錯覚の科学 (文春文庫) [ クリストファー・チャブリス ]
錯覚の科学 (文春文庫) [ クリストファー・チャブリス ] (JUGEMレビュー »)
ここ数年で断トツのインパクトでした、誰もが犯す悪意なき嘘について。
それは克服可能な「個人の資質の問題」ではなく、だから盗用は必ずしも悪意ではないし医療ミスだってプロ失格じゃない訳です。
「たった一つの真実」なんて詭弁だし、所詮は見たい物を見て信じたい事を信じてるのよ。
己の記憶力を根拠に持論を曲げない友人には、是非とも本書を読んで柔軟さを学んでほしいな!
紹介記事【2020.03.16】
【中古】 バランサンド /ミルトン・バナナ・トリオ 【中古】afb
【中古】 バランサンド /ミルトン・バナナ・トリオ 【中古】afb (JUGEMレビュー »)
ミルトン・バナナは「ゲッツ/ジルベルト」にも参加したボサノバ・レジェンドだったようで、ヴィオランのバチーダ奏法を応用した軽やかなビートがチャーミングなインスト物です。
東芝EMIの旧盤は別トリオの音源が混在したイカサマCDながら、ボッサ・トレスとのカップリングと思えば悪くないかも。笑
紹介記事【2020.02.22】
ACCA13区監察課 Blu-ray BOX 1【Blu-ray】 [ 下野紘 ]
ACCA13区監察課 Blu-ray BOX 1【Blu-ray】 [ 下野紘 ] (JUGEMレビュー »)
オノ・ナツメが原作でマッドハウス制作と、期待に違わぬスリリングかつユーモラスな展開が絶妙!
曲も映像も洒落てるOPは毎回飛ばさず観ちゃう位、大人のほうが楽しめる心理描写はハードボイルド風味のファンタジーという感じ。
紹介記事【2020.02.19】
セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー! [DVD]
セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー! [DVD] (JUGEMレビュー »)
宇宙で冷戦終結を迎え置き去り状態の「最後のソビエト連邦国民」と無線が趣味のハバナ大学教授に、ソビエトを憎む老CIAや反米官僚が絡む異色コメディ。
なので旧ソビエトとキューバの関係や、キューバがアメリカから経済封鎖を受けていた位は把握しときましょう。
古い喜劇の味わいを思わせる友情物語で、トボケたラストに繋がる枠物語の構成も見事。
紹介記事【2020.06.18】
探しに行こうよ
探しに行こうよ (JUGEMレビュー »)
終盤で詰んで積みゲー化していましたが、攻略本を入手したので再開しクリア達成!
PS2初期のタイトルで粗は色々ありますが、それを補う楽しさがありますね。
冒険ごっこの通過儀礼を、町の大人たちも密かに懐かしく思っているのでしょうな・・・バトル少な目のパズル進行と世界観のバランスがマッチして、ラストで温かい気持ちになりました。
紹介記事【2020.01.29】
愛しのインチキガチャガチャ大全ーコスモスのすべてー【電子書籍】[ ワッキー貝山 ]
愛しのインチキガチャガチャ大全ーコスモスのすべてー【電子書籍】[ ワッキー貝山 ] (JUGEMレビュー »)
(注・サムネは【電子書籍】です)
創業するやスーパーカー・ブームに乗り、ガチャガチャ界に名を馳せたコスモス。
「ハズレ」という画期的な概念を持ち込むなど大人気ない阿漕さに、読めば呆れる伝説の数々!
10万点を越えるコレクターにより陽の目を見た驚きと苦笑いの裏側、時代のユルさに悪乗り出来た時代の仇花か?
紹介記事【2020.01.24】
送料無料【中古】私たちの幸せな時間 (Bunch Comics Extra) [Comic] 佐原 ミズ; 孔 枝泳 and 蓮池 薫
送料無料【中古】私たちの幸せな時間 (Bunch Comics Extra) [Comic] 佐原 ミズ; 孔 枝泳 and 蓮池 薫 (JUGEMレビュー »)
粗筋だけなら一昔前のケータイ小説にありそうですけど、これは「泣ける漫画」として「泣いてスッキリ」じゃ詰まらないな。
彼は私かもしれない、そう感じた事を「ない」と即答してしまう人こそ僕には恐ろしく思えます。
僅かに心を詰まらせる、この幕切れの匙加減も見事だな…所詮は自分の時間を生きるしかないが故にこそ惜しむべき死も最大限の糧に変えてゆく、キリスト教的なカタルシスではありますが。
紹介記事【2020.03.03】
劇場版 天上人とアクト人最後の戦い【中古】【アニメ】中古DVD
劇場版 天上人とアクト人最後の戦い【中古】【アニメ】中古DVD (JUGEMレビュー »)
決して悪口ではなく、単に(ゆるふわ系)が好みじゃないので京都アニメーション作品って基本的に観ないのですが。
本編後に連続再生された特典映像で事件前の京アニ第一スタジオを観て、お亡くなりになった木上監督らの姿に胸が苦しくなりました。
失われた才能と未来を思い、死は画面越しの出来事ではないと改めて痛感しました。R.I.P.
紹介記事【2020.04.21】
ザ・タイガー!!! [ プータリット・プロムバンダル ]
ザ・タイガー!!! [ プータリット・プロムバンダル ] (JUGEMレビュー »)
タイの伝説に基づいた、人食い虎の魔物と戦うファンタジック・サスペンス・SFXアクション!
タイ語にクメール語に中国語とオーストラリア英語が辺境のジャングルで入り乱れる発想が面白いですね、それと食った人に化ける妖虎はゾンビ的で西洋ホラーの影響も思わせたりと好い意味でエキゾチック。
観ないジャンルであれば尚更オススメです、個人的には。
紹介記事【2020.06.13】
シンデレラはウンザウンザを踊る / バックドロップシンデレラ
シンデレラはウンザウンザを踊る / バックドロップシンデレラ (JUGEMレビュー »)
