【中古】嘘解きレトリック <全10巻セット> / 都戸利津(コミックセット)
【中古】嘘解きレトリック <全10巻セット> / 都戸利津(コミックセット) (JUGEMレビュー »)
「ウソを聞き分ける」が故に孤独だった少女が貧乏探偵の助手に、というレトロモダン路地裏探偵活劇…お世辞や方便に欺瞞を感じる、そんな読者少女を分かってますなぁ。
およそ100年前という地続きな設定、現代とは異なる感覚の豆知識も興味深いです…本格推理ファンには物足りないでしょうけど、見せ方から筋運びまで完璧!と感じる漫画家ですよ。
紹介記事【2023.02.01】
【中古】 ルーマニア賛歌 Europe of Europe /みやこうせい(著者) 【中古】afb
【中古】 ルーマニア賛歌 Europe of Europe /みやこうせい(著者) 【中古】afb (JUGEMレビュー »)
地理的にはウクライナの南、ブルガリアの北で西側はハンガリーとセルビアに接するルーマニア…つい東欧と一括りに捉えがちですが、カトリックと東方正教が混じり合った歴史を感じさせる万華鏡のような風土と文化のモザイクは旅心をくすぐられます。
紹介記事【2023.01.02】
フェーム 特別版 [ アイリーン・キャラ ]
フェーム 特別版 [ アイリーン・キャラ ] (JUGEMレビュー »)
ミュージカル映画かと思ってたんですが群舞シーンは意外と少なめ、ストーリーを追うより時代の空気を味わう映画かも…各エピソードにオチも後日談もなく、ドキュメンタリーのようにシンプルな構成でしたが最後はグッと来ましたよ。
紹介記事【2023.05.26】
ルックバック (ジャンプコミックス) [ 藤本 タツキ ]
ルックバック (ジャンプコミックス) [ 藤本 タツキ ] (JUGEMレビュー »)
(薄いなー)という第一印象を覆す、先入観なしに読んでほしい一冊です…尺は短めでも完成されてる、低予算ながら良質の自主制作映画を思わせます。
山形を舞台に描かれる、十代の少女2人の漫画愛&成長譚…ところが中盤の転換点から怒涛の勢いで感情を振り回され、喪失の痛みを知る人ほど「作り話の存在証明」を思い知らされるのでは。
紹介記事【2023.06.15】
COYOTE SPECIAL ISSUE 安西水丸 おもしろ美術一年生 Coyote MOOK / 安西水丸 【ムック】
COYOTE SPECIAL ISSUE 安西水丸 おもしろ美術一年生 Coyote MOOK / 安西水丸 【ムック】 (JUGEMレビュー »)
僕にとって安西は小説家であり、70年代の映画みたいな乾いた文章と裏腹な湿り気が印象的で…どこかで彼に嫉妬していたのかも、そう気付かされた本書で自分の絵心を取り戻せそうです。
紹介記事【2023.02.07】
ああ爆弾 [DVD]
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舞台美術を融合させた和製ミュージカル、小気味好いカットインでテンポよく繋いでゆく独特な映画です…大筋は任侠コメディでもコミカルなシークエンスに関連性を与えているに過ぎず、目の前の滑稽に食い付いて心をスッキリ空っぽにする映画かと。
紹介記事【2023.04.20】
STYLE 男のファッションはボクが描いてきた [ 綿谷 寛 ]
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どこかノスタルジックなロックウェル調の画風、本番アメリカでも絶えてしまったファッション・イラスト…バイヤー並みの製品知識と造詣が描き出す「写真と非なる情報量」は、安西水丸の認識と真っ向から対立するようで興味深く感じられたりも。
