オーディオテクニカ ダイナミックヘッドホン ATH-250AV
オーディオテクニカ ダイナミックヘッドホン ATH-250AV (JUGEMレビュー »)

安くて丈夫で高性能なヘッドフォン、もし壊れても買い直す予定。
ハウジング部分が小さめな割に、長く装着してても耳が疲れないし遮音性も高いし低音も出てます。
紹介記事【2019.03.31】
南の島のティオ (文春文庫)
南の島のティオ (文春文庫) (JUGEMレビュー »)
池澤 夏樹
14歳の少年ティオが小さな島の出来事を綴っていく連作短編集で、実在の少年とポナペ島をモデルに著者自身が様々な島で聞いた話を再構成したのだそう。
前年の台湾旅行で読んだ本書は「海の向こうに帰った兵士たち」という一編を加えた'10年12刷以降の増補版で、この(南の島の物語を南の島国で読む)という旅のエクストラに新たな一編がオマケされたのは嬉しい偶然でした。
紹介記事【2019.01.24】
ファイナルファンタジーXII インターナショナル ゾディアックジョブシステム (シークレットDVD同梱)
ファイナルファンタジーXII インターナショナル ゾディアックジョブシステム (シークレットDVD同梱) (JUGEMレビュー »)

最近は評価が好転してきたようで、実際PS2最終期に出ただけあって申し分ない出来栄え。
一見、難しそうなバトルシステムもプレイの幅を広げてくれます。
その辺も含め、ノーマル版のやり込み本ですが「ファイナルファンタジーXIIのあるきかた」も併せて是非!
紹介記事【2019.03.28】
レディ・プレイヤー1 [DVD]
レディ・プレイヤー1 [DVD] (JUGEMレビュー »)

スティーヴン・スピルバーグ監督による'18年のSF作、娯楽映画には珍しく2時間超の長尺ながらダレ場なし。
是非DVDで繰り返し観てください、マニアックな小ネタ探しだけでなく。
天才変人の孤独と愛情が実は普遍的である事、それもまたイースター・エッグかと。
紹介記事【2019.02.11】
琉球奇譚 シマクサラシの夜 (竹書房文庫)
琉球奇譚 シマクサラシの夜 (竹書房文庫) (JUGEMレビュー »)
小原猛
石垣島に行くのに持ってく本でしたが、結局フライト乗り遅れもあって到着前に読み終えてました。
おどろおどろしさは控えめで、怖いというより不思議だったり哀しかったり薄気味悪かったり程度。
しかし寝静まった石垣島のゲストハウス夜11時、軽く読み返していてドキドキ。
紹介記事【2019.05.02】
夢かもしんない コミック 全5巻完結セット (ビッグコミックス)
夢かもしんない コミック 全5巻完結セット (ビッグコミックス) (JUGEMレビュー »)
星里 もちる
「光速シスター」「怪獣の家」から立て続けに読んじゃいました。
妻子持ち営業マン&思い出のアイドル、の幽霊?
本作もまた「いい人」を主役に、大人社会の悲哀と可笑し味を描きつつラストで涙腺を決壊させます。
紹介記事【2019.01.17】
ハイ・フィデリティ (新潮文庫)
ハイ・フィデリティ (新潮文庫) (JUGEMレビュー »)
ニック ホーンビィ
女性弁護士と別れ話が進行中なアラサー中古レコード店主の、シット・コム的な恋愛×音楽in the UK。
60-70年代メインのネタで会話の可笑しみ倍増、分からなくても巻末の「ほとんど注解に終始する訳者あとがき」が丁寧にフォローしてくれますし、むしろ訳者の注解コメントで笑っちゃったりも。
紹介記事【2019.06.23】
Ben Folds & Nick Hornby - Lonely Avenue
Ben Folds & Nick Hornby - Lonely Avenue (JUGEMレビュー »)
Ben Folds & Nick Hornby
「ハイ・フィデリティ」作者×ベン・フォールズ・ファイブ元リーダー(?)のコラボ作。
SOSとはまた異なるバカラック的ドリーミーさ+初期B.ジョエル的な吟遊ピアノ感、ヴィンテージ系シンセ&ストリングスのあしらいも絶妙。
紹介記事【2019.06.27】
ReLIFE 完結編(完全生産限定版) [DVD]
ReLIFE 完結編(完全生産限定版) [DVD] (JUGEMレビュー »)