まるでN.Y.パンクを笠置シヅ子が乗っ取ったような?って両方とも詳しくない個人の感想ですが、今時こんな万人受けしそうにない音楽が商業ベースに乗れてる自主自立スタンスは本物。
ウンザウンザなる独自の「ええじゃないかポルカ」的な音楽スタイルを追究するカッコ好さ!
紹介記事【2020.02.04】
暴力戦士 [ 田中健 ]
暴力戦士 [ 田中健 ] (JUGEMレビュー »)
六甲の野外フェスで抗争勃発、東京側のリーダーが神戸リーダーの妹と呉越同舟の70年代クヨクヨ邦画版「手錠のままの脱獄」。
まぁ70年代とはいっても'79年の公開ですし全然クヨクヨじゃない石井輝男監督作です、ワルな田中健&ワルな岡田奈々+ホンワカした劇伴音楽のミスマッチぶりが逆に微妙さ加減を演出してる気も。
紹介記事【2020.02.18】
【中古】 ロリータの詩集(1) 花とゆめC1469/山中音和(著者) 【中古】afb
【中古】 ロリータの詩集(1) 花とゆめC1469/山中音和(著者) 【中古】afb (JUGEMレビュー »)
ロリといっても訳アリ少女が徐々に「言葉」を取り戻していく高校生群像劇で、この大人になってから黒歴史化しそうな青臭いクールさが気恥ずかしくもあります。
上條淳士っぽい仏頂面に微妙な起伏を見せ、十代の粗い鋭さを感じさせます。
コミュニケーションって相手を通じて自分を見てるのね、その双方向の情報整理が年頃的に紛らわしく感じられたんだなーなんて。
紹介記事【2020.02.23】
HAIM / Days Are Gone 【CD】
HAIM / Days Are Gone 【CD】 (JUGEMレビュー »)
(注・サムネは前作です)
露出過多なセクシー路線に走りがちな女性シンガーとは一線を画すビジュアルといい、個人的に注目の若手3姉妹です。
父の影響で幼少時から学んだビートのセンス、民族音楽を専攻した長女はベースもフレーズがユニーク。
リズミカルな節回しの歌い方からはケイト・ブッシュを連想しました、楽曲のポップさと裏腹な何かしらハッとさせられる音のフックは前作が偶然の産物ではなかった証拠です。
紹介記事【2020.04.12】
◆◆日本昭和トンデモ児童書大全 オールカラー版 / 中柳豪文/著 / 辰巳出版
◆◆日本昭和トンデモ児童書大全 オールカラー版 / 中柳豪文/著 / 辰巳出版 (JUGEMレビュー »)
高度成長期を経て政治紛争も落ち着き、子供相手の経済が回り始めた時代の怪しい児童書から91冊を厳選。
夢と科学の分岐点、情報社会の一歩手前で他愛ない悪夢を盛り上げていた陰の功労者たちの人物伝も短いながら奥行きが増します。
こういったサブカル昭和臭は電子書籍じゃ嗅げないよなぁ?笑
紹介記事【2020.02.09】
空色のメロディ 1【電子書籍】[ 水沢めぐみ ]
空色のメロディ 1【電子書籍】[ 水沢めぐみ ] (JUGEMレビュー »)
(注・サムネは【電子書籍】です)
昔の「りぼん」とか「なかよし」っぽさと「少女コミック」っぽさとの中間といった印象で、洋風カントリーに王子様テイストは鉄板ですな。笑
番外編までバッチリ取りこぼしのない構成&画力で飽きさせませんよ、今じゃ出来ない牧歌的な少女漫画のエッセンスを堪能しました。
紹介記事【2020.04.02】
もののあはれ (ハヤカワ文庫SF ケン・リュウ短篇傑作集 0) [ ケン・リュウ ]
もののあはれ (ハヤカワ文庫SF ケン・リュウ短篇傑作集 0) [ ケン・リュウ ] (JUGEMレビュー »)
中国SFへの興味で手にした短編集ですが、原題も「Mono no Aware」と日本的な精神性の翻訳感に気恥ずかしさと碁の大局観や利他の解釈を絡めた表題作に感嘆させられ。
分かったように持ち上げてる訳ではなく、他にも70年代ハチャハチャ風味に本領発揮のシンギュラリティSFと清代末のファンタジー〜香港スチームパンクなどサービス精神も旺盛。
一神教的世界観からの落とし処もまた東洋的といいますか、僕は心地好かったな。
紹介記事【2020.05.28】
ハピネット Happinet DOPE/ドープ!! 【DVD】
ハピネット Happinet DOPE/ドープ!! 【DVD】 (JUGEMレビュー »)
制作にファレル・ウィリアムスが噛んでるだけあって、90年代ラップ愛と直球加減のハズし方が独特です。
正に「違法な薬物」+「まぬけ」=「素晴らしい」ドープさ、ハーレムでド底辺スクールカーストでマイノリティな3人組がどんでん返しを繰り返しつつ見事な着地を決めてくれました。
ラストショットの射抜くような眼差しは、ユルく観せつつ「スーパーフライ」の哀しみをアップデートしてるね。
紹介記事【2020.04.07】
【中古】SIMPLE2000シリーズ アルティメット Vol.2 エディット・レーシング
【中古】SIMPLE2000シリーズ アルティメット Vol.2 エディット・レーシング (JUGEMレビュー »)
噛めば噛むほどハマる、所謂スルメゲーなのです。
ディスクやゲームソフトやらでのコース生成もユニークですが、何より本編に再び絶賛ドハマり中です。
攻略サイトも本もないので、相性やレベルの効果にメール総数の増減など手探りで検証。
もしかして逆走バグを発見したのって僕ぐらいじゃない?笑
紹介記事【2020.02.26】
【中古】 おあとがよろしいようで コミックエッセイ /オカヤイヅミ(著者) 【中古】afb
【中古】 おあとがよろしいようで コミックエッセイ /オカヤイヅミ(著者) 【中古】afb (JUGEMレビュー »)
いや落語の漫画じゃなく、食と死を問うエッセイ漫画です。
15名の作家たちとの会食インタビューを、益田ミリが筆書したようなタッチで描いてます。
“死ぬ前に食べたいものってなに?”という「話に詰まった酒席の定番」みたいな企画で一席設けるとは、みんなオイシイ発想ですな!笑
死は誰もが体験しうる一番遠い未来、実は「おあとがよろしいようで」=「次の準備が整いました」って深いな。
