最近読んだマンガ
水木しげる「戦記短編集 幽霊艦長 他」
講談社の「水木しげる漫画大全集」の一巻、ナンバー066って事は既に65巻まで刊行されてるのですか…図書館では本作しか見かけませんでしたけど、きっと全巻揃えてるのでしょう。
単行本では差し替えられた扉絵なども洩らさず収録、監修に携わっている京極夏彦の熱意が伝わってくる出来映えとなっております。
水木しげるといえば「ゲゲゲの鬼太郎」を始めとする妖怪漫画で知られていますが、本作のような戦記物や「近藤勇」のような時代物などもあるのです…特に戦後の貸本期から手掛ける戦記物は、ご自身の体験に基づく描写が迫力満点で。
とはいうものの、やはり完成度にはムラがあります…もちろん画力は安定しているので、筋書きの話です。
ご自身の実体験や、同じようにニューギニア周辺など太平洋戦を体験された方々から聞き取ったエピソードに基づく話は面白く(という言い方は語弊がありますけど)感じられるのに…沖縄戦や中国戦線が舞台になると、その目に焼き付け体に染み込んだリアリティが反映されないせいか妙に堅苦しい感じになっていて。
ただ「戦争と日本 笑ってすまされない 近所迷惑への反省」が自虐史観プロパガンダに踊らされた訳ではなく、実際に“中国の人殺しの話もたくさん聞かされた”とあって本当に残念で悲しくなります…逆に「姑娘 改訂版」は小隊に誘拐された中国人女性が自害するラストを編集側の意向でマイルドに改変していて、そこには“オモチロイ”作品を要求される立場の複雑な心情が感じられたりも。
そして「私は貝になりたい」を思わせる、一兵卒が戦犯として生涯を終える「ごきぶり」も胸に沁みます。
最前線の疑心暗鬼と壮絶な飢餓や風土病に晒されながらも飄々とした水木一等兵のエピソードは、まさにユーモアとペーソスの案配が効いた独壇場ですね…しかしながら、もしも自分が上官として居合わせていたら軍隊という組織には許されざる人物として生かして帰さなかったでしょうけど。
なんて、生意気な事を言っても僕なんか軍隊で出世するより水木一等兵に追随しようとして命を落としちゃうのは目に見えてますが!
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ご自身の実体験や、同じようにニューギニア周辺など太平洋戦を体験された方々から聞き取ったエピソードに基づく話は面白く(という言い方は語弊がありますけど)感じられるのに…沖縄戦や中国戦線が舞台になると、その目に焼き付け体に染み込んだリアリティが反映されないせいか妙に堅苦しい感じになっていて。
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最前線の疑心暗鬼と壮絶な飢餓や風土病に晒されながらも飄々とした水木一等兵のエピソードは、まさにユーモアとペーソスの案配が効いた独壇場ですね…しかしながら、もしも自分が上官として居合わせていたら軍隊という組織には許されざる人物として生かして帰さなかったでしょうけど。
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| comic | 2014.05.04 Sunday | comments(0) | - |