ブラック企業で心を折られた27歳ニートが、渡りに舟と食い付いたのは人生リセット人体実験?
アニメが描く夢の世界も、時代を表しているのですなぁ。
うっかり大人目線で色々やらかすネタに笑いつつ、いつしか心を掴まれてしまいました。
紹介記事【2018.05.16】
2030年の旅 (中公文庫)
2030年の旅 (中公文庫) (JUGEMレビュー »)
恩田 陸,坂口 恭平,小路幸也,瀬名秀明,宗田理,支倉 凍砂,山内 マリコ,喜多喜久
なんか「2300年未来への旅」を連想させるタイトルですが、日本人の作家による近未来SFアンソロジーです
お題は“東京オリンピックからさらに十年後”の7編、個人的には坂口恭平による巻末エッセイの「自殺願望は脳の誤作動」にハッとしました。
紹介記事【2019.01.04】
デッドマン [DVD]
デッドマン [DVD] (JUGEMレビュー »)

別に「ブレイブ」と本作をジョニデ繋がりで観た訳ではないのですが、結果としては彼が「ブレイブ」を世に出した理由も感じ取れた気がします。
シンプル過ぎるヤマなしオチなしイミなし流浪譚ながら、詩人ブレイクを知っている方には意味深いのかも。
星野通夫の「森と氷河と鯨」で見たハイダ族やトリンギット族を思わせる、アイヌに似た文様の集落……同化政策は祖先の魂を殺すのですね、非物理的な世界で。
静寂と、雨の船出の美しさが忘れた頃に沁みてきます。
紹介記事【2019.02.23】
ブレイブ [DVD]
ブレイブ [DVD] (JUGEMレビュー »)

ジョニデが監督と共同脚本に主演と、ミーハーなファンこそ必見ですね。笑
シンプル&ヘビーな本作、イギー・ポップやノーギャラ出演のマーロン・ブランドら敬愛する人物と撮った彼の気骨が詰まってます。
特に冒頭は二度観て、彼がアメリカ本国での公開を拒んだ心に思いを馳せては?
紹介記事【2019.02.22】
夢の階段 (新潮文庫)
夢の階段 (新潮文庫) (JUGEMレビュー »)
池波 正太郎
本書の7編はデビュー作を含む現代小説で巻末の2編だけが時代小説、しかも全編が本書初収録。
現代小説とはいっても昭和で言えば29〜36年、著者が31〜36歳の間に発表された戦後の気配が濃厚に感じられる「現代」。
いわゆる大物海外ミュージシャンの死後どっと出回る未発表音源みたいな、クオリティの心配は当然ながら無用です。
紹介記事【2019.06.15】
その男ゾルバ(特別編) [DVD]
その男ゾルバ(特別編) [DVD] (JUGEMレビュー »)

'64年の英米とギリシャ合作映画、英国育ちのスランプ詩人が屈強な男ゾルバと過ごしたクレタ島での日々が描かれます。
「無法松の一生」の三船敏郎を思わせるゾルバの心情も、目を疑うような島の人々も音声解説なしでは理解し難いかと。
対照的な二人の男のエンディングは、ジワリと胸に残ります。
紹介記事【2019.01.30】
【2019.01.31】
波乗りの島―ブルー・パシフィック・ストーリーズ (1980年) (角川文庫)
波乗りの島―ブルー・パシフィック・ストーリーズ (1980年) (角川文庫) (JUGEMレビュー »)
片岡 義男
僕が初めて手にした著者の小説であり、著者の初期短編集でもあります。
ハワイイに住む青年サーファー、バリー・カネシロを主人公にした連作5編を収録。
写真の佐藤秀明との巻末対談も含め、失われゆく最後の輝きを僕は感じました。
紹介記事【2019.04.24】
 (JUGEMレビュー »)