紹介記事【2023.03.13】
ヒヤマケンタロウの妊娠 (BE LOVE KC) [ 坂井恵理 ]
ヒヤマケンタロウの妊娠 (BE LOVE KC) [ 坂井恵理 ] (JUGEMレビュー »)
男が妊娠・出産するようになり、10年が経過した世界…色々と自分のバイアスを揺さぶられました、現実の世間の根っこを「男の妊娠」一点で掘り返してます。
決して「弱者に」的な描き方ではなく、でも少子化対策の先送り感が浮き彫りに…一時しのぎじゃ逃げられないと腹を括る男たち、そういう腰が重さがリアル。笑
紹介記事【2023.06.03】
里見八犬伝 [ 薬師丸ひろ子 ]
里見八犬伝 [ 薬師丸ひろ子 ] (JUGEMレビュー »)
かつてガッカリした方こそ芝居感覚で観てほしい、長大な原作を2時間強でまとめた冒険活劇としては当時なりに高水準だったと認識を改めました…筋運びを追う映画じゃなく見せ場を繋ぐ芝居の手法で、和合メタファのご来光やハリボテ大ムカデも笑い所だったのでは?
紹介記事【2023.03.11】
太田裕美 / こけていっしゅ [CD]
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LPのジャケに改めて絵画のような価値と、差し向かいで聴く音楽の魅力を実感…久々に通しで何度も聴いちゃいました、こんな時間が今では日常の贅沢なんですな。
一聴して分かる特徴的な抜け感と透明感、この声質を引き立てる楽曲群…80年代シティ・ポップ前夜の、シャレオツとは言い難いからこそ魅力的な一枚です。
紹介記事【2023.05.12】
今夜すきやきだよ (バンチコミックス) [ 谷口 菜津子 ]
今夜すきやきだよ (バンチコミックス) [ 谷口 菜津子 ] (JUGEMレビュー »)
凸凹アラサー女子の協同生活、共感する要素は皆無な2人ですが何故か身に詰まされ…「人並み」の世間に属する異端な感覚、それは割と普遍的かつ根源的なのかも。
所詮は自分も誰かの「人並み」だし、共存の間合いという発想は大局的に地球をシェアするカギかとも…隣人と共存する一歩は、思想を語るより有意義そうです。
紹介記事【2023.01.08】
ハイツひなげし [ 古川誠 ]
ハイツひなげし [ 古川誠 ] (JUGEMレビュー »)
最初は(吉本ばななっぽい題名だな−)と思ったら掴まれました、料理とかスポーツとかの「簡単そうに見せる上手さ」みたいな?…面白味の薄そうな日常を退屈させずに描ける奥深さ、読んでる内に素になっちゃうような。
紹介記事【2023.05.04】
【中古】 9・11 N.Y.同時多発テロ衝撃の真実/(ドキュメンタリー) 【中古】afb
【中古】 9・11 N.Y.同時多発テロ衝撃の真実/(ドキュメンタリー) 【中古】afb (JUGEMレビュー »)
“衝撃の真実”かはともかく、ドキュメンタリーの撮影中に遭遇した視点そのものの衝撃…フィクションのようにしか感じられない自分への罪悪感、理不尽な災害への行き場のない気持ち…人の持つ気高さと、本質的な善意が胸に沁みます。
紹介記事【2023.02.05】
関連記事「9.11オフィシャル・レポート」【2023.01.20】
【中古】[PS2]Zill O'll 〜infinite〜(ジルオール インフィニット) 通常版(20050623)
【中古】[PS2]Zill O'll 〜infinite〜(ジルオール インフィニット) 通常版(20050623) (JUGEMレビュー »)
遂にPS2本体も三代目、全エンディング達成後は初見イベント探しに夢中です…どの出来事にも裏があり、全体像を知るにつれ各キャラの印象も大きく変わる仕込みの多さには驚かされます。
紹介記事【2023.01.04】

