素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店 [DVD]
素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店 [DVD] (JUGEMレビュー »)

人生に飽きた大富豪が終活代理店で運命の女性と出会う、という微妙に古臭いプロットに敢えて挑んだ'15年のベルギーと他国の合作映画。
2人が波打ち際で踊るエンドロールに「その男ゾルバ」を連想しましたが、内容は奇想天外なライト・コメディです。
エロもグロも観せずに全年齢での観賞に耐え得る映画です、ヨーロッパ映画らしい上品な笑いで無難にオススメです。笑
紹介記事【2018.07.04】
酔拳 (ドランク・モンキー) [DVD]
酔拳 (ドランク・モンキー) [DVD] (JUGEMレビュー »)

僕にとって(ジャッキー・チェンといえば!)の1本です、「蛇拳」などと同時代ながら、仇討ちなしの明るいストーリー。
しかも赤鼻爺さんユエン・シャオティエンにお調子者ディーン・セキ、凄腕の悪党にウォン・チェン・リーと役者も好いし。
“手は戸を探り 足は戸を破る”とか漢詩っぽく意味あり気だけど訳が分からないフレーズが個人的にツボりました。笑
紹介記事【2018.10.27】
リュミエール! [DVD]
リュミエール! [DVD] (JUGEMレビュー »)

リュミエール協会は1896年より世界各地にスタッフを派遣して最初期の短編動画シネマトグラフを撮影しており、その1割にも充たない108作品を選りすぐって編集した貴重な記録映像集です。
日本語ナレーションは立川志らくによる噺家口調、弁士がわりに的な発案でしょうが好き好きでしょうな。
基本的な映画の手法が早くも完成されていた事に驚かされ、優れた情報媒体であり大衆娯楽でもある動画の偉大さを実感。
現代では一個人の投稿動画が社会を変革し得るまでになった、双方向的な映像の未来を考えてみたりも。
紹介記事【2018.08.11】
光速シスター
光速シスター (JUGEMレビュー »)
星里もちる
好きが高じて往年のドラマ専門チャンネルに勤務する主人公、いわゆる聖地巡礼から帰ると妹が!?
某掲示板のオカルトスレ先取りですか、まぁ連載当時は聖地巡礼なんて言い方もしなかったけれど。
妹の正体は宇宙人、姿を偽装+主人公の記憶を書き換えて居候って!
昔のドラマや特撮へのオマージュを盛り込んだ、作者の趣味全開っぷりと間の取り方が絶妙に可笑しいです。
そして最後は作者に泣かされました、好い意味で。
紹介記事【2018.07.26】
李白の月
李白の月 (JUGEMレビュー »)
南 伸坊
本書から教わった志怪の妙味は、怪談に惹かれる僕の指向を明瞭にしてくれました。
恐怖や怨念じゃないしホラーでもない、不思議の一言では片付かないポッカリとした空白を独特の文体で説明してくれるのですが。
明治大正期の文豪が、かつて日本文学のフォーマットに合わせようとして整理しちゃった翻訳にはない妙味が味わえる筈。
紹介記事【2018.08.04】【2013.07.01】
月光浴音楽
月光浴音楽 (JUGEMレビュー »)
ナカダサトル with FIELD ORCHESTRA
虫の音とか波の音なんかが7トラック、1時間ちょっと続いてる自然音だけのCDです。
本作のポイントは、途中で聴こえるディジュリドゥみたいな謎の低音ですね……聴いてる分に害はないのですが、その場にいるような臨場感に(何の音なんだろう)と聴き入ってる内に爆睡。笑
紹介記事【2018.11.16】【2010.10.20】
遥かな町へ [DVD]
遥かな町へ [DVD] (JUGEMレビュー »)

谷口ジローの同名漫画を実写映画化、だけど何故だかベルギー/フランス/ドイツの合作映画…そして何故かDVD制作は鳥取市?
舞台はフランスの田舎町、帰省した初老のバンドデシネ作家が14歳の運命的な時へとタイムスリップ。
体は少年、心はオッサンて「リライフ」もビックリの振り幅だな!
だけども胸が切なくなるのは、どんな大人の心にも子供だった頃の傷が残っているからなのでしょう。
紹介記事【2018.07.03】
アデライン、100年目の恋 [DVD]
アデライン、100年目の恋 [DVD] (JUGEMレビュー »)