紹介記事【2020.01.18】
planetarian ちいさなほしのゆめ+星の人 Webアニメ版全5話+劇場版コンボパック ブルーレイ+DVDセット【Blu-ray】
planetarian ちいさなほしのゆめ+星の人 Webアニメ版全5話+劇場版コンボパック ブルーレイ+DVDセット【Blu-ray】 (JUGEMレビュー »)
原作が美少女PCゲーながら、天然ロボのウザさにも理由があり違和感なく引き込まれました。
荒廃した現在(遠未来)と既視感を覚える過去(近未来)の断絶と実利主義にならざるを得ない世知辛さから、叶わない夢に希望を見るほろ苦さは思いがけなく深く沁みました。
紹介記事【2020.01.25】
外国人ヒットマン [ 一橋 文哉 ]
外国人ヒットマン [ 一橋 文哉 ] (JUGEMレビュー »)
なんか国内の犯罪絡みって引いちゃうんですが、未だ未解決の様々な凶悪事件とアジア裏社会の巧妙さに何故か興味が湧きまして。
来日した足でサクッと済ませて即帰国という日帰り殺人旅行、偽造パスポートだから追跡調査も難しいし近隣諸国とは犯人引き渡し条約を締結してない点が利用されてる節もあり震撼モノ。
紹介記事【2020.03.29】
【中古】 妖精のネジ(文庫版) ソノラマC文庫/奈知未佐子(著者) 【中古】afb
【中古】 妖精のネジ(文庫版) ソノラマC文庫/奈知未佐子(著者) 【中古】afb (JUGEMレビュー »)
25本のショートファンタジーを収録、心がキュッとしてほぐれます。
最初は地味な印象でしたが、デッサン力の高いデフォルメと時代に左右されない画風は只者じゃないですな。
僅かな紙数で過不足なく見せるクオリティでサラリと読ませる、甘く切ないストーリーの巧みさも見事。
紹介記事【2020.04.06】
ブレイク・ビーターズ [ ゴードン・ケメラー ]
ブレイク・ビーターズ [ ゴードン・ケメラー ] (JUGEMレビュー »)
旧東独、といっても今じゃ通じなさそうですが…80年代の社会主義国でヒップホップに目覚めちゃった若者と、彼らの活動を体制翼賛に取り込もうとする当局との丁々発止を描く青春コメディ。
飼い慣らそうとする権力側と調子を合わせつつ苦悩する主人公たち、ベルリンの壁が崩壊して彼らを待ち受けるラストのほろ苦さとタフさに男泣きです。
自分でいる事を描いている点で、英国のサルサ映画「カムバック!」と併せてオススメ。
紹介記事【2019.11.02】
ポルノ☆スターへの道 [ ニック・スウォードソン ]
ポルノ☆スターへの道 [ ニック・スウォードソン ] (JUGEMレビュー »)
ラジー賞を独占した下ネタ満載ムービー、とりあえず下品ですけど線引きはキッチリしてますね…笑わせる内容は、少なくとも男性なら他人事じゃないというか。
女性同士の巨乳幻想みたいなね、目の付け処が上手いなぁと。
まぁ万人向けではないにせよ、僕は感心しつつ大笑いしました。
紹介記事【2019.10.17】
あきれたあきれた大作戦 [ ピーター・フォーク ]
あきれたあきれた大作戦 [ ピーター・フォーク ] (JUGEMレビュー »)
笑いって鮮度があると思ってました、本作を観るまでは。
先が読めずに引き込まれましたが、確かに繰り返し観たくなるかも…計算されたシナリオが効いた笑いと、映像的な古さもまた味わい深いです。
スタンダードでバカバカしくて無駄のない、意外な傑作。
紹介記事【2019.12.10】
月曜日の友達(1-2巻 全巻) 全巻セット
月曜日の友達(1-2巻 全巻) 全巻セット (JUGEMレビュー »)
中学生になったばかりの頃の、世界の拡がりに戸惑う姿は性別や世代を超えて響きますね。
作画力もストーリーテリングも卓越してます、些細な一瞬を捉える巧さが。
忘れていた何か、忘れたくなかった何か…最後のコマに、胸が苦しくなりました。
紹介記事【2019.11.11】
【中古】 山本耳かき店 ビッグCスペシャル/安倍夜郎(著者) 【中古】afb
【中古】 山本耳かき店 ビッグCスペシャル/安倍夜郎(著者) 【中古】afb (JUGEMレビュー »)
耳かき店ブームの火付け役、なんて書いては申し訳ないのですけども…決してブームに便乗した後追いではない、と。
穏やかな時間の流れる小さな町で、耳かき屋さんを訪れる客の脳内イメージが秀逸です。
こんな表現があったのか、こんな漫画があったのかと目からウロコ耳から(略)。
紹介記事【2019.12.23】
【中古】 マンガでわかる 戦後ニッポン /手塚治虫(著者),水木しげる(著者),つげ義春(著者),はるき悦巳(著者),ちばてつや(著者) 【中古】afb
【中古】 マンガでわかる 戦後ニッポン /手塚治虫(著者),水木しげる(著者),つげ義春(著者),はるき悦巳(著者),ちばてつや(著者) 【中古】afb (JUGEMレビュー »)
現代に至る国内の移ろいを漫画に語らせる好企画アンソロジーです。
漫画にしか出来ない表現は、例えば三輪自動車が走る風景でありリンチされる米軍の操縦士であり…基本的に主観視点であるが故の、俯瞰の効く文学表現よりも接地した仮想体験なのかも。
いわば漫画こそが伝え得た戦後の一片、切り口を変えて続けてもらいたいですね。
紹介記事【2019.12.12】
絵はがきにされた少年 [ 藤原章生 ]
絵はがきにされた少年 [ 藤原章生 ] (JUGEMレビュー »)
アフリカに対する先入観や固定観念が、ことごとく覆されます…偏見を持たないように心掛けていたつもりでも、日本にいて伝わってくる情報自体にバイアスが入っている訳ですが。
西欧支配の呪縛に歪められた各地の民族性や搾取の構造など、日本では見えにくい暗部が著者の目を通して見えてくるようで。
アフリカの話であり、同時に現代の実像でもあるのでは?と。
紹介記事【2019.09.1】

