつつある現代の感覚では恐怖を覚えてしまいました…亡き妻の意識を取り込んだAIと友情を築く描写も、それをプログラムした亡き妻に感謝する感動的な場面も僕には語り手の狂気としか感じられませんでした。
また氏も“やろうとしたことが”と記している「小春日和」の“流しのリコーダー吹き”設定は、出せる音がCのブルースハープと一緒だから吹ける曲なんて高が知れてるよね…と野暮な考えが先に浮かびましたが、そういうトボケた事を思い付く天然さが年頃の少女には魅力的だったりもするのでしょう。
因みに表題作は原則的に一人一話ずつ語っていく形式なんですが、何故だか第四話だけ3人が順に語っているんですよね…その中でも4ページしかない月魚(つきうお)の話は、中国の神仙譚のような味わいが感じられて心惹かれました。
満月に月へと渡る魚を育てた女の子の許に、月魚が満月の度に新月を迎えるまで帰って来る…短過ぎて謎しかない話なのに、その分からなさが妙に心地好いのです。
こういうミニマルなストーリー漫画は、描き手にしてみれば一種のやっつけ仕事なんでしょうかね…切り詰めた物語を漫画で描き表すってのも、なかなか難しそうですが。
実際、超短編ばかりの本作はタイパ感覚で画面だけ追われたら何の余韻もなさそうだし?
〈清水玲子〉関連記事:
【最近読んだマンガ】清水玲子「ミルキーウェイ」| 2009.08.26
【最近読んだマンガ】清水玲子「秘密 トップ・シークレット」1巻| 2009.12.22
【最近読んだマンガ】清水玲子「天女来襲」| 2015.11.17
【最近読んだマンガ】清水玲子「夢のつづき」| 2016.02.25
〈萩尾望都〉関連記事:
【最近読んだ本】松本隆「松本隆対談集 KAZEMACHI CAFE」| 2009.07.03
【最近読んだマンガ】萩尾望都「イグアナの娘」| 2015.12.15
【最近読んだマンガ】萩尾望都「11人いる!」| 2011.07.03
【最近読んだマンガ】畠中恵(原作)、萩尾望都ほか(漫画)「しゃばけ漫画 佐助の巻」| 2021.11.01
【最近読んだマンガ】V.A.「もしも、東京」| 2022.09.23
以下は個人的メモ画像(3枚)
| comic | 2024.03.12 Tuesday | comments(0) | - |