しばらく個人的にハマっている不老不死者というテーマを扱った、麗しきブレイク・ライブリー主演作です。
彼女のコンサバティブなファッションと姿勢の美しさは「隣のヒットマン」のナターシャ・ヘンストリッジを思わせ、チャーミングな表情は深キョン超え!
しかし常人と違うが故に慎重な彼女が恋に落ちたのは、若くて金持ちで慈善家でイケメンで知的でナンパも上手いという胡散臭い程の好青年で……いや、僻みは言うまい。笑
庶民的じゃないラブストーリーが嫌いでなければ、彼女の美しさだけでも。
紹介記事【2018.01.20】
【メーカー特典あり】ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE(オリジナルステッカー付) [DVD]
【メーカー特典あり】ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE(オリジナルステッカー付) [DVD] (JUGEMレビュー »)

台湾のローカル・バスって、高速バスの立派さとは違う魅力があります。
内容はTV番組と一緒です、なので海外とはいえグルメ情報も観光もないのです。
気楽な旅に見せながら、悪天候のアクシデントには同行スタッフの苦労がしのばれます。
個人的にはイイ感じに年増チックなマドンナ、三船美佳にグッときました。笑
紹介記事【2018.10.10】
トウェイン完訳コレクション  アーサー王宮廷のヤンキー (角川文庫)
トウェイン完訳コレクション アーサー王宮廷のヤンキー (角川文庫) (JUGEMレビュー »)
マーク・トウェイン
中学の時に挫折した、文庫本の分厚さと読み辛さも今なら平気!笑
19世紀末のコネチカット・ヤンキーが何故か6世紀のイギリスで大活躍、つまり「読者の現代>130年前の現代>回想の中の現代」と、著者も予期しなかった入れ子構造なのがまた面白いです。
ちなみに、著者と同い年の有名人は“篤姫、小松帯刀、坂本龍馬、福澤諭吉、松平容保、土方歳三”だそう。
トマス・マロリーの古典文学「アーサー王の死」を読んでいる方なら、もっと面白いのでしょう。
「賢者の孫」のネタ元でしょうか、しかし著者の時代を先取した批評精神に脱帽です。
紹介記事【2018.09.28】
ダウンサイズ [DVD]
ダウンサイズ [DVD] (JUGEMレビュー »)

常々「あらゆる地球的問題の根源は過密状態にある」と思っている僕にとっては、興味深い内容でした。
“1950年代、既に研究所は我ら人類にとって最大の脅威は人口の増加にあると確信しておりました…今日我々が直面している災厄、異常気象に食糧危機、更に水質汚染といった危機を予測していたのです”
手のひらサイズになると、1ドルが千ドルの価値に……しかし所詮は実社会の庇護がなければ維持出来ない縮小ライフ、どこか戦前の移民政策や戦後の社会主義国を理想郷と煽った側のニオイも。
法整備が追い付かない状況を好機と見た連中の憎めなさ、悲劇の象徴にされてウンザリなヒロインなどコメディ調ながら重層的な好い物語でした。
込み入ったストーリーを整理した構成力とテンポよい演出、映像美も見事です。
紹介記事【2018.09.23】
グローイング・アップ5 ベイビー・ラブ [DVD]
グローイング・アップ5 ベイビー・ラブ [DVD] (JUGEMレビュー »)