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最近読んだ本
一橋文哉「外国人ヒットマン」

初版'19年、KADOKAWA刊。
図書館の新着本コーナーで目に止まって衝動借りしちゃいました、なんか国内の犯罪絡みって「週刊大衆」だか「週刊ポスト」だかみたいだと引いちゃうんですけどね…逆にCIAとか海外組織の話だと何故か興味が湧く事もあって、本書に関しては後者のノリです。
しかし恐ろしい話ですな、来日した足でサクッと済ませて即帰国という日帰り殺人旅行…偽造パスポートだから追跡調査も難しく、しかも近隣諸国とは犯人引き渡し条約を締結してない点が利用されてる節もあり。
読み終えた直後、依頼人から底辺下請けまで5人が芋づる逮捕されるニュースが!?

そのニュースは関係者全員が中国内にいたから、本書のような越境パターンとはまた事情が異なる訳ですが…いくら人口が多いからって、凄まじい数のヒットマンが営業してるのね中国。
台湾組織と連携する福建省マフィア、残留帰国二世が多数活躍する東北マフィアなど拠点毎に得意とするシノギがあるそうで…大陸マフィアの老舗で国外展開を早める香港系に急成長を遂げた韓国系、同盟国マレーシアを足場にする北朝鮮工作員など闇のビジネスも国際企業顔負けのグローバル化が進んでいるのですな?
例え主犯の目星が付いても実行犯が別にいて、繋がりの証明は出来っこないと。

著者は「グリコ・森永事件」や「宮崎勤事件」など様々な犯罪ノンフィクションを手掛け、本書に紹介されている裏社会絡みの凶悪な未解決事件を扱う著作も。
それらに比べると本書の内容が浅く広くなるのも已む無しで、そもそも解決してない事件ですからディープな情報も期待出来ません。
ほとんどがネット上の噂レベルで目新しさはありませんが、それらも本書のように裏とコンタクトが出来る情報源が出所ならば話半分が話八割ぐらいには思えてきそう…ライブドア/王将/世田谷/ナンペイといった事件の実行手口と仲介役、ヒットマン派遣組織の動向までを追える構成です。

ライブドア“懐刀”沖縄暗殺で二重三重に派遣されていたヒットマン達、世田谷一家惨殺犯の足取りと近況…王将社長射殺と金兄毒殺の関連性、フィリピン人の八王子スーパー強盗計画を乗っ取った中国人ヒットマン辺りは自分の行動範囲に近く通りすがりで巻き添えにされかねない恐怖感満点。
潜伏先の定番フィリピンに建つ最新鋭の演習施設やカンボジアに移住した元G組長とオウム残党の密着などは、台湾や韓国以上に今から行く気は起きなくなります…微妙に読みにくく感じるのは色々とボカシたいからなのか、というよりは自分に裏社会の基礎知識が足りないせいなのかもしれません。


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以下、個人的メモ
 
 
“中国外務省は同制度を五十年間適用することを定めた一九八四年の中英共同声明について、早々に「既に現実的な意義はなくなった」と述べ、事実上反故にしようとしている”(p.24)

“二〇一七年に香港島の中心地・中環(セントラル)で契約されたオフィス面積の五二パーセントは中国企業が借り主だった(中略)中環のオフィス賃料は瞬く間に高騰し、ロンドンなど大都市の一・五倍に達した”(p.27)

“二〇一七年上半期の新規株式公開(IPO)による資金調達額、香港証券取引所が六十九億ドルで、上海証券取引所の百十億ドルや深セン証券取引所の七十一億ドルという中国勢にも抜かれ、世界四位に転落した(中略)香港証券取引所で上場株の時価総額に占める中国企業の比率は何と六三パーセントに達しており、地元香港企業の三〇パーセントを大きく上回っている(中略)やがて上海市場があらゆる取引がおこなえるようになり、十年以内には上海市場で出来ない金融取引はなくなるに違いない”(p.27)

“中国政府による二十年間にわたる事実上の統治を経て、香港市民の生活水準はかなり低下し、貧富の格差が広がっている”(p.34)

“宮崎さん一家の周辺には、言葉の発達が遅れ気味の長男の教育問題に絡んで親しく交流している「金田秀道」(仮名)氏という宗教団体に関係する在日韓国人の男性がいて、金田氏との間で金銭賃借をめぐりいろいろとトラブルがあったことが、世田谷一家惨殺事件の起きる要因となっている”(p.100)

“宮崎さん宅も二〇〇〇年三月に立ち退き交渉がまとまり、都は既に土地売却料と物件移転補償費の一部を支払っており(中略)総額一億数千万円余に上るカネを狙っての犯行だったのではないか”(p.107)

“宮崎さん宅から都立祖師谷公園に向かう逃走経路の延長線上に、金田氏が所属する団体の関連施設、つまり隠れ家があった(中略)金田氏によって米国の訓練センターに送り込まれ、優秀な殺人兵器として育てられた李は十分に実行犯となり得た(中略)金田氏が所属する宗教団体はコリアンマフィアなどの殺し屋候補生を入信させて洗脳した後、韓国と米国の退役軍人らが創設した銃撃と格闘技、特殊技能などの専門学校に二年間留学させ、一流のヒットマンに育成するという(中略)闇の整形業者たちはヒットマンたちの顔形はもちろん、歯並びから指紋まで変える”(p.108)

