スキャナー・ダークリー [Blu-ray]
スキャナー・ダークリー [Blu-ray] (JUGEMレビュー »)
俳優の仕草や表情をアニメとして再構築する、非常に手間の掛かった映像が生理的に苦手な人もいるでしょうね。
しかしながら出演者も(誰々が出てるから)という理由で観て欲しくはないでしょう、自伝的要素の強い原作を尊重した結果としてのスキャニメーションは実に効果的です。
意義を見出せない業務に延々と従事させられる主人公、彼の破滅を前提とした麻薬撲滅作戦…小さな政府がもたらした民間委託の陥穽、委託された組織間のマッチポンプは緩いディストピアですが。
どこまでが虚構でSFなのか、エンディングには賛否が分かれそう。
紹介記事【2019.07.27】
ブレイク・ビーターズ [ ゴードン・ケメラー ]
ブレイク・ビーターズ [ ゴードン・ケメラー ] (JUGEMレビュー »)
旧東独、といっても今じゃ通じなさそうですが…80年代の社会主義国でヒップホップに目覚めちゃった若者と、彼らの活動を体制翼賛に取り込もうとする当局との丁々発止を描く青春コメディ。
飼い慣らそうとする権力側と調子を合わせつつ苦悩する主人公たち、ベルリンの壁が崩壊して彼らを待ち受けるラストのほろ苦さとタフさに男泣きです。
自分でいる事を描いている点で、英国のサルサ映画「カムバック!」と併せてオススメ。
紹介記事【2019.11.02】
ダーリン・イン・ザ・フランキス 1《完全生産限定版》 (初回限定) 【Blu-ray】
ダーリン・イン・ザ・フランキス 1《完全生産限定版》 (初回限定) 【Blu-ray】 (JUGEMレビュー »)
荒廃した世界で生き残りを賭けて地底人と戦う少年少女、その謎が明らかになるにつれ絶望の色は増すばかりですが…絵空事に潜む「茶色の朝」の未来、大人目線で子供たちの希望を切に願ってしまいました。
次の世代のために何が出来るだろう、この気持ちを失わずにいたいです。
紹介記事【2019.08.28】
月曜日の友達(1-2巻 全巻) 全巻セット
月曜日の友達(1-2巻 全巻) 全巻セット (JUGEMレビュー »)
中学生になったばかりの頃の、世界の拡がりに戸惑う姿は性別や世代を超えて響きますね。
作画力もストーリーテリングも卓越してます、些細な一瞬を捉える巧さが。
忘れていた何か、忘れたくなかった何か…最後のコマに、胸が苦しくなりました。
紹介記事【2019.11.11】
TVアニメ『プラネット・ウィズ』オリジナルサウンドトラック [ 田中公平 ]
TVアニメ『プラネット・ウィズ』オリジナルサウンドトラック [ 田中公平 ] (JUGEMレビュー »)
(↑※サムネイルのリンクはサントラにしています)
所謂スピリチュアルなストーリーでありながら、どこか70年代アニメっぽいお約束とフォーマットをごちゃ混ぜにして力技で着地させたような奇想天外さが独特。
戦隊ヒーローに学園モノ、ジャンプ的な熱血インフレ勝負など…ネタの重ね掛けでも訳分からなくならない見事な構成、思いがけずラストに泣かされました。
正義のあるところに悪がある、よって正義は愛ではない…ならば善とはなんなのか? 先ずはご覧あれ。
紹介記事【2019.09.10】
ポルノ☆スターへの道 [ ニック・スウォードソン ]
ポルノ☆スターへの道 [ ニック・スウォードソン ] (JUGEMレビュー »)
ラジー賞を独占した下ネタ満載ムービー、とりあえず下品ですけど線引きはキッチリしてますね…笑わせる内容は、少なくとも男性なら他人事じゃないというか。
女性同士の巨乳幻想みたいなね、目の付け処が上手いなぁと。
まぁ万人向けではないにせよ、僕は感心しつつ大笑いしました。