イスラエル版「アメリカン・グラフィティ」、基本は失恋映画で今回はモテ男ボビーの妹がヘタレ主人公ベンジーの恋人に!
安っぽいファッションやショボいレースなど庶民的で微笑ましく、戦後のアメリカが世界に及ぼした影響力が伺えたりも。
チャリポツ野郎ヒューイのジュース「ブフォ!」、はとこのケダモノ娘フリーダ怪演ぶりは見どころ。
DVD自体のちゃちな仕様は謎です。笑
紹介記事【2018.11.22】
FOR YOU (フォー・ユー)
FOR YOU (フォー・ユー) (JUGEMレビュー »)
山下達郎,山下達郎,ALAN O’DAY,吉田美奈子
ファンからすれば(他のアルバムどんだけ知ってんの?)と突っ込まれそうですけど、本作しか知らないんです僕。
でもこれが彼の最高傑作でしょう、収録された楽曲のバランスも鈴木英人のジャケもね。
スライ風ファンク「Hey reporter!」が入ってる統一性のなさが上手く引っ掛かる構成、ただファン向けのボーナストラックが浮いちゃってるんだよなぁ!。
紹介記事【2018.10.13】
レベルE全3巻 完結セット (ジャンプ・コミックス)
レベルE全3巻 完結セット (ジャンプ・コミックス) (JUGEMレビュー »)
冨樫 義博
本作は多分、僕みたいに(作者の名前は見聞きするけどナンボのモンじゃい?)位に思ってる人が読むに相応しい気がします。
鴨川つばめ江口寿史に池上遼一タッチの劇画顔と、分かれば尚更笑えるし有名なのも納得の画力です。
それと秀逸なのは筋の運び方と見せ方ね、ただ人間性は疑うけど!笑
紹介記事【2018.08.16】
スターフォース: 最強の軍団、誕生! (ハヤカワ文庫SF)
スターフォース: 最強の軍団、誕生! (ハヤカワ文庫SF) (JUGEMレビュー »)
B.V. ラーソン
電子書籍として発表されたアメリカ版なろうSF小説、子持ちの大学教授がベタな地球侵略に立ち上がるシリーズの第一作。
意外性あふれる教授の頭脳サバイバルに引き込まれます、ハリウッドが映画化しそうなレベル。
しかし8年経ってもハヤカワ文庫から続きが出ないので、ちょっとオススメしづらいです。笑
紹介記事【2018.08.29】
スターオーシャン3 Till the End of Time
スターオーシャン3 Till the End of Time (JUGEMレビュー »)

ディレクターズ・カット版が出てるようなので、そちらをオススメします。
僕も終盤でメニュー画面を開こうとしてブラックアウトや異音と共に「ディスクからデータを読み込み中です」と表示されたままフリーズでプレイ断念中です。笑
リアルタイム・バトルの忙しさは好みの問題として、城下町などの雰囲気が最高!
中世レベルの惑星に来た主人公がハイテク宇宙人側、という立ち位置はユニークで楽しめました。
紹介記事【2018.07.25】
ドゥービー天国
ドゥービー天国 (JUGEMレビュー »)
ドゥービー・ブラザーズ
若い頃は避けてたドゥービー、ですが名曲「Black water」を収録した本作は通しで聴きたかったのです。
M・マクドナルドのAORカラーが強い後期とは異なる、ブルース+カントリーな旨味と寛いで演奏を楽しんでるバンド感が魅力かと。
70年代ウェストコースト・サウンドを象徴するエッセンス満載で、個人的にはアコースティックの低音が心地好かったな。
紹介記事【2018.09.26】
シチズンフォー スノーデンの暴露 [DVD]
シチズンフォー スノーデンの暴露 [DVD] (JUGEMレビュー »)

国家に逆らえばどうなるか、国家は国民に何を隠しているのか?
かつて一躍時の人となったエドワード・スノーデン氏、時点でも無事に恋人と亡命生活を送れている事を祈ります。
本作の原題は「CITIZEN FOUR」で市民の敵(citizen's foe)ではありません、彼を見るとカナダの白人ラッパーSNOWを連想してしまいますが。笑
本作はドキュメンタリーなので、現場の緊迫した空気は本気(マジ)です。
紹介記事【2018.09.01】
K-PAX 光の旅人 [DVD]
K-PAX 光の旅人 [DVD] (JUGEMレビュー »)

自らを千光年も彼方の「琴座に近い“K−PAX”から来た異星人」という患者ケビン・スペイシーと、精神科医ジェフ・ブリッジスの物語として原作小説にアプローチしてます。
いわば両作が互いを補完しあう関係のようで、ミステリー仕立ての原作を分かりやすく観せてる気もします。
スピリチュアルな観点からも、普通のヒューマンドラマとしても充分に楽しめます。
紹介記事【2018.12.11】
心霊づきあい (MF文庫ダ・ヴィンチ)
心霊づきあい (MF文庫ダ・ヴィンチ) (JUGEMレビュー »)
加門七海
いわゆる心霊体験の豊富な著者が、著名人の“さまざまな「視える」人たち”と語らう企画から生まれた対談集。
巻末には漫画家の山本英夫による著者へのインタビューなど、単行本に追加要素を増やした文庫版です。
大御所的な松谷みよ子稲川淳二の他、TVプロヂューサーにタレントにレスラー議員や海外レポーターなどの“霊的なものへのスタンス”は興味深く読めました。
各インタビューを挟むように前書きと後書きがあって、会話の状況が伝わりやすくなってる構成も僕は好きです。
紹介記事【2018.10.15】
いくぜ!温泉卓球!!
いくぜ!温泉卓球!! (JUGEMレビュー »)

