最近読んだ本
ニック・ホーンビィ(著)、森田義信(訳)「ハイ・フィデリティ」
要するにハイファイですよね、とか分かったように言ってみたけど…直訳したら高い忠実性?いやいや普通に音楽用語の再現性でしょ、それとも恋愛の先の事?
しかし秀逸なデザインの表紙カバーです、男女の横顔を近付けまくって耳と耳でハートの形って…女性弁護士との別れ話が進行中なアラサー+ダメンズ(死語)中古レコード店主という、シット・コムっぽい音楽×恋愛物語そのまんまですが。
初版'99年の新潮文庫で原書の発表は'95年、ただし僕より年上な著者が作中で挙げるミュージシャンや曲名は60〜90's前半までと幅広く…古いネタは特に、結構マニアックな気が。
まぁ映画やドラマや玩具なども全般的にネタが6〜70年代メインで、多少なりとも分かれば会話の可笑しみが味わえるでしょう…分からなくても巻末の「ほとんど注解に終始する訳者あとがき」が丁寧にフォローしてくれますし、むしろ訳者の注解コメントで笑っちゃったりも度々しました。
訳者に恵まれましたね本書、本文に突っ込める訳者の音楽的な理解力があればこそですよ…とはいえ本書も含めた著者3作すべて映画化予定らしく、中でも「About a Boy」は既に劇場公開されたのではないかと。
勝手ながら、著者近影からの連想でビリー・クリスタルを配役しちゃいますが。
訳出の上手さは、例えば音楽マニア同士の会話“「すごいじゃないか」彼が何を言っているのか、クソほどもわからない”の一文で伝わるでしょう…そしてレコード中毒者を描写した“彼らは、それまでぱたぱたとレコードを見ていた棚に飽きてしまうと、まったくちがうセクションへすたすた歩いていき、迷いもせずに一枚のレコードをとりだしてカウンターまで持ってくる(中略)そして彼らは突然、欲しくもないものを探して途方もない時間を使ってしまったことに暗澹とする”なんて、著者自身も相当なアレだと伝わる筈です。
音楽的EDな主人公を描くのに、最適なコンビかと。
音楽的EDとは何ぞや?
それは“ハリウッドへ行く前のシーナ・イーストンのよう”だったローラが、DJだった頃のロブにリクエストしたソロモン・バークの「Got to get you off my mind」ですな…なんとそれは“ターンテーブルに乗せると、とたんにフロアから人がいなくなってしまう”曲で、途中でロブがマドンナの「Holiday」をかけたのは“ホメオパシーを信じている人が、それを否定しながらもたまに通常の薬をつかわなければならないのとおなじ”理由からで。
実際、ソウル界の黒松沙士というか…一聴して吹きましたが、クロージング・ナンバーはこの曲なのです。
待て待て、僕は何を書いてるんだ?…まぁいいさ、どうせまた読み返す筈だし。
そうそう、本書の舞台はロンドンなのです…“インドで茶摘み男になってやる”とは、如何にもイギリス流ジョークなのでしょう。
その英国スタイルに関する“エサに食いついちゃ……ああ、くそったれ”の件は、並行して読んでいる「エンデュミオンと叡智の書」にて改めて記すとして。
“「下手の考え休むに似たり」って言うでしょ”“あなたは昔とまったくおなじ人よ。靴下だって、何年もたてばあなたより変わるわ”とか、いちいち刺さるよローラ…そっかぁ、僕って結構ロブに近いんだな。笑
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関連記事:
【最近読んだ本】ピーター・バラカン/山本駿介「ラヴソング -a kiss is just a kiss-」| 2009.07.23
【最近読んだ本】ドリ・ハダー「ミンガリング・マイクの妄想レコードの世界」| 2012.12.22
【最近聴いたCD】BEN FOLDS/NICK HORNBY「LONELY AVENUE」| 2019.06.27
以下、個人的メモ
要するにハイファイですよね、とか分かったように言ってみたけど…直訳したら高い忠実性?いやいや普通に音楽用語の再現性でしょ、それとも恋愛の先の事?
