最近読んだマンガ
近藤ようこ(漫画)、坂口安吾(原作)「夜長姫と耳男」
初版'17年の岩波現代文庫ですが、元は'08年の小学館「坂口安吾作品シリーズ」として出版されたとか。
そんなに最近だった事が意外に思えるのは、作者の絵柄が長らく安定しているせいなのか…文明開化以前の日本を舞台とした、時流を感じさせない物語のせい?
僕は原作者について名前しか知らないし、もっと堅苦しく込み入った話を書く文豪なんだろうと思ってましたよ…軽くページを捲って取っ付き易そうな気がして、まぁ実際にも一気に読んじゃったんですけどね。笑
のっけから(???)で、読んでる内に分かるのかと思ってたら一貫して分からないまま…なのに、面白い。
先ず最初に“そのヒメが生まれた時/夜長の長者は/一夜ごとに二握りの/黄金を百夜に/かけてしぼらせ/したたる露を/あつめて/産湯をつかわせた/という”って、黄金というのは何か植物の比喩か?と混乱させられ…次々と起こる突飛な出来事には耳男以上に翻弄され、あまりに唐突な幕切れに愕然としました。
一体これは何だったんだ?
だけど(訳分からん)と済ませられない、シュールな夢のようで不思議と風通しよく組み上げられているのです…それでいて寓話にしては反社会的な解釈になりかねず、もしや「至上の愛は憎悪」的な逆説を込めた和風アレンジの残酷童話か?
耳男(みみお)という名前は何故か聞き覚えありますが、おそらく原作からの剽窃だったんだろうな…それはともかく本編の語り手でもある彼は仏師として長者の愛娘に与える菩薩像コンペに強制参加させらされる訳です、そして次には自ら志願して姫の木像を彫り始めるのですが完成を待たずに物語は幕を閉じるのです。
つまり語り手が真の主役ではなかったパターンですね、だとすれば偽りの神を肯定する物語になってしまいますよね?…そういうグノーシス調の訓話とも思えないですし、単にまだ僕の理解が浅いのでしょうけど。
特に中ボス的な機織り女が、ちょっと謎なんですが。
馬のような耳を持つが故に嘲りを受け続けてきた耳男、長者の遣いアナマロも機織り女エナコも彼を嘲笑し睨み付ける…彼の災いは耳から生じ、耳男は己の自尊心から火中へ飛び込むのが前半の流れになってます。
しかし後半は疫病で人が死ぬ度に嬉々とするブッ飛び姫の、残酷さに比例して輝く美しさに答えを見出だそうと葛藤する耳男という展開に…なんだか教祖が荒野で誘惑を退ける宗教説話みたいだな、と思っちゃうと耳男がマナー違反で敗北するのは今風に言うならバッドエンドって事だよなぁ?
ともあれ本作の教訓は、愛する者は呪い戦い殺すべし&殺す前には忘れず挨拶!
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僕は原作者について名前しか知らないし、もっと堅苦しく込み入った話を書く文豪なんだろうと思ってましたよ…軽くページを捲って取っ付き易そうな気がして、まぁ実際にも一気に読んじゃったんですけどね。笑
のっけから(???)で、読んでる内に分かるのかと思ってたら一貫して分からないまま…なのに、面白い。
先ず最初に“そのヒメが生まれた時/夜長の長者は/一夜ごとに二握りの/黄金を百夜に/かけてしぼらせ/したたる露を/あつめて/産湯をつかわせた/という”って、黄金というのは何か植物の比喩か?と混乱させられ…次々と起こる突飛な出来事には耳男以上に翻弄され、あまりに唐突な幕切れに愕然としました。
一体これは何だったんだ?
だけど(訳分からん)と済ませられない、シュールな夢のようで不思議と風通しよく組み上げられているのです…それでいて寓話にしては反社会的な解釈になりかねず、もしや「至上の愛は憎悪」的な逆説を込めた和風アレンジの残酷童話か?
耳男(みみお)という名前は何故か聞き覚えありますが、おそらく原作からの剽窃だったんだろうな…それはともかく本編の語り手でもある彼は仏師として長者の愛娘に与える菩薩像コンペに強制参加させらされる訳です、そして次には自ら志願して姫の木像を彫り始めるのですが完成を待たずに物語は幕を閉じるのです。
つまり語り手が真の主役ではなかったパターンですね、だとすれば偽りの神を肯定する物語になってしまいますよね?…そういうグノーシス調の訓話とも思えないですし、単にまだ僕の理解が浅いのでしょうけど。
特に中ボス的な機織り女が、ちょっと謎なんですが。
馬のような耳を持つが故に嘲りを受け続けてきた耳男、長者の遣いアナマロも機織り女エナコも彼を嘲笑し睨み付ける…彼の災いは耳から生じ、耳男は己の自尊心から火中へ飛び込むのが前半の流れになってます。
しかし後半は疫病で人が死ぬ度に嬉々とするブッ飛び姫の、残酷さに比例して輝く美しさに答えを見出だそうと葛藤する耳男という展開に…なんだか教祖が荒野で誘惑を退ける宗教説話みたいだな、と思っちゃうと耳男がマナー違反で敗北するのは今風に言うならバッドエンドって事だよなぁ?
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| comic | 2019.11.25 Monday | comments(0) | - |