頑張りましたね彩京、ユニークなゲームソフトが出しづらくなったPS2で敢えてこれか!笑
まぁ定価で購入する方は今更いないと思うので、中古プライスなら甥っ子たちとの対戦ゲームに適当かと。
愛ちゃん(当時)が卓球するとは期待しないでください、つかCVも違うし。
この偽カータン、色違いってだけで版権とかクリア出来るの?
ステージ数もキャラも少なめですが操作性は良好で、一応キャラ毎の挙動に違いを持たせてる辺りも好感が。
紹介記事【2018.07.19】

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最近みたDVD
「スキャナー・ダークリー」

オーディオ・コメンタリーにて再視聴です、解説は脚本・監督のリチャード・リンクレイターキアヌ・リーブスに製作のトミー・パロッタ…そして特別ゲストに原作者P・K・ディックの娘アイサと“ディックの大ファン兼友人”J・リーセム(ジョナサン・レセム?)なる小説家も声の出演。
その小説家曰く、本作には“1つの場面に何重もの意味がある”のですね…故に制作者と出演者に加え、原作執筆時の状況やディック作品全般の考察を交えて語られる意義がある訳です。
映画として難解な印象はありませんでしたが、Amazonのレビューも投稿時期が早いコメントほど評価が割れていたのを思い出します。

監督は実写をアニメ化する手法を過去にも使っていて“映画を見る観客たちに疑問を抱かせたかった”んだそう…“これは現実なのか作り物なのか”、その問い掛けは確かにディック作品に通低する特徴なのかも。
ディック本人も特典のインタビューで言ってましたが、SFは子供向けと見なされてきたそうで…娘曰く、そうした評価は現在の“大人向けのアニメでもバカにされるのと似ている”と。
実写で撮っていたらCG表現は数年でチープに見えてくる、という監督の意見も単に俳優を観たかったレビュアーには関係ないのでしょうな…観るのは自由でも、そんな評価ってアリ?笑

スクランブル・スーツの表面には150万人の外見が反映されている、という設定は「個であり全でもある存在」を示唆しているのかな…あるいは着用者に一般市民の代表とか象徴といった意味合いを持たせてるのか、また劇中でこのスーツを着用しているのは2人の主要人物だけだったのも(台詞なしの通行人としてはいるけど)興味深いです。
捜査官は権力の象徴であり、権力には明確な外見がない…現実の社会には、RPGゲームのラスボスみたいに実体を持つ絶対的な権力者なんて存在しませんし。
キアヌが、自身の説教めいた場面で“中身は犯罪者だ”と言ってたのは印象的。

しかし原作者がFBIに開示請求した資料には、彼が送った手紙しかなかったとは…特典インタビューは鵜呑みに出来ないのね、幻覚や妄想ってマジ怖ですわ。
麻薬による全能感は、70年代以前からティモシー・リアリーらが語ってます。
物質Dについて「目的は現実からの逃避だったのに奴隷と化す、そういった一面は現在の資本主義や娯楽にもある」とキアヌ、更に“自由を求めるための手段が監獄に変わってしまう”とも…だからこそ権力側は支配の現状に適応しない市民にDを常用させたいのかもね、監督は症例ではなく“1回で即中毒”という設定を重要視したようですが。
(長くなったので、続きは下段で)


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ウィノナ・ライダーはスクランブル・スーツ着用時の演技を他の役者任せにせず“とても重要”と考えていたそう、演じ分けには苦労したようですしドナ役も辛かったとか…きっと彼女は「なりきり型」の俳優なんでしょうな、だけどティモシー・リアリーが名付け親という出自を知ると全力で演じたのも納得。
あと、ウィノナの裸体はアニメで描いたものだそう。
“政府は単に監視をするだけじゃない/スターリン時代のソ連のように/わざと反体制勢力を作り出したりする”のは“声高に政府を批判することで人々のストレスを発散させる”どころか、本当の反体制分子を手の内で転がす腹でしょう。

言われてみれば原作者の作品って、主人公が被害妄想的で孤立しやすいかも…僕が知ってるのは映画がほとんどだけど、大体が権力と陰謀が関係してるんだな。
何かとの戦いを叫ぶ者が権力を握り人心を操れる、その矛盾を指摘する人が先ず弾圧される…って、たまに語りが脱線して辛口世評になってるけど監視対象にされちゃいそう。笑
「未来世紀ブラジル」との共通点は医療従事者の描写も関係ありそうです、彼らが(自分を社会的にジャッジする他者)として描かれているせいかな…まぁ彼らの異常性はボブ/フレッドの心を追い込む役割だった訳ですが、医学的判断を下す相手に烙印を押されるってのは怖いわ!

