最近読んだ本
栗生沢猛夫「図説|ロシアの歴史」
初版'10年、久しぶりに「ふくろうの本」ですな…意図して選んだ訳ではないけど、図版が多く読みやすい感じで選ぶと結果的にこのシリーズであるという事が重なっただけなんです。
特に、自分にとって未知の事柄を知ろうとする時は重宝するシリーズですね…イメージとして記憶に残るし、内容に物足りなさを感じる事もありませんですし。
ただし本書は著者のバイアスが強すぎて、随所に感じられる判官びいきを差っ引いて読む必要があります。
それに時系列を行きつ戻りつする書き方は、やむを得ないにしても読みづらい!
ロシア愛に溢れた著者の期待とは裏腹に、結局ロシアって未開人の国なんだと思い知らされましたよ…人と資源はあるもんだから工業化で大国になったものの、根っこは貧しい後進国のままだから全部ちぐはぐ!
ロシアの多数民族スラヴ人がキエフの城塞(クレムリ)都市から建国を始めたのが9世紀、以降14世紀頃までは民会という合議制に基づく都市国家の連合体だったそうですが…モスクワ大公国へと国内統一が進み19世紀末にロマノフ朝が打倒されるまでの専制君主時代〜第一次大戦の最中に転換した社会主義独裁政権と、ひたすら権力者の殺しあい&農民虐待の歴史です。
近代に入っても長らく人口の8割が農民だった割に、その多数を占める農奴は牛馬に劣る所有物でしかなかったとは…日本も地主の下に小作農民がいたので構造としては似ている気もするのですが、土地も貧しく人心も貧しいせいで暴力的な搾取が常態化したのかな?
それでいて絵画はパトロンの肖像画だけじゃなく不思議と風景画が充実してる感じで、一概に貴族の道楽とも思えないジャーナリスティックな題材といい高価な筈の画材を西欧から工面するコネとカネの出所はどうなっていたのかなどと却って疑問が膨らみましたよ。
特に近代の、社会主義革命に周辺国を巻き込もうとして中国の共産化に一役買ったり逆に反共ムードが高まったドイツにナチの台頭を促したりという悪影響は計り知れませんね…日本陸軍の大陸侵出も清の崩壊とロシアの南進政策に対する防衛線だった訳ですが、国内グダグダな割に第二次大戦の対独東部戦線を一国で戦い抜いたロシアの底力は脅威的。
ちなみに大戦後の日本人シベリア抑留者に対する酷い扱いは、自国の農奴や流刑者と大差なかったっぽいな…よくもまぁそんな国の閣僚制度を参考にしてたもんだ、GHQにブッ壊してもらっとけば好かったのに。笑
ビザンツ帝国からキリスト教国化したのは地政上の理由が大きかったのでしょうが、どうもマニアックな選択に走りがちですねロシアって…ローマカトリックじゃなく正教、民主主義じゃなく社会主義と常に反主流なのは単に大局観の欠如?
ただし北から西にフィン族バルト族ドイツ騎士団やポーランドが、更に南のコザックだって版図の拡大を狙っていた折にモンゴル傘下へ与したのは正解でしょう…「タタールのくびき」とは要するにハン国の支配下にあったロシア人の屈辱を指すようですが、だったん人の導きがなければ国としての基礎形態も整えられたかどうか大いに怪しい所。
そもそも国民に国の意識が芽生えたのなんて、実のところペレストロイカ以降に各地が地下資源ごと離脱・独立してからなのでは?笑
そりゃあ今の感覚で過去を捉えるべきではないし、他の国だって実際は似たり寄ったりだったとしても…これほど不愉快な気持ちにさせられる歴史を読むのは初めてで、残念ながらロシアへの嫌悪感が募りました。
そして僕が最も興味を抱いていた冷戦下でKGBが行っていた工作活動に関しては、何も参考になりませんでした…まだ同時期のCIAほどには情報公開されてないのかもね、だけど「ヘタリア」ロシアのキャラ設定“田舎っぽい素朴さと子供っぽい残酷さが入り混じって、なんともいえない威圧感”は本書を読んで納得!笑
〈ふくろうの本〉関連記事:
石井正己「図説|遠野物語の世界」| 2008.03.04
西尾哲夫「図説|アラビアンナイト」| 2009.10.21
岩田託子、川端有子「図説|英国レディの世界」| 2013.09.24
ダーリング・ブルース、ダーリング・常田益代「図説|ウィリアム・モリス」| 2013.11.05
辻原康夫「図説|国旗の世界史」| 2016.11.24
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【最近読んだ本】山井教雄「まんが 現代史」| 2014.09.26
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→〈ロシア〉関連記事
→〈東欧〉関連記事
以下は個人的メモ画像。
初版'10年、久しぶりに「ふくろうの本」ですな…意図して選んだ訳ではないけど、図版が多く読みやすい感じで選ぶと結果的にこのシリーズであるという事が重なっただけなんです。
特に、自分にとって未知の事柄を知ろうとする時は重宝するシリーズですね…イメージとして記憶に残るし、内容に物足りなさを感じる事もありませんですし。
ただし本書は著者のバイアスが強すぎて、随所に感じられる判官びいきを差っ引いて読む必要があります。
それに時系列を行きつ戻りつする書き方は、やむを得ないにしても読みづらい!