作者の他作品を読んだ記憶は曖昧ながら、その時に思った(あんま上手くないな)という印象は何だったのやら。
サイバラ風でも四コマでもなく、ストーリーの組み立てもシッカリしてるしコマの流れも自然だし。
洒落にならない裏話も飄々としたキャラに救われます、男性も一度は読んでみましょう。
紹介記事【2019.05.12】
サムウェア・ディープ・イン・ザ・ナイト
サムウェア・ディープ・イン・ザ・ナイト (JUGEMレビュー »)
スウィング・アウト・シスター
ヒット曲を連発してた90年代を過ぎ、'01年にリリースされた本作は妥当というか順当な仕上がり。
ブレずに焦りも無理もなく、エレポップの衣を脱いで一層60年代ソウルやバカラック温故知新をアダルトに昇華。
気に入った曲だけ摘まむんじゃなく、一枚として聴くべき。
紹介記事【2019.06.18】
 (JUGEMレビュー »)

こちらも「アーサー王宮廷のヤンキー」同様「トウェイン完訳コレクション」の一冊、子供の頃に読んだ童話絵本をイメージしたら大違いです。
古き良きアメリカの牧歌的なジュブナイルに見せ掛けた辛辣な社会批判は、巻末あとがきのナイスフォローを先に読む方が好いかも?
紹介記事【2019.05.22】
おいでよ どうぶつの森
おいでよ どうぶつの森 (JUGEMレビュー »)

22世紀を目指し、カレンダーの最終日までタイムスリップしたりと相変わらず楽しんでます。
2100年のどうぶつ村は如何に?笑
紹介記事【2019.06.19】
クルドの星 1~最新巻(文庫版)(中公文庫) [マーケットプレイス コミックセット]
クルドの星 1~最新巻(文庫版)(中公文庫) [マーケットプレイス コミックセット] (JUGEMレビュー »)
安彦 良和
「機動戦士ガンダム」のキャラでお馴染みの作画家による漫画ですが、中東の少数派クルド人を描いてるレアさでオススメに。
もっとも「これからだ!」オチは、日和った編集の強制打ち切りか?
トルコの“土くさい人々”に惹かれた結果が何故かクルド視点、でも本作同様に何一つ解決してないんだよね現実も。
紹介記事【2019.05.06】【2019.05.30】
ルーティーン: 篠田節子SF短篇ベスト (ハヤカワ文庫JA)
ルーティーン: 篠田節子SF短篇ベスト (ハヤカワ文庫JA) (JUGEMレビュー »)
篠田 節子
副題に「篠田節子SF短編ベスト」とあるけど、どんな類いのSFなのかがまったく伺えない、鯨幕というか昔のVIVA YOUみたいな表紙カバーが斬新。
巻末解説によると、著者は20余年のキャリアを持ち一般にはジャンル横断作家と認識されているそうで。
アニメ化されそうなハードSFから昭和ジェンダー恨み節、エスノ土着オカルトを経て超高齢化+正論社会の果てまで心刺しまくり。
紹介記事【2019.03.26】
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本作は明治から昭和にかけて親しまれた、泉鏡花の“三大戯曲”をコミカライズした作品集です。
単行本化に際して描き下ろされたオマケ漫画+原作者の略歴や作品解説&文庫描き下ろしオマケ漫画と人形師による解説も収録と、これまで鏡花文学に触れて来なかった僕には有難い仕様。
人形師の一文が印象深く、100年近く前の物語にハッとさせられるのは人間に進歩などないからかも?
紹介記事【2019.04.13】
ざ・ちぇんじ 全2巻 完結セット(白泉社文庫)
ざ・ちぇんじ 全2巻 完結セット(白泉社文庫) (JUGEMレビュー »)
山内 直実,氷室 冴子
平安期の古典文学「とりかえばや物語」に基づく氷室冴子の小説をコミカライズした本作、氷室冴子も古典文学も完全スルーでしたが予想外の面白さにビックリ!
男勝りな双子の姉×病弱が故に女君として育った弟、姉は男装のまま御所に入内&弟も女官で後宮入り?
見事な風呂敷の畳みっぷりと、千年前のラブコメでLGBTを先取りのエキゾチック・ジャパンは未見なら是非!
紹介記事【2019.04.30】【2019.05.29】
ヒート [DVD]
ヒート [DVD] (JUGEMレビュー »)