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最近読んだ本
河野典生、山下洋輔「インド即興旅行」

最近では日本国内にもパワー・スポット認定箇所が増えたりして、90年代のスピリチュアル・ブーム以降の聖地巡礼も幅と裾野が拡がったようですけれども…大体インドか中近東か中南米と、以前は人によって惹かれるエリアが分かれていたように思うんですよ。
(僕は中近東か中南米だな)と昔から思っていたし、インドは先ずないわ…と今も思うんですね、不思議と。
といっても単に行く気がしないだけで興味がない訳じゃないんです、むしろ周辺の中央アジア諸国にはスピリチュアル抜きで惹かれる位なんですけれどもね。
まぁ本書に惹かれた理由は、両著者×インドの意外性でした。

初版'83年の河出文庫、山下洋輔は今や説明不要の大御所ピアニストでも当時は頭突き肘打ちフリー・ジャズの奇才として知る人ぞ知る30歳そこそこの若手だった筈…河野は詩と小説を生業としながら民族楽器を収集し、既にインドも4回目の先駆的インド中毒者。
元から旧知の間柄でもあった二人が'78年2月11日から約10日間でインド各地を回り、その道程をライブで収めた対談旅行記が本書という訳で…河野が写真撮影・アレンジメントで山下は録音機操作・採譜と、各種取材を兼ねた大陸横断というユニークな一冊です。
40年近く前は、海外渡航って割と珍しかったのよ?

個人的な思い出では、河野のバリ島やジャズをモチーフにした小説も山下の演奏やエッセイも初めて触れたのが十代の半ばで…それ以降は逆に疎遠だった両者が、まさか知り合い同士だったとは知りませんでした。
しかも二人だけで旅行してたなんて、更にインドとは…河野は分からなくもないけど、山下が?っていう。
彼はボンベイでのジャズ・フェスに出演する予定が主催者側の予算不足でキャンセルされ、河野が小説の取材とインド本の撮影で行くからと山下を誘ったそう…そこにFM局の素材録音と本書の企画も便乗し、カメラにテレコにサウンド8ミリと重装備の珍道中に!笑

先ずは東端カルカッタ、早速ボーイとチップで交渉入門編…地元の村祭りで素のインドに触れ、バラナシ便ではラヴィ・シャンカール似のカメ男(ていうか本人だし!)に遭遇。
ガンジス川では山下が野グソしたり日本人の写真家(田村仁)や身玉山の団体さんにインタビューしたりして、表紙カバーの路地ライブも決行。
アグラではタージ・マハール&鳥類保護区を観光、大ドサ民族芸能ショーをジャズ目線で分析…楽器屋セッション(演奏+値切り交渉)に続いてホテルのドンバとムージャ、ところでやたらインド人をジャズメンなどに例えてるけど誰かカーティス・メイフィールドと言ってやってよ河野にも!笑

デリーに着くや老ボーイが太鼓を叩き、レストランのピアニストはアグラでジャムったピアノ兄弟…京都外大の探検部に正体を見破られ、帰国の便では渡辺貞夫が降りた席に山下が座り周囲のボンベイ・ジャズ・フェス帰りの関係者と歓談。
かんべむさしの巻末解説によれば「インド人の貿易商は華僑よりもえげつない」そうで、三島由紀夫も「人それぞれに行く時期が必ず自然に訪れる」というインド…現地で聞いた音楽を山下が譜面に起こすなど帰国後も手間隙かけて出版に至った“史上類のないライヴ・ブック”で僕は満足ですけどね、いや続編というかシリーズ化してほしかったな!

両著者の会話やインタビュー、移動中の実況は自分も同行したかのようなリアルさです…その合間に状況説明があり、旅の最中は不明だった事柄も補足されているので分かりやすいです。
山下の付き人を装う河野と河野を大作家に仕立てる山下の、インド用アドリブ交渉術は印象深いな…それと「部屋で一服」って、さりげなくキメてますね?笑
ちなみに身玉山一行の現地ガイドはチャダの実兄だそう、それとチャンドニ・チョウクってオールド・デリーの通りの名前だったのか…ゾロアスター教はパーシー教とも言うそうで、ペルシャ系の多いボンベイでは割と信徒がいるのだそう。
河野典生、山下洋輔「インド即興旅行」(←クリックで拡大表示されます)


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【最近読んだ本】グリンダル・シン・マン(著)、保坂俊司(訳)「シク教」| 2012.12.28
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以下、個人的メモ

“河野 (略)北部はサンスクリット語系のベンガル族、ヒンドゥ語だけど、南部はドラヴィダ語系のタミル語とかカナタカ語とか、ハイデラバードじゃ、イスラム教徒だけウルドゥ語使ってたりするけども、南部民族主義というのは、はっきりあるみたいだな。首都デリーのある北部よりは貧富の差が少ないしね。騎馬民族の流れこんだ北部とちがって、もともと農耕民族のせいか、ギスギスしていない。のんびりした金持ち旅行なら南部はいいみたいだぜ。”(p.15〜16)

