最近読んだマンガ
安倍夜郎「山本耳かき店」
このところ面白い漫画に当たっておりますが、本作もまたビンゴ!(って古いか)でした…大当たり、って程の華やかさはないにせよ。
先ず装幀も好いですね、少し開いた障子戸から奥の間が覗いてて店主の山本さんが耳掻きしている…そして白い障子紙の部分のみエンボスで桟(格子の骨組み)が浮き出していて、触ってみると戸の縁や奥の間の2人も輪郭線が微妙に立体的。
補強紙っぽい背表紙の色も好いです、まぁ個人的には奥の間が緋毛繊っぽい点は引っ掛かりましたけど…それも実は緋毛繊の非日常感で、耳掻きに仄かなエロチックさを込めた内容を暗示しているような気もして。
本作は、タイトルどおり町の小さな耳かき屋さんが舞台の連作短編です…といっても初出の'04年当時は架空の商売だったんじゃないかな、江戸時代にはあったのかもしれませんけれど。
作者によるあとがきによると“編集長が代わった途端、ブッツリ載らなくなってしまった”そうで、しかも連載が途絶えたタイミングで同名の店が現実に登場して度々マスコミで紹介され店舗を増やしていったのだとか…新たな編集長と同名店の関係は不明ですが、これでは作者ならずともやりきれない思いになります。
第4話までは隔月連載なのに、第5話と6話の掲載は1年以上も空いてますね。
その後「深夜食堂」という漫画で作者は耳目を集め、本作も'10年の最終話に描き下ろし1本を加えた9話として同年に単行本化されました…作者としては“執筆期間に十年近く差があり、絵柄がバラバラでお見苦しい点がある”と気にしてるようです、確かに間隔連載で続いていたら'05年には出せていたでしょうし。
いつまで耳かき店ブームが続いていたのか知りませんけども、女性の膝枕で耳掻きしてもらう発想は本作に通じますね…しかし当初はCM制作会社に勤めていた作者の郷里なのか、地方の町を舞台としたのも本作の秀逸さに加味される要素ではないかと思ったりも。
滝田ゆう辺りを思わせる下町の風情と地方訛りの台詞に(どこだろう?)と手掛かりを探しつつ、耳掻き中の有機的でなまめかしい妄想描写と様々な訪問客が見せる初期のいがらしみきお顔にニヤッとしつつ…老若男女の表情や筋運びに新人賞作品とは思えない技量を感じ、面倒臭そうな人々の憎めなさを描く作者の器量に“ふぅ”となりました。
圧倒的とか独創的といった類いの漫画ではありませんが、既に完成されてます。
近所の図書館はCDも漫画も当たりが多くて有難いです、本作も「次に読みたくなったら必ず(定価で)買う」リストに加えました。笑
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【最近読んだマンガ】V.A.「もしも、東京」| 2022.09.23
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先ず装幀も好いですね、少し開いた障子戸から奥の間が覗いてて店主の山本さんが耳掻きしている…そして白い障子紙の部分のみエンボスで桟(格子の骨組み)が浮き出していて、触ってみると戸の縁や奥の間の2人も輪郭線が微妙に立体的。
補強紙っぽい背表紙の色も好いです、まぁ個人的には奥の間が緋毛繊っぽい点は引っ掛かりましたけど…それも実は緋毛繊の非日常感で、耳掻きに仄かなエロチックさを込めた内容を暗示しているような気もして。
本作は、タイトルどおり町の小さな耳かき屋さんが舞台の連作短編です…といっても初出の'04年当時は架空の商売だったんじゃないかな、江戸時代にはあったのかもしれませんけれど。
作者によるあとがきによると“編集長が代わった途端、ブッツリ載らなくなってしまった”そうで、しかも連載が途絶えたタイミングで同名の店が現実に登場して度々マスコミで紹介され店舗を増やしていったのだとか…新たな編集長と同名店の関係は不明ですが、これでは作者ならずともやりきれない思いになります。
第4話までは隔月連載なのに、第5話と6話の掲載は1年以上も空いてますね。
その後「深夜食堂」という漫画で作者は耳目を集め、本作も'10年の最終話に描き下ろし1本を加えた9話として同年に単行本化されました…作者としては“執筆期間に十年近く差があり、絵柄がバラバラでお見苦しい点がある”と気にしてるようです、確かに間隔連載で続いていたら'05年には出せていたでしょうし。
いつまで耳かき店ブームが続いていたのか知りませんけども、女性の膝枕で耳掻きしてもらう発想は本作に通じますね…しかし当初はCM制作会社に勤めていた作者の郷里なのか、地方の町を舞台としたのも本作の秀逸さに加味される要素ではないかと思ったりも。
滝田ゆう辺りを思わせる下町の風情と地方訛りの台詞に(どこだろう?)と手掛かりを探しつつ、耳掻き中の有機的でなまめかしい妄想描写と様々な訪問客が見せる初期のいがらしみきお顔にニヤッとしつつ…老若男女の表情や筋運びに新人賞作品とは思えない技量を感じ、面倒臭そうな人々の憎めなさを描く作者の器量に“ふぅ”となりました。
圧倒的とか独創的といった類いの漫画ではありませんが、既に完成されてます。
近所の図書館はCDも漫画も当たりが多くて有難いです、本作も「次に読みたくなったら必ず(定価で)買う」リストに加えました。笑
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| comic | 2019.12.23 Monday | comments(0) | - |