しかし秀逸なデザインの表紙カバーです、男女の横顔を近付けまくって耳と耳でハートの形って…女性弁護士との別れ話が進行中なアラサー+ダメンズ(死語)中古レコード店主という、シット・コムっぽい音楽×恋愛物語そのまんまですが。
初版'99年の新潮文庫で原書の発表は'95年、ただし僕より年上な著者が作中で挙げるミュージシャンや曲名は60〜90's前半までと幅広く…古いネタは特に、結構マニアックな気が。
まぁ映画やドラマや玩具なども全般的にネタが6〜70年代メインで、多少なりとも分かれば会話の可笑しみが味わえるでしょう…分からなくても巻末の「ほとんど注解に終始する訳者あとがき」が丁寧にフォローしてくれますし、むしろ訳者の注解コメントで笑っちゃったりも度々しました。
訳者に恵まれましたね本書、本文に突っ込める訳者の音楽的な理解力があればこそですよ…とはいえ本書も含めた著者3作すべて映画化予定らしく、中でも「About a Boy」は既に劇場公開されたのではないかと。
勝手ながら、著者近影からの連想でビリー・クリスタルを配役しちゃいますが。
訳出の上手さは、例えば音楽マニア同士の会話“「すごいじゃないか」彼が何を言っているのか、クソほどもわからない”の一文で伝わるでしょう…そしてレコード中毒者を描写した“彼らは、それまでぱたぱたとレコードを見ていた棚に飽きてしまうと、まったくちがうセクションへすたすた歩いていき、迷いもせずに一枚のレコードをとりだしてカウンターまで持ってくる(中略)そして彼らは突然、欲しくもないものを探して途方もない時間を使ってしまったことに暗澹とする”なんて、著者自身も相当なアレだと伝わる筈です。
音楽的EDな主人公を描くのに、最適なコンビかと。
音楽的EDとは何ぞや?
それは“ハリウッドへ行く前のシーナ・イーストンのよう”だったローラが、DJだった頃のロブにリクエストしたソロモン・バークの「Got to get you off my mind」ですな…なんとそれは“ターンテーブルに乗せると、とたんにフロアから人がいなくなってしまう”曲で、途中でロブがマドンナの「Holiday」をかけたのは“ホメオパシーを信じている人が、それを否定しながらもたまに通常の薬をつかわなければならないのとおなじ”理由からで。
実際、ソウル界の黒松沙士というか…一聴して吹きましたが、クロージング・ナンバーはこの曲なのです。
待て待て、僕は何を書いてるんだ?…まぁいいさ、どうせまた読み返す筈だし。
そうそう、本書の舞台はロンドンなのです…“インドで茶摘み男になってやる”とは、如何にもイギリス流ジョークなのでしょう。
その英国スタイルに関する“エサに食いついちゃ……ああ、くそったれ”の件は、並行して読んでいる「エンデュミオンと叡智の書」にて改めて記すとして。
“「下手の考え休むに似たり」って言うでしょ”“あなたは昔とまったくおなじ人よ。靴下だって、何年もたてばあなたより変わるわ”とか、いちいち刺さるよローラ…そっかぁ、僕って結構ロブに近いんだな。笑
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以下、個人的メモ
“音楽の趣味はとびきりいいけれど、本など一冊も読まない男は多いし、本は読むけれどデブな男も多い。フェミニズムに共感していても、みっともない髭を生やしている男は多いし、ウディ・アレンのユーモア・センスを持ちながら、見かけまでウディ・アレンにそっくりな男も多い(中略)ぼくが女性にもてないわけではないのは、魅力的だからではなく、そういった欠点がないからだ”(p.44)
“あんなやつ、ひどく言わなきゃどう言えばいいっていうんだ? ヘアスタイルはレオ・セイヤーみたいだし”(p.218)
“部屋に入ると、ぼくはいきなりパニックを起こす。ベッドのうえのコートは高価なものばかりだ。一瞬、ポケット荒らしをしてこのまま逃げようかという考えが頭をよぎる”(p.260)
“死んだ人間を知っている人々は、バーブラ・ストライザンドが歌おうとして結局歌わなかったように、世界でもっとも幸せな人々だ”(p.319)