“河野 だめなら、もともと。そういうところは多分にある。しかし、西洋人というのはそういうのには、きびしいよね。鬼のような顔をして、自分の決めた額をパッと払い後はそっぽをむいちゃったりする。だからそれに比べると、われわれ日本人は、彼らにとっては非常に親しみが持てる民族じゃないかな。(略)バカにしているかどうかは紙一重だな。向こうに押し切られちゃって、後でインド人というやつは……、なんていう連中が多いからね。しかし、まぁ、ああいうタイプの観光地型インド人というのも、本当にこすっからそうに見えるけれども、さんざん言い合った結果、ひとつの妥結を見ると、後はにこにこしている。そこが面白いところなんだ”(p.23〜24)

“河野 祭りだから、みんなきれいなサリーを着ているし、目の回りに黒いくま取りをしている。子供はみんな、あれをやってる。宗教的な理由もあるけど、あれはサングラスと同じだそうだ。
山下 (略)あの子が一分ぐらい微動だにしない。ピッと手の格好から顔つきから全部きまってるんですね。あれは仏陀の顔でしょうね、じっとカメラを見て笑っている、口の端を上に上げて……。
河野 あれは踊りの一つのパターンなんだ。喜びとか嫉妬とか、いろんな表情のパターンがある。”(p.43)

“山下 カーストと言えば、バラモン(ブラーマン)、クシャトリヤ、ヴァイシャそれにシュードラか。その四つが、さらに細分化されていると考えればいいのかな?
河野 ほんとうは、その四つはヴァルナというんだよね、司祭の階級、武士階級、商人というか庶民の階級――。農業牧畜はその庶民階級ヴァイシャに、ヒンドゥ法典じゃふくむとされてるんだけれど、じっさいは、その下のシュードラ(労働者・隷属民)にふくまれてるみたいだ。さらに、その四つからも外れた不可触民ハリジャン(神の子)があって、その五つがヴァルナ。じつはヴァルナっていうのは、元ポルトガル語で、色という意味なんだよ。つまり皮膚の色。(略)結局、身分とか階級とかの大きな枠組の意味で、ヴァルナが使われてるわけなんだけど、細かい血統とか家柄とかがカースト、またはジャーティというんだ。つまり「生まれ」なんだよね。ヴァルナとジャーティは重なり合っているから、結局、カースト制度と言えば、その両方を意味するわけだ。そのジャーティ、つまり生まれながらの家柄というのは二千いくつかあるらしい。”(p.51〜52)

“つまり分業というか職業の世襲制なんだよ。(略)まず衣類とか食器とか、刃物とか大量生産の工業製品が使われ、どんどん都会から流れ込んでくる。それで、銅の食器とか土の水がめを作る連中が職を奪われて行く。子供たちは転業せざるを得なくなって都会へ流れ出て行く。もうカーストは保護してくれない。保護する余裕のあるやつがいないわけだよね(略)年寄りは、いまさら転業出来ないから、食器とか手織りのサリーとか、村で細々と作っているわけだけれども、それは、もう、たとえば、われわれが見ると、すごい製品なんだよね。そいつに目をつけた町から来た商売人が、生活の苦しいのにつけこんで、めちゃくちゃに、たたいて買って行く。それで外人相手に、ものすごく高く売りつけたりしているらしい。(略)近代化が、カースト(の本来かくあるべき姿)をぶちこわし、モラルもぶちこわしてしまうと”(p.53〜54)

“山下 きのうの祭りで、とうとう最後にはたたき出されたとおっしゃっていたけれども、どういうことだったんですか。
田村 結局、やはりよくヒンドゥのお祭りへ行きますと、異教徒だということであるんですよ。(略)そうでなくても異教徒が入ってくること自体、ご利益がなくなると言った、あれがあるんじゃないかしら。
山下 やはり、浄、不浄の問題なんですね。異教徒が入ると穢れるという。
(略)
山下 きのうは、異教徒にも赤い粉をぶつけてましたよね。ぼくらもぶつけられて顔中まっ赤になっちゃって。あれはいいのかな。
田村 あれをつけられるということは、一つの歓迎のしるしでしょうね。たがいの幸運を祈り合うわけですから。
河野 ホーリー祭りだと赤い水ですね。
山下 しかし、カメラマンは、そういう奥深いところへ入っていくのが商売だから、最後のところじゃ対決があるだろうな。
河野 対決する写真と、何でもカメラを向けてみるという写真があるわけでしょう。前にプロの若い写真家と、インドからネパールを歩いたことがありましてね。こっちが素人の強みで、仕上がりなどは気にしないで、何でもレンズを向けていると、うらやましがられたことがあるんです。むろん冗談半分ですけどね。もう一度アマチュアに帰りたいと。(笑)”(p.100〜101)

“善意の人が常にどこか物悲しそうなのは、その行為に何らの邪心もふくまれず、祈りの延長線上にあるためか。”(p.104)

“山下 (略)いろいろな曲によって、適当に手を抜いて伴奏したりしている。ところが一瞬、本気になるときがあるんですよ。ミュージシャン同士がバッと顔を見合わせるか聞き合うかして、体が一緒にサッとゆれる瞬間が、けっこう何度もあるんです。ミュージシャン同士だけが知っている秘密の回路というのが、チラッと見えるような時が。(略)一種、底力というのはありましたね。連中はジプシーということはないですね。
河野 いや、あれはそうじゃない。デカン高原の方へ行くと焼畑農業なんかで山を移動している種族とか、ジプシーとインド人も呼んだりする少数民族がいてね。ものすごい銀の大きな重い耳飾り、首飾り、腕輪、いっぱいぶら下げていたりする。だいたいジプシーというのは、インドのカシミールあたりの種族がヨーロッパまで流れたやつなんだね。イラン、ハンガリー、フランスとたどってスペインまで行った。だからフラメンコ・ダンスとインド舞踊は非常に似たところがあるでしょう。”(p.134〜135)