ロシア愛に溢れた著者の期待とは裏腹に、結局ロシアって未開人の国なんだと思い知らされましたよ…人と資源はあるもんだから工業化で大国になったものの、根っこは貧しい後進国のままだから全部ちぐはぐ!
ロシアの多数民族スラヴ人がキエフの城塞(クレムリ)都市から建国を始めたのが9世紀、以降14世紀頃までは民会という合議制に基づく都市国家の連合体だったそうですが…モスクワ大公国へと国内統一が進み19世紀末にロマノフ朝が打倒されるまでの専制君主時代〜第一次大戦の最中に転換した社会主義独裁政権と、ひたすら権力者の殺しあい&農民虐待の歴史です。
近代に入っても長らく人口の8割が農民だった割に、その多数を占める農奴は牛馬に劣る所有物でしかなかったとは…日本も地主の下に小作農民がいたので構造としては似ている気もするのですが、土地も貧しく人心も貧しいせいで暴力的な搾取が常態化したのかな?
それでいて絵画はパトロンの肖像画だけじゃなく不思議と風景画が充実してる感じで、一概に貴族の道楽とも思えないジャーナリスティックな題材といい高価な筈の画材を西欧から工面するコネとカネの出所はどうなっていたのかなどと却って疑問が膨らみましたよ。
特に近代の、社会主義革命に周辺国を巻き込もうとして中国の共産化に一役買ったり逆に反共ムードが高まったドイツにナチの台頭を促したりという悪影響は計り知れませんね…日本陸軍の大陸侵出も清の崩壊とロシアの南進政策に対する防衛線だった訳ですが、国内グダグダな割に第二次大戦の対独東部戦線を一国で戦い抜いたロシアの底力は脅威的。
ちなみに大戦後の日本人シベリア抑留者に対する酷い扱いは、自国の農奴や流刑者と大差なかったっぽいな…よくもまぁそんな国の閣僚制度を参考にしてたもんだ、GHQにブッ壊してもらっとけば好かったのに。笑
ビザンツ帝国からキリスト教国化したのは地政上の理由が大きかったのでしょうが、どうもマニアックな選択に走りがちですねロシアって…ローマカトリックじゃなく正教、民主主義じゃなく社会主義と常に反主流なのは単に大局観の欠如?
ただし北から西にフィン族バルト族ドイツ騎士団やポーランドが、更に南のコザックだって版図の拡大を狙っていた折にモンゴル傘下へ与したのは正解でしょう…「タタールのくびき」とは要するにハン国の支配下にあったロシア人の屈辱を指すようですが、だったん人の導きがなければ国としての基礎形態も整えられたかどうか大いに怪しい所。
そもそも国民に国の意識が芽生えたのなんて、実のところペレストロイカ以降に各地が地下資源ごと離脱・独立してからなのでは?笑
そりゃあ今の感覚で過去を捉えるべきではないし、他の国だって実際は似たり寄ったりだったとしても…これほど不愉快な気持ちにさせられる歴史を読むのは初めてで、残念ながらロシアへの嫌悪感が募りました。
そして僕が最も興味を抱いていた冷戦下でKGBが行っていた工作活動に関しては、何も参考になりませんでした…まだ同時期のCIAほどには情報公開されてないのかもね、だけど「ヘタリア」ロシアのキャラ設定“田舎っぽい素朴さと子供っぽい残酷さが入り混じって、なんともいえない威圧感”は本書を読んで納得!笑
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以下は個人的メモ画像。
中国=漢民族の単一国家ではないように、ロシアにも昔から多様な人種と文化が存在していました。しかし多くの少数民族が強制移住によって故郷を追われ、アフガン侵攻の最前線に隣国ウズベク人を配置してイスラム教徒同士で殺し合うよう仕向けていた(by「それでも笑みを」)点で多数派スラブ人の国という印象です。
「赤」に美しいという意味を持たせるのは、やはり寒い国だからなのかな・・・共産主義が赤色なのも、ロシアが始めたからなのかもね?