ロバート・デニーロvs.アル・パチーノ、この豪華共演が「午後のロードショー」で掛かるとは!
マイケル・マン監督が脚本も手掛けており、適度に緩急を付けながら3時間近く視線を釘付けにします。
まぁ「似た者同士で対照的な立場」という月並みな設定ではありますが、改めて映画は筋書きだけでは分からないなと。
紹介記事【2019.05.28】
フロントミッション サード
フロントミッション サード (JUGEMレビュー »)

遂に全ルート攻略完了、しかし未だ引継ぎ要素は完クリ出来ずボリューム満点!笑
シミュレーションRPGって得意ではないけど、PS2の後継作「FM4」と本作は別格です。
紹介記事【2019.05.26】
PURPLE RAIN (DELUXE) [2CD] (2015 PAISLEY PARK REMASTER, PREVIOUSLY UNRELEASED TRACKS)
PURPLE RAIN (DELUXE) [2CD] (2015 PAISLEY PARK REMASTER, PREVIOUSLY UNRELEASED TRACKS) (JUGEMレビュー »)
PRINCE & THE REVOLUTION
'84年の大出世作&未発表曲集のダブル・リマスタリング作。
同世代では(プリンス=キモい)でしたが、自ら「King of Pop」を名乗った生前のMJより全てが革新的でした。
ソウル/ファンクを抑えたロック・ハードな「パープル〜」と、前作に近いエレ・ファンク中心の未発表曲集なので万人受けしないのは当然だけど本物の「Prince of Pop」は明白よ?笑
紹介記事【2019.05.09】(Disc 1)
紹介記事【2019.05.17】(Disc 2)
ルパン三世 ルパン vs 複製人間 [DVD]
ルパン三世 ルパン vs 複製人間 [DVD] (JUGEMレビュー »)

観たのはTV放映でした、でもどこカットしたかも分かるので。
もはや脱ルパンした立場で多くは語りませんが、アニメ版ルパンの最高傑作です。
本作後の脳マモーが「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」のエゴになる件とかは誰か考察してください、ただ政治ナンセンス的なあのオチは「ルパン三世」が生まれた60年代末の土壌を意識していたのではないかと。
観る度毎に、頭でっかちに神を夢みたマモーの涙が沁みてきます。
紹介記事【2019.06.03】
エクソダスギルティー (通常版)
エクソダスギルティー (通常版) (JUGEMレビュー »)

異なる3つの時代の物語を切り替えながら進む、マルチタイム・ザッピングシステムのアドベンチャー・ゲームです。
資料本「ワールドガイダンス」必携、正直クセが強く微妙ですが。笑
当時流行ったであろう「小説『聖書』」やガイア仮説のSFファンタジー&サスペンス、システム的には不便ですが僕は楽しめました。
紹介記事【2018.11.05】

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最近読んだ本
シオドーラ・クローバー(著)、行方昭夫(訳)「イシ 北米最後の野生インディアン」

僕にとって、本書に巡りあえた事は暁倖に近い思いを抱かせてくれる。
ずいぶん前に池澤夏樹の本で紹介されていた本書に興味を持ち、僕にしては珍しく書名の他に著者名と出版社名まで控えていたが出会う機会を得ぬままメモを紛失したきりとなっていた。
実は長らく絶版となっていて、'03年に岩波現代文庫として復刊するまで入手は困難な状態だったのだ。