“河野 日本で、観光地から車で一時間か一時間半のあたりに、こんな広い沼沢地があると、あっという間に埋め立てて、何か作っちまうぜ。何とかランドとか。”(p.139)

“河野 しかし、彼らみたいに近代的企業に勤めて、いわゆる西洋風の生活をする。安物でも腕時計をはめて、こちらのカメラとか時計を、ちょっと物悲しそうな眼で盗み見る。そういう連中がいて、一方、さっきのような農家の連中がいる。彼らは、ぜんぜん、そんな態度はとらないんだな。はるか昔から、まさに紀元前から同じ生活を、続けてるからな。布をぐるっと巻きつけたやつを身にまとってね。(略)民芸品を着た民芸品の人間が歩いておるということなんだな。
山下 どう考えても安物じゃないわけだ。(略)人間国宝が、もう雲霞のごとくいるというわけですな。(笑)実に貴重な……。確かにみんな、その道では一流という顔をしてますものね。牛飼いは牛飼いで一流だし……。”(p.142〜143)

“河野 つまり、カプセルに入って、常にサンクチュアリだけを渡り歩いている旅行者ですな。もっとも日本のあのハッピを着た人たち。あの人たちは、バスの中だろうがどこだろうが、自分たちのいる場所がサンクチュアリであるという、あれもまたすごい。(笑)”(p.143〜144)

“河野 死期が近付いた老人なんかで、もうガートの一角に横たわって、じっと待機していたりする場合があるよ。少量の食料が置かれていて、線香が立っていてね。(死期を待つ老人だけの宿もある)”(p.87)

“河野 ヒンドゥの思想では、一番典型的なというか完全な人間の生き方というのが、最初、青年期(梵行期)、これが子供の時代、それから家長期、これが結婚して家族を育てる時期、三番目が林棲期で隠遁生活、最後が修道期で、世を捨てて、祈りと瞑想ざんまいの暮しで生涯を終える。この四つをやれば完全だというんだよね。(略)しかし、じっさいはさ、そう理想的にはゆかないんだよな。青年期も、少ししかなくて家長期に入り、一生、働き続けなきゃならない。しかしさ、おれは何か、そういう連中はさ、同時に、生涯、修道期を送っているような気もするんだよな。日ごと夜ごと働きながら、瞑想し、祈ってる。あのオープン・エアー・トイレの人たちはさ。
山下 そうか。キリストも釈迦も、オープン・エアーで、しゃがんでいたにちがいない。(笑)
河野 山下もバラナシの砂の上でやった。(笑)”(p.146〜147)

“山下 タイミングが悪かったのかな。ついに、こちらが引き返して、十五ルピーで買う羽目になりましたがね。あれはミニクかったな。(笑)うーむ、まさに修行の場であり、人の道であり、あらゆることを計られる場ですね、あの売買というものは。
河野 相手の人格、風体、態度、すべてを鋭く観察しながら金額をはじき出す。あんたとおれとの対決ならば、あんたはこれだけ払うべきだ。これ以下じゃ来世はネズミだ。いや、ここで妥結しなきゃ、おまえコンドルだ。いや、おまえこそミミズだ。(略)武士の戦いにも似ている。闘い終って妥結すれば、あとくされはない。大勝負の後は反省会などやって、三日前の勝負はこうだったが、あの勝負はこうだったとか、いまごろ、親、子、孫、イトコ、大伯父その他、カバン・カースト一堂に会して戦いのソーカツをやってるんじゃないかな。(笑)”(p.160)

“河野 (略)拝火教徒がインドにもいて、ペルシャ系の多いボンベイあたりには(略)死んだらはこんで行く所があるのね。(マラバール丘にある『沈黙の塔』)それは鳥に食べてもらうわけ。(略)鳥と一緒に空に舞い上がって、天国に行くんだな、拝火教徒は。
山下 これは戒律はきびしいんですか。
河野 うーん、一般的な意味では、そうきびしくないみたいだな。(西欧化に対してもタブーは少ない)(略)彼女、イラニーというんだけど、(拝火教徒に多いペルシャ系の苗字だそうだ)(略)ゾロアスター、(パーシー教ともいう)の話を、さりげなく遠まわしに言ってたけど、彼女も鳥に食われるわけだね。死んだときには。(略)鳥葬場中央に井戸があって、その中に落されると(空気、水、土、火を汚さないよう分解されて後)地下水道からアラビア海まで流れるそうだ。(略)
山下 たしか、ネパールか、どっかにもあったんじゃないですか、鳥葬は。
河野 ああ、あれはラマ教だ。ラマ教は生まれ月とか死んだ年とか、色々コヨミみたいな一ラン表(原文ママ)があってね。それで調べて(略)全部葬式のしかたが違ってくるのね。川に流すのもあるし、火葬にするのもある、土葬にするのもある。その中に一つ鳥葬というのがある。ネパール奥地の一角、ヒマラヤの中腹あたりに住んでる連中だけど。(略)コヨミによるんで、ランクづけをしているというわけじゃないらしい。ただ、鳥葬が一番いい葬式らしい。死んだ時に、色々遺族からきいて、その僧侶がおもむろに絵入りのコヨミをひろげて、これで行なうと指さした葬式になるわけだね。”(p.177〜180)

“河野 (略)しかし、本当に生まれ変りみたいのが、いっぱいいるな。さっき、車のそばをとことこ歩いてた、イノシシみたいなブタだってね、やっぱりどっかで会った様な顔してたし。(略)朝いた犬も一緒に列に並んでたな。皆が真鍮の入れ物もって、並んでいるその間に自分も同じように並んで待っていたな。野良犬のくせにね。あれもやっぱり、昔の習慣で、つい並んでしまったんじゃないか。(略)記憶がどっかにのこっていて。(笑)くれるわけじゃないのに並んでるもんな。こぼれたのをなめに行くわけでもないしね。あの犬も、いかにも人間という顔をしてたな。”(p.181)