紹介記事【2019.10.17】
夜長姫と耳男 (岩波現代文庫) [ 近藤ようこ ]
夜長姫と耳男 (岩波現代文庫) [ 近藤ようこ ] (JUGEMレビュー »)
原作者の作品は知らないので、本作は衝撃的でした…こんな物語が書かれていたのかと、まるで伝承の聞き書きか夢を書き起こしたような浮遊感!
印象としては南伸坊が中国の怪異譚を漫画にした「仙人の壺」に近い、無闇に説明しようとしない描線のアッサリ感が素晴らしいです。
空白の多さに、却って想像力を掻き立てられました。
紹介記事【2019.11.25】
さよならの朝に約束の花をかざろう 通常版 [Blu-ray]
さよならの朝に約束の花をかざろう 通常版 [Blu-ray] (JUGEMレビュー »)
不老不死というか不死者の物語にハマっているとはいえ、ファンタジー世界が舞台だとなぁ…と思ってましたが、不死者の(一般的な寿命の人間社会で生きる哀しみ)というツボを丁寧に描いていて好感が持てました。
寓話的なラストが作品世界と相まって、爽やかに切ないです。
紹介記事【2019.09.23】
おとなのけんか [ ジョディ・フォスター ]
おとなのけんか [ ジョディ・フォスター ] (JUGEMレビュー »)
血生臭い原題の割に、ほぼダイニング一間で完結している会話劇です。
子供の喧嘩に親が出て、大人同士で和やかに話し合って解決する目論見が破綻してエスカレート。
隣人を愛せれば戦争なんて起きない訳で、そんな皮肉な原題と裏腹に子供同士は親心を知らず…淡々としてますが大いに笑わせてくれます、個人的にはオススメ。
紹介記事【2019.10.22】
【中古】 山本耳かき店 ビッグCスペシャル/安倍夜郎(著者) 【中古】afb
【中古】 山本耳かき店 ビッグCスペシャル/安倍夜郎(著者) 【中古】afb (JUGEMレビュー »)
耳かき店ブームの火付け役、なんて書いては申し訳ないのですけども…決してブームに便乗した後追いではない、と。
穏やかな時間の流れる小さな町で、耳かき屋さんを訪れる客の脳内イメージが秀逸です。
こんな表現があったのか、こんな漫画があったのかと目からウロコ耳から(略)。
紹介記事【2019.12.23】
グラン・プリ [Blu-ray]
グラン・プリ [Blu-ray] (JUGEMレビュー »)
最初はソール・バスの映像分割がスタイリッシュというより情報過多に感じましたが、それが後から効いて来るんですね…世界各地を転戦するF1レーサーと彼らを取り巻く人間模様が主軸ながら、走行シーンも見甲斐があります。
クールなドラマと60年代のムードが、ダンディな三船敏郎も含めて現代とは別世界のようです。
紹介記事【2019.12.21】
絵はがきにされた少年 [ 藤原章生 ]
絵はがきにされた少年 [ 藤原章生 ] (JUGEMレビュー »)
アフリカに対する先入観や固定観念が、ことごとく覆されます…偏見を持たないように心掛けていたつもりでも、日本にいて伝わってくる情報自体にバイアスが入っている訳ですが。
西欧支配の呪縛に歪められた各地の民族性や搾取の構造など、日本では見えにくい暗部が著者の目を通して見えてくるようで。
アフリカの話であり、同時に現代の実像でもあるのでは?と。
紹介記事【2019.09.1】
【中古】 マンガでわかる 戦後ニッポン /手塚治虫(著者),水木しげる(著者),つげ義春(著者),はるき悦巳(著者),ちばてつや(著者) 【中古】afb
【中古】 マンガでわかる 戦後ニッポン /手塚治虫(著者),水木しげる(著者),つげ義春(著者),はるき悦巳(著者),ちばてつや(著者) 【中古】afb (JUGEMレビュー »)