1911年、つまり今から数えて100年前に“イシ”はカリフォルニア住民の前に現れた。
彼らの言葉で「人」を意味する「イシ」という名で呼ばれた、絶滅したヤヒ族の最後の一人だった。
かの地には21以上の小部族がそれぞれの儀式や慣習と多様な方言によって独自の文化を育んでいたが、それらはゴールドラッシュに伴う白人移住者の大量移入までの歴史だ。
自警団を標榜する粗野な流れ者たちに追われて僅かな人数が奥地に逃げ延び、崩壊した暮らしと潜伏の日々の中でイシは生まれ育った。

ついに最後の一人となって3年で白人の前に出て来たイシに、数十年も異国の山中に潜んでいられた旧日本兵を思わず連想した。
だがそれは優劣の比較にはならないし、この紳士的な闘士の欠点でもない。
アメリカ人の全体が卑劣な手段で私欲を満たした訳でもないし、原始的な人は理性を持たないといった固定観念が正しくない事も、本書から理解できるだろう。


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著者の娘であるル=グウィンが、日本版の復刊に際して序文を寄せている。
勝手ながら全文引用させていただくが、それは本書が更に広く読まれてほしいとの気持ちからである。



序文――『イシ』再版に寄せて

 イギリスの水夫アレクサンダー・セルカークの実話が、ダニエル・デフォーによって小説化されて『ロビンソン・クルーソー』として世に出たのはずいぶん前のことだった。難破して無人島に打ち上げられた水夫が、山羊皮を身にまとい、何年も何年もひとりぼっちで浜辺をさまよい歩く。……ところがある日、突然、自分のものではない人の足跡を発見するのだ。これは忘れ難い描写である。
 クルーソーが新入りの漂流者に出会い、「未開人」だと知ると、その男に英語のあだ名――「しもべのフライデー」――をつけ、召使い扱いする。二人は結局救出されて、人が住み、都会のある世界に戻れるのだが、そこはクルーソーの世界であって、フライデーの世界ではない。
 イシの物語はクルーソーの物語を逆にしたようなものである。イシの物語は一九六一年の初版以来、アメリカ人の心を強く捉えてきた。無人島のクルーソーの姿よりも、道徳的な意味合いにおいて、イシの姿のほうがアメリカ人の心に強く迫るものがある。クルーソーの孤独は海での嵐という自然力の猛威によってもたらされたのであったが、イシの場合は、同じ人間である筈の白人の卑劣な集団的残虐行為によるのだから。イシは、皆殺しにされた部族の最後の生き残りとして、家族の惨死を悲しみつつ何年間もひっそりと身を隠して暮らしていた。その間に彼の周囲では侵入した白人の町や農園が次々に出来ていったが、彼は足跡を一つも残さなかった。山の中にまだ「未開人」「野生インディアン」が生存しているのをさとられぬようにと、一歩あるくごとに足跡を掃いて消していたのである。何という孤独であったことか! クルーソーの味わったよりもずっと悲痛な孤独である。
 けれども、彼が孤独で悲惨な暮らしにもはや耐えられなくなって白人の世界に迷い出て来た時、彼の見出したのは、皮肉なことに、覚悟していた死ではなく、思いやりと友情と理解であった。そして「未開」から連れ出されると、すぐに近代都市の真中で残りの生涯を送ることになった。
 イシは有史前の石器時代とあわただしく工業化した二十世紀の間に横たわる巨大な溝をたった一歩で跨いでしまったのである。その一歩は品位のあるもので、人間としての尊厳を少しも失わぬものであった。この事実からも、「文明」と「未開」の間に存在するといわれる溝は、実は単に無知と偏見と恐怖心の溝に過ぎぬことが判明する。
 彼がサンフランシスコの人類学博物館で暮らした五年間、イシは有名人であり、いわば観光客が見物に来る天然記念物のようなものであった。けれども一九一六年に亡くなった後は、イシの協力によってヤナ族の言語その他の情報を研究した人類学者や言語学者を除けば、彼の物語は人びとの記憶から薄らいでいった。直接イシと接触のあった人たちが生存している間にイシの物語を、専門家だけでなく一般人のために書き残しておこうという考えがようやく関係者の頭に浮かんだのは、一九五〇年代になってからだった。
