最近読んだ本
畠山直哉「BLAST」
初版'13年、題名のとおり(爆風/発破)を撮影した写真集です…つまり採石現場で巨大な岩に発破を仕掛けて破砕する瞬間を捕らえた、現場に携わる方々ですら見る事の出来ない場面を収めております。
ってネタバレしちゃうより、本当は予備知識なしで見た方が奇妙な衝撃を味わえるんでしょうけれども。
北は北海道から南は沖縄まで、日本は豊富な石灰岩の鉱脈地帯なのだそうで…今も山奥を切り開いて都市部へコンクリート原料を供給する、こうした場所が各地に存在しているのですね。
最初はパッと見て海外かと思い、次に連想したのは戦隊物の特撮でお馴染みの爆風舞う決戦場でした…しかしこれが遠い国の出来事でも子供番組のフィクションでもない、現代社会の礎として自然物が人工物へと加工される第一段階なのだと気付き戦慄を覚えました。
「ファーストフード・ネイション」や「いのちのたべかた」が現代の食生活のカーテンを捲った時よりも、道路や建物といった生活環境の利便性に対しては完全に思考停止していた自分に対して戦慄を覚えたのです。
'95〜08年という撮影時期も、撮影許可を得る際に地名を明かさない条件で承諾されたので特に意味はないのですが…このタイミングで見ると、否が応でも御嶽山の噴火を思い出さずにはいられないんですよね。
抱えきれないほどの重そうな岩が吹き飛び、無数の石礫が砲火のように降り注ぐ…噴煙に閉ざされた視界の向こうから、これらが襲い掛かってきていたのかと。
これは出版時点では想像もつかなかった読まれ方でしょう、しかし読者は「山頂で火山性爆発に遭遇する」という事態と結び付けて見てしまわずにいられないのではないかと思うのです。
あと何年かすれば、本作も当初に意図されていたように見る事が出来るのかもしれません…それが好い事なのか悪い事なのか、という難問を脇に置くならば。
いずれにしても、遠距離からレーザー光でモータードライブを作動させる技術が見る事を可能にした光景なのでした…カメラ本体がギリギリで安全な位置を、背後の丘から双眼鏡で指示する現場監督の経験知は職人芸の域に達していますね!
こうした社会的な意義と、芸術写真の娯楽性を兼ね備えた仕事は写真家の理想ではなかろうかと僕は思います。
地味だし下準備も大変そうですが、これぞgood job!
→〈土木・建築〉関連記事
初版'13年、題名のとおり(爆風/発破)を撮影した写真集です…つまり採石現場で巨大な岩に発破を仕掛けて破砕する瞬間を捕らえた、現場に携わる方々ですら見る事の出来ない場面を収めております。
ってネタバレしちゃうより、本当は予備知識なしで見た方が奇妙な衝撃を味わえるんでしょうけれども。
北は北海道から南は沖縄まで、日本は豊富な石灰岩の鉱脈地帯なのだそうで…今も山奥を切り開いて都市部へコンクリート原料を供給する、こうした場所が各地に存在しているのですね。
最初はパッと見て海外かと思い、次に連想したのは戦隊物の特撮でお馴染みの爆風舞う決戦場でした…しかしこれが遠い国の出来事でも子供番組のフィクションでもない、現代社会の礎として自然物が人工物へと加工される第一段階なのだと気付き戦慄を覚えました。
「ファーストフード・ネイション」や「いのちのたべかた」が現代の食生活のカーテンを捲った時よりも、道路や建物といった生活環境の利便性に対しては完全に思考停止していた自分に対して戦慄を覚えたのです。
'95〜08年という撮影時期も、撮影許可を得る際に地名を明かさない条件で承諾されたので特に意味はないのですが…このタイミングで見ると、否が応でも御嶽山の噴火を思い出さずにはいられないんですよね。
抱えきれないほどの重そうな岩が吹き飛び、無数の石礫が砲火のように降り注ぐ…噴煙に閉ざされた視界の向こうから、これらが襲い掛かってきていたのかと。
これは出版時点では想像もつかなかった読まれ方でしょう、しかし読者は「山頂で火山性爆発に遭遇する」という事態と結び付けて見てしまわずにいられないのではないかと思うのです。
あと何年かすれば、本作も当初に意図されていたように見る事が出来るのかもしれません…それが好い事なのか悪い事なのか、という難問を脇に置くならば。
いずれにしても、遠距離からレーザー光でモータードライブを作動させる技術が見る事を可能にした光景なのでした…カメラ本体がギリギリで安全な位置を、背後の丘から双眼鏡で指示する現場監督の経験知は職人芸の域に達していますね!
こうした社会的な意義と、芸術写真の娯楽性を兼ね備えた仕事は写真家の理想ではなかろうかと僕は思います。
地味だし下準備も大変そうですが、これぞgood job!
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| books | 2015.01.05 Monday | comments(2) | - |