現代に至る国内の移ろいを漫画に語らせる好企画アンソロジーです。
漫画にしか出来ない表現は、例えば三輪自動車が走る風景でありリンチされる米軍の操縦士であり…基本的に主観視点であるが故の、俯瞰の効く文学表現よりも接地した仮想体験なのかも。
いわば漫画こそが伝え得た戦後の一片、切り口を変えて続けてもらいたいですね。
紹介記事【2019.12.12】
あきれたあきれた大作戦 [ ピーター・フォーク ]
あきれたあきれた大作戦 [ ピーター・フォーク ] (JUGEMレビュー »)
笑いって鮮度があると思ってました、本作を観るまでは。
先が読めずに引き込まれましたが、確かに繰り返し観たくなるかも…計算されたシナリオが効いた笑いと、映像的な古さもまた味わい深いです。
スタンダードでバカバカしくて無駄のない、意外な傑作。
紹介記事【2019.12.10】
人気マンガ・アニメのトラウマ最終回 極限編 [ 鉄人社編集部 ]
人気マンガ・アニメのトラウマ最終回 極限編 [ 鉄人社編集部 ] (JUGEMレビュー »)
面白可笑しい切り口で紹介されてるので、ファンの方にしてみれば物申したい点も多々ありそうですが。
様々な事情から意外な最終回を迎えていた、有名な作品の数々に先ずビックリ…知って何かの役に立つ訳ではありませんけど、やはり切り口が面白いのですよ。
紹介記事【2019.09.24】
【国内盤CD】【ネコポス送料無料】ファウンテインズ・オブ・ウェイン / トラフィック・アンド・ウェザー
【国内盤CD】【ネコポス送料無料】ファウンテインズ・オブ・ウェイン / トラフィック・アンド・ウェザー (JUGEMレビュー »)
「Stacy's mom」の青春パンクをイメージしてたら好い意味で裏切られました。
どこかSDP「スチャダラ外伝」に通じる旅アルバム、共通する根っこは世代なのかグローバル環境なのか…しかしELOっぽさを連想させるサウンドも厭味なく無理して頑張ってない感じだし、三人称のスキットみたいに様々な切り口で綴られる旅の寸描が詩的。
パッキング上手で飽きさせない仕上がりかと。
紹介記事【2019.07.08】
【中古】[PS2]ローグギャラクシー ディレクターズカット(Rogue Galaxy Director's Cut)(20070321)
【中古】[PS2]ローグギャラクシー ディレクターズカット(Rogue Galaxy Director's Cut)(20070321) (JUGEMレビュー »)
無印版も僕は楽しめましたが、ダレ要素を改善して全体的にボリューム・アップしておりオススメです。
難を言えば、このDC版では攻略本が出てない事ですね…特に武器の合成レシピが違っているし、追加武器はノーヒントで試行錯誤の連続に。
水の惑星にある3連宝箱は、多分エリアボスに乗って飛び移らなきゃ取れないと思うので、これからプレイする方は気を付けてね!笑
紹介記事【2018.07.19】
【中古】PS2 スターオーシャン3 Till the End of Time
【中古】PS2 スターオーシャン3 Till the End of Time (JUGEMレビュー »)
ディレクターズ・カット版が出てるようなので、そちらをオススメします。
僕も終盤でメニュー画面を開こうとしてブラックアウトや異音と共に「ディスクからデータを読み込み中です」と表示されたままフリーズでプレイ断念中です。笑
リアルタイム・バトルの忙しさは好みの問題として、城下町などの雰囲気が最高!
中世レベルの惑星に来た主人公がハイテク宇宙人側、という立ち位置はユニークで楽しめました。
紹介記事【2018.07.25】