“河野 あの染料はすごくいい色だけど、同じ色のがあったかい。
山下 同じのかどうかよくわからないんですが、混ぜてあの色を出すらしいんですよ。だからオレンジと紫と茶色かな、その三種類を(略)パックを四分の一計り売りにしろと言って、持ってきた。それもほんのちょっとずつで、全部で七十いくら払った。うちでちょっとやってみたい。シャツ全部染めちゃったりして。(略)ええ。もうほんの一握りで色が出るんですって。だから白いのに薄く地に色がつくくらいのが欲しいんですよ。(山下はオリジナル・デザインのシャツ風演奏着を使う)演奏用のをいつも薄い茶色に染めてるんです。”(p.201)

“河野 それは売るという字を買うと書くんだ。やっぱり商買。くだらんゴロ合わせだな。(笑)しかし、商売の基本はやっぱり一対一の対決でなくちゃな。製品をつぎつぎ、転がして利ザヤをかせぐなんていうのは、本当に商売のモラルに反しますよ。それに定価がないというのは正しいことなんだ。大金持ちなら、一万円は鼻紙だろうけど、そこらの人はひと月暮せる。裸足の人なら一年以上だ。
(略)
山下 しかし、考えてみたら、われわれの商売だってそうですよ。もともと値段がないんだし、しかも、現地直送でしょう。自分が現地というか産地なんだから。
河野 それで場合によって、やけに値段が違うわけだなあ。
山下 違うんだなあ。友達に頼まれると安かったりなんかしてね。そして知らない人が急に尊大に買いに来るとものすごく高くなったりして。同じだな。イヤなら、イヤだって言えるわけだしね。それじゃできませんというと、向こうは、戸口まで帰りかけるわけだ。(笑)そうするとこっちはちょっとやってみようかななんて声かけて、すると向こうもおもむろに戸口から引き返して来て値段が決まる。(笑)”(p.201〜202)

“河野 しかし、あの雑踏の中でしばらく過していて感じていたけど、あの紀元前の人たち、(略)まさに次元の違う幻の世界のように、こっちには見える。当然、彼らの側からも、きっと幻のように、こっちが見えている。これは、もう間違いないことだな。
山下 まったく関心がないんですね。
河野 関心があれば、靴をはくとか、それくらいは、何か、やりはじめるにちがいないけど。(笑)
山下 火を発見して煉瓦を焼くことをおぼえて、「しめた」と、「これでいい」と。(笑)
(略)
山下 何でそういう話が出て来たか考えてみると、ホテルの窓の外が真の闇で、電気なんかないけど、人はちゃんと住んでいる。結局、人間の生活に、どうしても必要な文明は何だろうということだった。
河野 電気はいらないけれど。火は要るだろう。家を作るための煉瓦とか、銅とか鉄とかを作る技術は要る。
山下 それを、ことごとく発明発見した連中が「もう、これでいいのだ」と突然、思った。(略)以後二千年変らずですか。(笑)当然、いい顔をしているわけだ。昨日今日のヒッピーなんかじゃないもの。(略)で、森の中に住みついて、家を造る煉瓦を焼くために、森の樹を全部、切っちゃったんでしょう。それで砂漠になった。(略)それで燃す物がなくなったところへ、牛の糞が燃えるぞと大発見をやったわけですね。よし、これでいいと。それで二千年経ったわけだな。(笑)
河野 モヘンジョ・ダロからじゃ、約四千年だぜ。とにかく文明が早く発達しすぎたんだな。”(p.208〜211)

“山下 バクシーシって言えば、女乞食もついて来ましたね。
河野 ああ。「ノー・ママ。ノー・パパ」って悲しそうなメロディつきで、繰り返していた。
山下 しかし、もう立派なお婆さんで、ノー・ママ、ノー・パパは当たり前だし、ちっともかわいそうじゃないよ。(笑)
河野 結局、ヨチヨチ歩きの子供のときから、ずっと同じことを言って、やって来たせいじゃないかな?”(p.237)

“河野 エリントンが、はじめてイギリスに渡って演奏したときにさ、トランペットがワウワウなんかやるのを、コミックだと思ってお客が笑ったりするわけよ。それで、ちょっと、くさってるところへ、バッキンガム宮殿から使いが来て、プリンス・オヴ・ウェールズ、時の皇太子がさ、ぜひ宮殿でやってくれと言ってるというわけなんだ。皇太子は、すごいジャズ・ファンでね。即位してから、離婚歴のあるアメリカ人、シンプソン夫人と恋愛して、結局、王位を捨てたくらいだから、すごい、モダンな男だったんだな。
山下 ジャズ好きの末路は、だいたい、そういうことなんだ。(笑)
河野 結局、弟に王位を譲って、その娘が一番、いまのエリザベス女王なんだな。
山下 そうか。ひとりのジャズ狂いがいなけりゃ、いまの女王は存在しないわけだ。(笑)”(p.242)

“河野 ああ、あの向こうはオリジナル、オールド・デリーのさらに奥というか、ダウン・タウン。ここが、つまり昔のデリーでは銀座だから。
山下 ああ、そうか。ニュー・デリーはイギリスが造ったわけですからね。
河野 そうなんだ。あんな街は趣味に合わんというので、隣りに、どかんと、自分たちの好み街を造ったわけだ。”(p.253)

“河野 肩組んでたり手をにぎって歩いてたりするのが、よくいるよ。
山下 いいわけですかね、インドでは。別に禁じてないんでしょうかね。
河野 禁じてはいないようだな。ヒンドゥの神々というのは、両性具有のイメージがあってね。男になったり、女になったりする。カーストのせいで、なかなか適当な結婚相手がみつからず、ホモが多くなるという説を聞いたことがあるな。カーストの上の方へ行けば行くほど、そういう傾向が強いってね。
山下 そういえばトルコ人の話を聞いたことがある。そういう気になったとき女が近くにいなかったら、近くの友だちで間に合わせていいという習慣があるそうだ。(笑)”(p.257)