“我が国で「チャイニーズマフィア」といえば、まず最初に思い出されるのは台湾か香港の(中略)二大組織は日本の暴力団とも交流を持ち、麻薬や拳銃の密売を行ってきた(中略)台湾マフィアに代わって上海マフィアが台頭し、そこに福建、広東省のマフィアが加わった(中略)密航者の輸送と世話、仕事の斡旋などで大いに潤った「蛇頭」を支配してきた福建省マフィアが一大勢力として君臨した(中略)「蛇頭」はもともと、日本に不法入国した不良中国人のグループが結成した組織が始まりで(中略)新たに大々的に偽装結婚ビジネスを担ったのが中国東北部を拠点とし台頭著しい東北マフィアであった(中略)「怒羅権」グループは中国からの帰省者、いわゆる中国残留日本人孤児の少年たちが結成した暴走族がマフィア化した犯罪集団で、日本の暴力団と手を組んで共存共栄を図ってきた”(p.118)

“広東省だけでも四川省や重慶市出身の農民工が三千万人近くも流入しているというから、いくら探しても仕事や住居は見つからない(中略)仮に職を得て都市に定住しても、都市戸籍は得られず、二級市民として差別されたまま(中略)そうした連中が、来日するチャイニーズマフィアの兵士たちになる(中略)中国より日本の方が量刑が軽いなどという風評が広がり、犯罪者や貧困者の日本への流入が止まらない”(p.125)

“安渓県はかつて茶の産地として知られていたが、今では「電信詐欺の里」などと呼ばれるほど犯罪に手を染める住民が多いとされる。もはや「村ぐるみの産業」と言われるまでに発展したという”(p.127)

“東北マフィアが圧倒的に強かったのは、その構成メンバーの多くが中国残留孤児の二世か三世か、あるいは親族などの関係者(中略)として既に日本で生活しているうえ、日本国籍を有していただけに、後に続く中国人たちの偽装結婚の相手は事欠かなかった”(p.128)

“中国東北部はかつて「満州」と呼ばれた遼寧、吉林、黒龍江省の三省に跨がる広大な土地で(中略)最北部のロシア・シベリア開発に積極的に参入し、その前線基地の役割を果たすとともに、北朝鮮との貿易窓口として「瀬取り」と称する海上取引など秘密の貿易交渉も行っており(中略)二〇一三年まで十年間続いた胡錦濤政権が自らの歴史的な偉業達成を意識し、大連市を中心とした東北部に多額の国家予算を投入した”(p.130)

“「清龍会」をはじめとする福建マフィアの面々に対し、情報提供や活動支援などを行い、内部に食い込んでいた広域指定暴力団系の企業舎弟にKという男がいた。彼はいきつけのスナックでホステスとして働いていた稲垣さんに、スーパー「ナンペイ大和田店」に勤めるよう強く働きかけていた(中略)Kの情報収集は慎重かつ徹底しており、例えば息の掛かった中国人ホステスを店長に近づけ(中略)稲垣さんの話し相手になって、さらなる情報収集を行っていたが、「上海から来た」と言いながら実は福建省出身で、「清龍会」のメンバーだった(中略)店長をたらし込んでいた別の中国人ホステスもおり、彼女も事件後に消息を絶っている(中略)稲垣さんが犯人に対し「話が違う」と漏らしたことは(中略)強盗団と言うより「滅族・滅門」(一家皆殺し)を得意とする凶悪な連中がいて、今回の事件ではそうした人物が強盗団の代わりに現場に行った”(p.153)

“二〇一七年七月に中国政府への忠誠を誓い、その後押しを受けて香港の行政長官に就任した林鄭月娥(キャリー・ラム)氏がこれまで実施したことと言えば、今回の「逃亡犯条例」改正をめぐる混乱のほかに、一四年の緩やかな反政府デモ「雨傘運動」に参加した活動家の処罰、反対派立法会議員の議員資格剥奪、独立を主張する政治団体の活動禁止、英紙編集者のビザ更新拒否、中国職員による高速鉄道駅での出入境審査を認める「一地両検」の実施……など、中国政府が突きつける公式・非公式を問わない無理な要求に対し、一つ一つ丁寧に応えていったに過ぎなかった”(p.161)

“返還時に中国のGDP(国内総生産)の二〇パーセント以上を占めていた「経済の香港」が今や三パーセント前後にまで落ち込むなど、街の経済と人々の暮らしぶりは良くならず、頭脳と資金を持った香港市民の海外流出は未だに後を絶たない”(p.162)