“ダスティ・スプリングフィールドの〈愛のかたち〉? そんなものは忘れてしまえ。エキソティックな下着とおなじ神話でしかない”(p.369)
“メディアによって作られた女のイメージを糾弾するとき、女たちはかんちがいをしている。男は別に、女がみなバルドーの胸を持ち、ジェイミー・リー・カーティスの首を持ち、フェリシティ・ケンダルのお尻を持っていると思っているわけではない(中略)大切なのは、どこまで品性を捨ててくれるかだ。ボンド・ガールとつきあえるような男ではないことは、ぼくらにもすぐにわかった。けれど、アースラ・アンドレスがショーン・コネリーを見たような目でぼくらを見てくれる女性も、ドリス・デイがロック・ハドソンを見たような目で見てくれる女性さえもいないということに気づくのは、あまりにおそすぎた。ぼくらのほとんどがそうだった。ぼくの場合、まだ気づいてさえいないのかもしれない”(p.369)
“イントロの数小節を聞くと、ローラがくるりとふりむいて笑い、親指を立てて何度か手をふってくれる。そのときぼくは、頭のなかで、彼女のためのオムニバス・テープの曲順を考えはじめる”(p.433)
“※39 ハリウッドへ行く前のシーナ・イーストンは、八〇年代初期にデビューしたイギリスのポップス・シンガー。その後アメリカへ進出し、007映画の主題歌も歌った。「ハリウッドへ行く前」というのは、それ以前のことだろう。ロブは「シーナ・イーストンのようなかわいらしさを持った」と肯定的に描いているけれど、音楽的には、これまで述べられてきたロブの趣味からは外れていると思う。やはり見た目も大切ということか”(以下「ほとんど注解に終始する訳者あとがき」p.444)
“※62 彼らに嫌われているトップ・ファイブ・アーティストに共通しているのは、デビュー当時はかなり尖った音づくりをしていたのに、シングルを大ヒットさせてしまい、その後商業主義に流されたレコードを作ってしまったということだろうか。マイケル・ボルトンだって、昔は結構シブくてカッコいいロックをやっていたことがあった。U2はアイリッシュ・パンクの星だったし、ジェネシスは高度な演奏能力と表現力を持ったプログレッシヴ・ロックの雄だった(少なくとも、リーダー兼ボーカルのピーター・ゲイブリエルがいたころまでは)。蛇足ながら、そのすぐあとのビートルズ・ジョークは、たいへんブラックですが、訳者は好きです”(p.448)
“※64 ロバート・ジマーマンは、ボブ・ディランの本名”(p.449)
“※76 スエードもオーテュアーズもセント・エティエンヌも、インディーズから出発してビッグ・ネームになった九〇年代イギリスのバンド。つまりロブは、若いバンドを見る目がなかったと言ってバリーを笑っているわけだ”(p.452)
“※81 ビリー・クリスタルはNBCの「サタデイ・ナイト・ライブ」出身の俳優。『恋人たちの予感』の主演男優。愛する人との距離をうまくとれずにいる現代の男性を好演した。共演はメグ・ライアン”(p.453)
“※93 ダスティ・スプリングフィールドは、六〇年代に活躍したイギリスの女性ポップス・シンガー。〈愛のかたち〉は彼女の六七年のヒット(中略)邦題は〈恋のおもかげ〉だが、前後のつながりを考え、ここでは〈ザ・ルック・オブ・ラブ〉というオリジナル・タイトルに近い〈愛のかたち〉にさせてもらいました”(p.456)
“※94 バルドーは、もちろんブリジット・バルドー。彼女の胸はたしかに。ジェイミー・リー・カーティスは前出の『ワンダとダイヤと優しい奴ら』や『トゥルー・ライズ』などにも主演していた女優。彼女の首はたしかに。フェリシティ・ケンダルは、七〇年代イギリスのテレビドラマ「ザ・グッド・ライフ」に出演していた女優(中略)アースラ・アンドレスは、007シリーズ第一作『ドクター・ノオ』に出ていたボンド・ガール第一号。もちろんショーン・コネリーが主演。また、ドリス・デイとロック・ハドソンが共演したのは、六一年の『恋人よ帰れ』”(p.456)
| books | 2019.06.23 Sunday | comments(0) | - |