100年おきの定点スケッチなんて出来る人いる筈ないよね、だけど地平線に町が興り尖塔がそびえるまでの様子は物語を感じさせます。
描かれたのは19世紀ですが、スペクタキュラーな構図が非常に印象的です。
ハリストス=キリストなのね、ニコライ堂のニコライさんを思い浮かべてしまうのは微妙に違ってたのね?笑
最初(壮観だなー)って思ったけれど、先日みた「ヤング・シャーロック ピラミッドの謎」の図書室も雰囲気が似てました(規模は小さいけど)。
かつては挿絵画家がジャーナリズムの一翼を担っていたのだと感じさせます、その瞬間に立ち会ったような生々しさ!
富農と農奴の関係は、日本でいうと大地主と小作農に近いのでしょうかね・・・?
およそ100年前の写真ですが、つい先日のプーチンも同じ事を繰り返していましたね・・・というか大昔から何も変わらないってのが凄いというか、理解出来ません。
こないだ読んだダン・シモンズの「重力の終わり」に出てきた場所、かなぁ?
ヴァリャーギとはスラヴ語名でいうヴァイキングらしく、Wikipedia情報によれば“ロシアでは15世紀までスウェーデン人をヴァリャーグと呼んでいた”とあるのですが・・・?
ロシアの国名はルーシという地名に由来するそうで、ベラルーシは「白ロシア」という意味だそう。
ちなみに現在も紛争が続く中・南部ウクライナは「小ロシア」と呼ばれてきたそうで、Wikipedia情報によると“小国の乱立したルーシ地域では早くからウクライナやベラルーシの人々とロシアの人々との間には異なった民族意識が醸成されていった”という歴史的な経緯がある訳ですな。
「赤」に美しいという意味を持たせるのは、やはり寒い国だからなのかな・・・共産主義が赤色なのも、ロシアが始めたからなのかもね?
100年おきの定点スケッチなんて出来る人いる筈ないよね、だけど地平線に町が興り尖塔がそびえるまでの様子は物語を感じさせます。
描かれたのは19世紀ですが、スペクタキュラーな構図が非常に印象的です。
ハリストス=キリストなのね、ニコライ堂のニコライさんを思い浮かべてしまうのは微妙に違ってたのね?笑
最初(壮観だなー)って思ったけれど、先日みた「ヤング・シャーロック ピラミッドの謎」の図書室も雰囲気が似てました(規模は小さいけど)。
かつては挿絵画家がジャーナリズムの一翼を担っていたのだと感じさせます、その瞬間に立ち会ったような生々しさ!
富農と農奴の関係は、日本でいうと大地主と小作農に近いのでしょうかね・・・?
およそ100年前の写真ですが、つい先日のプーチンも同じ事を繰り返していましたね・・・というか大昔から何も変わらないってのが凄いというか、理解出来ません。
こないだ読んだダン・シモンズの「重力の終わり」に出てきた場所、かなぁ?
ヴァリャーギとはスラヴ語名でいうヴァイキングらしく、Wikipedia情報によれば“ロシアでは15世紀までスウェーデン人をヴァリャーグと呼んでいた”とあるのですが・・・?
ロシアの国名はルーシという地名に由来するそうで、ベラルーシは「白ロシア」という意味だそう。
ちなみに現在も紛争が続く中・南部ウクライナは「小ロシア」と呼ばれてきたそうで、Wikipedia情報によると“小国の乱立したルーシ地域では早くからウクライナやベラルーシの人々とロシアの人々との間には異なった民族意識が醸成されていった”という歴史的な経緯がある訳ですな。
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