“事件発生の直前まで交際していたとされる土建・不動産会社社長が事件現場付近に居住するフィリピン人の男に稲垣さんの殺害を持ちかけたとする疑惑が濃厚となり(中略)社長の背後に暴力団や右翼団体が潜んでいて、その人脈の先にはフィリピンの政治家や軍閥、闇社会の面々の名前が連なっていることが分かった(中略)情報を寄せてきたフィリピン人は行方不明になっており、実行犯の存在を示す有力情報や証人が次々と姿を消し、結局、捜査員たちは実行犯を追い詰められないまま、帰国せざるを得なかった”(p.177)

“マニラ市で二〇一四年〜一五年、山梨県韮崎市の整骨院経営者(当時三十二歳)と同県笛吹市の会社役員(同四十二歳)の男性二人が殺害される事件が発生(中略)主犯の男は「保険の手続きは善意でやったこと。私は一度もフィリピンに行ったことはないんです」と堂々と主張した(中略)後に取材すると、フィリピンで関係した人物は、日本人、フィリピン人を問わず全員が変死したか行方不明になっており、裏に潜む暗殺請負組織が手を伸ばした可能性が高くなっている”(p.178)

“広域指定暴力団の組長を辞めて移住し(中略)カタギとして事業を営むG元組長の(中略)息のかかった居酒屋や飲食店が多いだけに、カンボジアの日本人社会はG元組長が事実上支配している(中略)社会資本の整備が遅れている分土地代や人件費が安く、政治体制が不十分な国柄だけに政治家や官僚、警察官などを賄賂と接待漬けにしておけば、何でもやりたい放題という大いなる利点がある(中略)先に進出し成功を収めている(G元組長のような)日本人の存在は頼りになる(中略)どこにでもチャイニーズマフィアがいる。いきなり彼らと連携は出来んから”(p.187)

“特に日本の企業や老舗店舗、年金資金を捻出するのに四苦八苦している各業界ファンド団体を標的にして、多額の資金を騙し取るマネー犯罪を画策している連中が、関係する暴力団組織を引き連れて続々とカンボジアの地に現れた(中略)現在はすっかり一線から退いた感のあるG元組長だが、現役時代には華僑人脈を通じて中国人ヒットマンとも連携しており(中略)まさに「恐ろしくて強力な爺」(本人の弁)”(p.191)

“積極的な活動ぶりで目立っているのが韓国系暗殺請負組織であり、最も熱心にG元組長周辺に接触を試みている人物こそが、一九九五年の地下鉄サリン事件などで教祖の麻原彰晃以下多くの幹部が逮捕され、教団壊滅の危機に陥っていたオウム真理教の元幹部で、新しい教団を設立する動きを見せているXと、その新しい弟子たちであった(中略)G元組長の側近だった人物とともに暗殺者グループの情報を豊富に持ち、暗殺者の斡旋、仲介業務を担っている(中略)暗殺・テロ行為の計画立案や犯行サポートには、日本やカンボジアにいるオウム真理教の残党たちが深くかかわっており(中略)国際犯罪ネットワークの拠点として稼働している”(p.192)

“今でも釜山には密航ビジネスの拠点としての名残りはあるが(中略)北朝鮮出身者を中心とする大がかりなマフィア集団が含まれており(中略)広域指定暴力団系の企業舎弟が北朝鮮に産業廃棄物を持ち込み、埋め立てに使ったり、代わりに覚醒剤やアサリ、カキなどの海産物を密輸入して(中略)いったん国内の海岸にばらまいた後で回収する手口で善意の第三者を装って法の網をくぐり抜け(中略)北朝鮮ルートの覚醒剤とタイルートのアヘンを中国船を使って密輸し、海上で北朝鮮の漁船と接触し、アサリなどと一緒に(中略)いったん福建省に拠点を置く中国籍漁船に乗せ換え、暴力団事務所がある鳥取県境港港に係留中の漁船と尖閣諸島近くの公海上で取引する”(p.196)

“かつてG組は山口組きっての武闘派として知られ、突出した資金力で(中略)山一抗争や伊丹十三監督襲撃事件で悪名を馳せたが、G元組長は有名人とのゴルフコンペで除籍処分を受けて組を解放した。その後で、一一年にカンボジア国籍を取得して移住した(中略)周囲にはオウム真理教の残党もいるし、暴力団同士の抗争事件やオウム真理教幹部の村井秀夫の暗殺にも関わった弘道会系下部団体の暗殺組織「十仁会」の面々も控えており(中略)日本人ではあるものの、それらの国民からすれば外国人ヒットマンなのだ”(p.198)
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