確かに「未来世界では何でも新品」というのはSFあるあるですな、ただ原作はSFをと依頼されたディックが近未来設定で描いた私小説の趣きがあるようで。
本作は“麻薬撲滅キャンペーン”ではないし“対象を非難も美化もしていない”とはいえ、本作を原作者の体験に寄せて語るのも「ヤク中の自分語りかよ」と観る気を失くす人もいそう。
主人公ボブ/フレッドの自己監視状態は、執筆時に自分自身を見詰めていた原作者の姿とも重なります…劇中の彼が幻視する過去は、原作者が“離婚しクスリにおぼれる前の”平穏な家庭だったとはアイサの証言。
そう聞くと私小説だわな。

車の故障も現実のエピソードに由来するそうですが、劇中ではボブ/フレッドの狭くイカれた世界が猛スピードで社会から離脱してゆくメタファーとも受け取れますね…劇中でも(誰かの罠か?)と疑念が湧く演出は、観ている方も彼らの思考パターンに呑まれそう。
ウディ・ハレルソンが演じたラックスマンのモデルとなった人物も“最後の献辞の中にいる”そうで、更正施設ニュー・パスにもモデルがあったとは…ヘロイン中毒者の施設にわざわざヘロ中のフリして入所した原作者、実際に施設スタッフと接して“中毒者の存在を利用して金儲けしているだけだ”と中の実態を理解したのだとか。

麻薬絡みの逮捕者は“当時は20万人だった服役者数が今では200万人以上になっている”そうで“刑務所自体も次々と民営化が進んでる/貧しい地方自治体には貴重な収入源だ/雇用も増える”と、現在の「民営化されて政府の公共部門が企業の私有物となる資本主義的未来」も原作者の予言通り…身柄の安全を名目とした「形式上の逮捕」が意味するのは法的手続き不要の拘束と抑留、これも現実味が感じられて恐ろしい!
偽りの過去、偽りの業務…でも待てよ、記憶の改変は中毒症状じゃなかった筈だよね?
彼らは捜査官を名乗っていても、その雇用主は業務委託された私企業だったりしそう。

上司の“どんでん返し”以降は“映画版オリジナルの展開”だったと知って、意外というより微妙に納得。
ディックの小説は短編しか読んでないけど、映画化されるのも短編に多い気が
それ故にか、特に新旧「トータル・リコール」だけでなく原作は設定やストーリーの骨格に過ぎない使われ方が多い印象はあります。
この原作が長編だったかは知らないものの、短編だったら確かに“どんでん返し”でオチだったろうなと思えるので…となるとラスト10分で描かれる新たな“どんでん返し”オチは秀逸です、ドナ/オードリーと話してるのはニュー・パス本部の職員と同一人物か?

“この社会は過去の世代が苦労して築いたのに/今の我々はそれを知らない/恩恵をこうむっているのにね/先祖が流した血の上に”
この終わり方には希望があるけれども、その希望に繋がる人物は予め救いなどない「大義のスケープゴート」だったのね。
序盤で“登場人物は明らかに原作者の個人的な知人だ”と語っていたのは小説家でしょうか、アイサも“70年代に父が実際同居していた友人が――全身を虫に覆われる幻覚を抱いていた”と証言しています…“この小説だけは創作されたくなかった”という彼女に、監督は「実写ではなくアニメ」「遺族の意見も取り入れる」と約束をしたそうで。

ラストに流れる長い献辞も原作を尊重した証ですね、リストの中には彼女の母も入っていると聞いてしまうと一層切ないです…因みに画像付き献辞のルイス・マッケイは“俳優で テキサス大学の哲学教授でもあった”人物で、プロデューサーのパロッタが紹介したディック・ファンの1人として監督は知り合ったそう。
あとこれはムダ知識ですが、アメリカでも“オタク”って言って通じるのね!笑
今までに観た、ディック作品を原作と謳った映画の中では断トツの出来だと僕は思います…まぁ「ブレラン」は別格として、その他は特に人物描写が疎かになっちゃってた気がしますね。
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    | animation | 2019.08.02 Friday | comments(0) | trackbacks(0) |









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