“インド人の宗教構成は、ヒンドゥ教八十三%、イスラム教十一%、キリスト教二・六%、シーク教一・八%、仏教〇・七%、ジャイナ教〇・五%なのだが、シークはイスラムに対抗する信徒皆兵制からはじまり、カーストはなく、牛を除く肉食を奨励しているので、軍人、スポーツ選手、運転手等に多く、ターバン姿=インド人のイメージを作った”(p.266)

“河野 まあ、非常に紳士的な相手で、紳士的に解決したわけだ。インドは文書の国だからな。少なくとも、こういうビジネスでは、われわれの旅行に関するものだけで、ガサッとすごくぶ厚いファイルを出して来たじゃない。
山下 全部ファイルして、タイプは全部コピーを取り、ヨーロッパ風のきちんとした契約なんですね。
河野 それが郵便事情ひとつでガタガタになるところが面白い。(笑)ちょっと、ちがった話になるけど、ファイルとか証拠を、とにかく出せというのは、日本を離れると、どこでも、そうだね。作家だというと、いま、本を持っておるか、と言われたことがあるよ。やや疑わしげに南インドで。(笑)こっちは、とても作家という風体じゃないから、ま、銀座なんかの知らない店でも、同じ目には合いますがね。(笑)まあ、ぼくらは、外国での仕事は、あまりないけど、ミュージシャンなんかは、みんなそうでしょう。いままでの仕事についての批評とか、プログラムとか新聞記事とか何もかもファイルしたやつを持ち歩くでしょう。
山下 そうです。普通マネージャーとかエイジェントがそれをきちんとやるわけですね。”(p.275)

“山下 (略)日本のピアニストがアショカ・ホテルへ二十三日来ますという。名前を聞いたらウーンと考えているので、サダオ・ワタナベかと言ったら、そうだそうだワタナベだと。ワタナベならサックスだろ、彼なら友だちだといった。彼が、その晩行くというので、何か、メッセージを残して行こうと思って、サダオさんへと書いたんだけど、後が続かない。一足お先にとかいろいろ書こうと思ったけれども、結局、気のきいたことが思い浮かばずハローと言ってくれと言っておいた。
河野 ちょうど一足違いなんだな。
山下 サダオさんもいろいろと現地の人間とのセッションをやるといいな。おそらくやっていると思うけど。ジャズ畑ばっかりじゃなくて、楽器屋とか、笛吹きなんかとね。もっとも、あの人はアフリカの村へ一人で入って行って吹いちゃった人だから、おそらくどこへ行ったってやるだろうな。
河野 インドの西と北であっちこっち、同時に荒しまわってるんじゃないか。(笑)”(p.281)

“河野 籐製品もすごいね。ああいう細かい細工を、紀元前の人たちがつくるんだものな。一方、工場で安っぽいプラスチックつくってる連中が、ネクタイ締めてズボンはいて歩いているわけだよ。きょうのサロッド奏者も、革を胴に張った、じつに不可思議な楽器であんなすごい音を出す。
山下 特に太鼓に関しては、ものすごくデリケートに発達してますね。感性が。太鼓をたたくあの手つきと言ったら、もうあらゆるところを使うでしょう。こぶしも使うし、掌のはじを使うし、掌全体を使うし、指を使うし、それからこすりますしね。(略)色々な楽器を手でこするというのが現代音楽的な発想にありますが、よく考えてみたら当たり前なんだよ。紀元前からそれはもう、みんなやっていたわけだ。ただ音楽をあっち(西洋音楽)からばっかり見ていたものだから……。
河野 ピアノに手を突っ込んで弦は弾っぱる(原文ママ)とか、現代音楽の連中が発見したと思っている。”(p.304)

“9PM過ぎフライト。山下、近くの連中にジャズ祭りの様子を聞く。ワタナベ・グループは大拍手だったが、西ドイツの前衛ジャズ・ピアニスト、シュリッペンバッハが、指で直接、弦を弾くと、失笑がひろがったという。「うーん、やっぱり行かなくてよかったようだな」と山下は笑う。”(p.328)

“主人が、カーストに、こだわらなくても、使用人がヒンドゥなら同じことなのだ。(中流の上ぐらいの家庭でも、労働階級に属する運転手、コック兼給仕人、子守り、洗濯人、庭師、門番そしてハリジャンに属する掃除人、さらに便所用スイーパーに平等に職を与えなければならない)”(p.320)

“山下 クリスチャンが金持ちでなければならんということはないけれども、ここにいる人たちは、みんな金持ちですね。昔の大名がクリスチャンになったのと同じようなケースなんじゃないですか。
河野 プロテスタントには、そういう傾向があるかも知れないな。南の方に多いカトリックは、農民なんか非常に多くて、日本の隠れキリシタンじゃないけれども、一世紀にシリアから入ったギリシャ正教系も強い(調べてみるとむしろ優勢)。カトリックは、イギリス以前、ポルトガルとかフランスの宣教師に布教されたやつだよね。クリスチャンになった方がカーストから解放されるということもある。ま、完全な解放は無理だけど。南インドにマリアの像が至るところに飾ってあるタイル工場があって、社長もクリスチャン、働いている連中もクリスチャンが多いと言っていたな。あれはケララ州。いまは共産州だけれど。そのことと関連があるのか、どうか。
山下 あそこに一段と黒い連中がいるけれども、一見、みすぼらしい。あれもやっぱりクリスチャンなのかな。
河野 会場の飾りつけやった連中じゃないかな。ディスプレイ屋だ。つまり、昔の筒井康隆だよ。
山下 こんな所に出るとは!(笑)筒井さんは彼らを使ってたわけでしょう。職人との間に立って苦労したというのは読んだ。”(p.321)
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    | books | 2017.02.23 Thursday | comments(0) | - |













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