私の父で人類学者のアルフレッド・クローバーは、イシをもっとも親しく知っていた人物の一人であったけれど、イシの物語を執筆するのを望まなかった。その理由はよくは知らない。父が私たち子供にイシの話をしたという記憶はない。イシのことを初めて耳にしたのは、両親が、父の同僚で以前からイシについての資料を集めていたロバート・ハイツァーと伝記執筆の相談を始めた時だった。どうして父がイシのことを口にしたがらなかったか、私には想像がつくような気がする。一番大きな理由は心の痛みであろう。一九〇〇年にカリフォルニアにやって来た父は、無数のインディアンの部族や個人が破滅させられ殺されるのを目撃せねばならなかったに違いない。カリフォルニア原住民の言語、暮らし方、知恵などについての情報を、大量殺戮が完了する以前に、少しでも多く蒐集するというのが、何年にもわたる父の仕事であり、このため父は殺戮の目撃者となったのだ。ナチによるユダヤ人大量殺戮に等しいインディアン撲滅の生き残りであるイシは、父の親しい友人かつ教師になった。
それなのに、それから僅か五年後に結核――これまた白人からインディアンへの死の贈物である――で死亡する。どれほどの悲しみや怒りや責任感に父は悩んでいたことだろう! イシの遺体を解剖するという話があった時、父が「科学研究のためとかいう話が出たら、科学なんか犬にでも食われろ、と私の代わりに言ってやりなさい。われわれは自分らの友人の味方でありたいと思います」と記したことで、父の苦悩は明白に理解できる。イシの死後四十年経っても、イシの物語を語ろうと試みるならば、あのやり場のない怒りがまたこみ上げてくる――父は、そのように信じていたのかも知れない。
 実際にイシの物語を書くことになったのは、私の母シオドーラ・クローバーであった。母はイシにじかに会ったことがないので、父の味わった激しい感情を直接感じなくて済んだのだ。執筆中、母は父の助力を仰いでいたが、本の出版を見ずに父は他界した。カリフォルニア征服の身の毛もよだつ物語を語り、人間が「文明、進歩、明白な天命」の美名のもとに行う悪事を再確認するというのは、母にとって困難で時間を要する仕事であった。しかし母は、ひるむことなく、客観性を重んじ、しかも深い共感をこめてイシの物語を語った。イシその人も母の仕事に協力したと思う。彼の寛大で聡明な精神が暗い道を進む母の行く手を明るく照らしてくれたのであろう。本書の読者にもイシは同じようなことをしてくれていると思う。
『イシ』はベストセラーとなり、今では万人の書となっている。本書が力となって、アメリカ西部史に関する人びとの考え方は変化したし、また、一個のヒューマン・ドキュメントとして無数の読者を感動させてきた。『イシ』を世に送ってから亡くなるまで、母のもとには読者から感謝の手紙が届いたが、そのほとんどすべてに「読んで泣きました……」と記されていた。それは理不尽な殺戮への恥の涙というだけでなく、悲惨さの中で美しいものに出会った喜びの涙だと思う。
 イシの足は「幅広で頑丈、足の指は真直ぐできれいで、縦および横のそり具合は完璧で」あった。注意深い歩き方は優美で「一歩一歩は慎重に踏み出され……まるで地面の上をすべるように足が動く」のであった。この足取りは侵略者が長靴をはいた足で、どしんどしんと大またに歩くのとは違って、地球という共同体の一員として、他の人間や他の生物と心を通わせながら軽やかに進む歩き方だ。イシが今世紀の孤島の岸辺にたった一つ残した足跡は――もしそれに注目しようとしさえすれば――おごり高ぶって、勝手に作り出した孤独に悩む今日の人間に、自分はひとりぼっちではないのだと教えることだろう。

一九九一年六月六日
アーシュラ・K・ル=グウィン
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