最近みたDVD
「マイノリティ・リポート」

またワゴンセールで買っちゃいましたよ、別にレンタル店でも置いてるでしょうけど¥280なら借りるのと大した違いがないのでね…'02年のSF映画ですが、まさか特典映像はおろか新作紹介すら収録なしとは!笑
スティーヴン・スピルバーグ監督のトム・クルーズ主演作、原作はP.K.ディックの短編小説ですが「犯罪予防局の『少数報告』」という基本設定を借用した程度で…すっかりSFプロットのサスペンスに仕上がってますね、近未来のワシントンD.C.で運用されている防犯技術の闇と権力に翻弄される愚直な男の物語という感じ?

トムが演じるのは辛い過去を引きずる有能な捜査官ジョン、プレコグ(予知能力者)たちが見せる未来映像で彼が殺人者に…知らない奴を殺す訳がない、だけどシステムの実績に例外がない事を知っている彼は真相を追って火中の栗拾いへ。
あらゆる広告の網膜走査によって監視されるとは鋭いですな、しかしプレコグの人権を蹂躙する犯罪予知システム&未来犯罪自体に疑問を抱かない市民が現代日本の延長に見えて怖い!
アクションはコリン・ファレル主演版の「トータル・リコール」っぽいけど、謎が謎を呼ぶスリリングな流れから赦しと購いの硬派な展開に至る物語は見事。

司法局の調査官ダニー・ウィットワー役はリメイク版「トータル〜」のコリン・ファレル、上司でシステム創設者のラマー・バージェスを演じるのは名優マックス・フォン・シドー!…プリコグのアガサ役をサマンサ・モートン、ヤミ医者ソロモン役を演じたのは怪優ピーター・ストーメア
ところで日本語吹き替え音声が「堀内賢雄根谷美智子バージョン」と「須賀貴匡&水樹奈々バージョン」の2種類あって、別々のTV局で放映されたにしては他の声優が一緒みたいだしどういった事情なのか今ひとつ腑に落ちませんね?

個人的には先に観た「須賀&水樹」では、須賀の声が若すぎて違和感ありすぎでした…逆に「堀内&根谷」では(堀内はトムのフィックスなのかな)って位に自然に感じられ、アガサの方は両者とも似ていて区別が付きにくかったですね。
いずれにしても二度観るとやはり一度だけじゃ気付かなかった発見はあるものですね、特に導入部はアガサの能力の高さやジョンの分析力を見逃しやすい気が…先端技術が歪に発達した如何にもな未来社会は随所にディック作品へのオマージュが散りばめられ(仮想体験や脳からのダウンロードなど)、眼球絡みのジョークも二度目は笑えます。

オープニングの20世紀フォックス&ドリームワークスのタイトルロゴが、モノクロがかってる上に水面下のようなモアレが入っています…アレは上手いですね、意味ありげで思わず最初から画面に釘付けですよ。笑
エンドロールのスタッフ・クレジットもキャストを後ろの方に持ってきたのも、途中で席を立たせないテクニックなんでしょうなぁ?
ちなみに音楽はウィーン交響楽団によるクラシックやビリー・ホリデイとかヘンリー・マンシーニ楽団といったSFらしからぬ選曲が、ジョン・ウィリアムズの音楽を悪目立ちさせず好い案配に感じられました。


*以下の動画は、携帯からでは視聴できないかもしれません。

『Minority Report (2002) Official Trailer #1 - Tom Cruise Sci-Fi Action Movie』
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    | cinema | 2015.09.17 Thursday | comments(0) | trackbacks(0) |
    最近みたDVD
    「トータル・リコール」

    バーホーベン監督のではなく、レン・ワイズマンなる監督による'12年の方です…しかし本作は旧作のリメイクというより、原作を異なるアプローチで描き出した一種のバージョン違いという感じかもしれません。
    21世紀末に地球規模の化学戦争が勃発し、大部分が人の住めない環境となった未来…地球の真裏にある富裕層の区画へと、文字通りの交通手段“フォール”で通勤する労働者たち?
    そんな設定、旧作どころか原作にもありませんでしたよねぇ。

