最近読んだマンガ
佐原ミズ(漫画)、孔枝泳(原作)「私たちの幸せな時間」
原作の翻訳は蓮池薫、という事は北朝鮮なのか?いや韓国か…でも今まで避けてたのは、そんな理由からではなく(泣ける漫画)っぽさが感じられたからでした。
でも本作がハズレだったとしても借りて読む分には泣けようが泣けまいがノーダメージだし、それに佐原ミズだったら今の所ハズレがないから読んでみるかと。
いや実際、原作も好いんでしょうなぁ…粗筋だけなら「無差別殺人の死刑囚と自殺未遂を繰り返す元ピアニストが織り成す愛と生」とか、一昔前のケータイ小説にありがちな感じですが。
そう構えていても、読んでいると白々しい気持ちなんて湧いて来ませんでした。
元ピアニストの叔母で、長く教誨師(きょうかいし)を務める老シスターに誘われ教化委員として面会した死刑囚…聖職者の偽善も死刑囚への慈悲も“馴れ合い”と思っていた、それは多くの読者にとっても他人事ではない感覚なのでしょう。
いえ、正直に言いますが僕の中にもその気持ちがない訳ではありませんでした。
もちろん本作に出会って心を入れ替えた、とは言いません…それでも自分のテーマでもある(赦し)について、深まるものは決して少なくはありませんでしたよ。
薄っぺらに見えた刑務官の人としての厚みや、教誨師の叔母が送ってきた人生の重さも考えさせられます。
誰も単純な白と黒ではなく、また完全なる法や絶対の正義もない社会で人は人を裁いていく…命という生きている時間の権利は何者にあるのか、死者への償いを定める基準は何処にある?
考え抜いても正答に辿り着けないからって「そーゆーコトはプロに任すわ」と放棄すれば、やはり偽善や馴れ合いで意識は止まってしまうでしょう…本作のような真実を心に秘めて刑を待つ囚人などいない、と断じるのもまた思考停止です。
“犯罪者と呼ばれた彼と呼ばれていたかもしれない私との違い”が紙一重に感じられた事を「ない」と言えてしまう人こそ、僕には恐ろしく思えてしまいます。
誰かに注ぐ眼差し、注がれる思い…愛が光や水に喩えられるのは、それが人には欠かせないからでしょう。
朝を迎える度に“死を覚悟して生きている”のが死刑囚ならば、僕もまたそのようでありたい…武士道ではないけれど、死を想う事は生きる時間の糧ですから。
やはり本作は(泣ける漫画)ではありません、というよりは「泣いてスッキリ」したら詰まらないんですよ。
僅かに心を詰まらせる、この幕切れの匙加減も見事です…所詮は自分の時間を生きるしか出来る事はなく、故にこそ惜しむべき死も最大限の糧に変えてゆく姿にカタルシスを感じました。
やっぱ、読んで好かった。
“殺人現場を目撃した人は死刑制度の存続を…死刑執行現場を見た人は廃止論者へ…人の出す答えには結局エゴが含まれていて”
“死刑囚の話など真に受ける奴がどこにいる?”
“明日の朝 刑が執行される事を彼が知る事は許されません”
〈佐原ミズ〉関連記事:
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【最近読んだマンガ】佐原ミズ「夜さん She has a little wonders」2巻| 2016.01.08
原作の翻訳は蓮池薫、という事は北朝鮮なのか?いや韓国か…でも今まで避けてたのは、そんな理由からではなく(泣ける漫画)っぽさが感じられたからでした。
でも本作がハズレだったとしても借りて読む分には泣けようが泣けまいがノーダメージだし、それに佐原ミズだったら今の所ハズレがないから読んでみるかと。
いや実際、原作も好いんでしょうなぁ…粗筋だけなら「無差別殺人の死刑囚と自殺未遂を繰り返す元ピアニストが織り成す愛と生」とか、一昔前のケータイ小説にありがちな感じですが。
そう構えていても、読んでいると白々しい気持ちなんて湧いて来ませんでした。
元ピアニストの叔母で、長く教誨師(きょうかいし)を務める老シスターに誘われ教化委員として面会した死刑囚…聖職者の偽善も死刑囚への慈悲も“馴れ合い”と思っていた、それは多くの読者にとっても他人事ではない感覚なのでしょう。
いえ、正直に言いますが僕の中にもその気持ちがない訳ではありませんでした。
もちろん本作に出会って心を入れ替えた、とは言いません…それでも自分のテーマでもある(赦し)について、深まるものは決して少なくはありませんでしたよ。
薄っぺらに見えた刑務官の人としての厚みや、教誨師の叔母が送ってきた人生の重さも考えさせられます。
誰も単純な白と黒ではなく、また完全なる法や絶対の正義もない社会で人は人を裁いていく…命という生きている時間の権利は何者にあるのか、死者への償いを定める基準は何処にある?
考え抜いても正答に辿り着けないからって「そーゆーコトはプロに任すわ」と放棄すれば、やはり偽善や馴れ合いで意識は止まってしまうでしょう…本作のような真実を心に秘めて刑を待つ囚人などいない、と断じるのもまた思考停止です。
“犯罪者と呼ばれた彼と呼ばれていたかもしれない私との違い”が紙一重に感じられた事を「ない」と言えてしまう人こそ、僕には恐ろしく思えてしまいます。
誰かに注ぐ眼差し、注がれる思い…愛が光や水に喩えられるのは、それが人には欠かせないからでしょう。
朝を迎える度に“死を覚悟して生きている”のが死刑囚ならば、僕もまたそのようでありたい…武士道ではないけれど、死を想う事は生きる時間の糧ですから。
やはり本作は(泣ける漫画)ではありません、というよりは「泣いてスッキリ」したら詰まらないんですよ。
僅かに心を詰まらせる、この幕切れの匙加減も見事です…所詮は自分の時間を生きるしか出来る事はなく、故にこそ惜しむべき死も最大限の糧に変えてゆく姿にカタルシスを感じました。
やっぱ、読んで好かった。
“殺人現場を目撃した人は死刑制度の存続を…死刑執行現場を見た人は廃止論者へ…人の出す答えには結局エゴが含まれていて”
“死刑囚の話など真に受ける奴がどこにいる?”
“明日の朝 刑が執行される事を彼が知る事は許されません”
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| comic | 2020.03.03 Tuesday | comments(0) | - |