    やはり未来は「ブレードランナー」的なサイバーパンク、要は夜と雨とアジアの喧騒ね…まぁ好きなんですけどこういうの、そしてシュワルツネッガーと違ってリコール社には行くけど火星には行かないのです。
    7年連れ添った愛妻が6週間前に妻を演じ始めた監視役で、消された記憶を取り戻せないまま急変した状況に翻弄される主人公は「ボーン」シリーズそっくり…反射的に警官を撃退したり入り組んだ家並みを逃げまくる体術も、身に覚えのない貸金庫から物騒な代物が出てくるのもオマージュ?

    しかし追っ手は“ステキな鬼嫁”ケイト・ベッキンセール、夫で裏切り者で伝説の先輩コリン・ファレルに抱く殺意の含みがコワイ!…ちなみにレジスタンスの代表者は「銀河ヒッチハイク・ガイド」のビル・ナイ、それと本作にはワン・パイならぬ3パイも出てきますけど別に「クン・パオ!」は関係ないんだよね?笑
    ピアノの場面でも「ブレード〜」を連想しましたが、ベートーベンの「テンペスト」が演出的にカギとか?

    大体P.K.ディックの原作は短編で、旧作にしても本作にしても導入部から後は独自展開なんですが…二重スパイの設定から更に捻って、やはり記憶をテーマにしたウィリアム・ギブスンの作品を映画化した「JM」のテイストまで織り込みつつもクライマックスはそこじゃないというね!
    思えば「ブレードランナー」も記憶がテーマで、P.K.ディックが追究していた自己存在の一側面でもあります…しかしこの“TSUTAYAだけ!”って銘打たれたDVDは(資金回収できない駄作か版権切れの古い名作か)だと思ってましたが、考えを改めなきゃ!笑

    どうでもいいけどエンドロールのキャストが分かりにくかったな、登場順でもアルファベット順でもないので…ハリウッド映画には特に決まりがないのかなぁ、端役は省略していいとか?


    以下は、個人的メモ。

    “答えは過去にではなく現在にある それが真実だ”
    “過去は主観的な概念にすぎん 我々にはそれが真実に見える だが心は今を生きようとする”


    *以下の動画は、携帯からでは視聴できないかもしれません。

    『映画『トータル・リコール』予告編』
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      | cinema | 2013.08.22 Thursday | comments(0) | trackbacks(0) |
      最近読んだ本
      フィリップ・K・ディック(著)、大森望(編)「トータル・リコール――ディック短篇傑作選」

      初版'12年のハヤカワ文庫SF、再び映画化される表題作の他「マイノリティ・リポート」原作も収録…編者あとがき曰く“定番の名作+知られざるお蔵出し作品という布陣”の10編。
      僕にとってSFそのものといった作家なのですが、実は本書が初P.K.ディックなのでした…存在感がふくらみ過ぎて(読んでみたら違ってた)となるのが不安で、先ずは短編集からと思っていたら意外と縁がなくて読みそびれてたのです。
      でもまぁ杞憂でしたね、ムラはありましたが大満足!

      表題作はシュワルツネッガー主演の映画でいう火星行きまでで、寺沢武一の「コブラ」同様に話の掴みとして使われてたんですねぇ。
      しかし本編は更にヒネリが加えられていて、忠実な映像化には向かないけれど短編SFとしては秀逸です。

      続く「出口はどこかへの入口」は(冴えない日々から宇宙の最前線へ!)的スペースオペラ展開と思わせてのちゃぶ台返しにビックリ、それに“貧乏に毛のはえた程度の境遇を、ちょうど女の子にふられたときとおなじように、おとなしく受けいれていた。ある意味で、これが自分の限界であり、分相応のところだ。気にいらないものにがまんして従い、その態度を美徳とみなしている。(中略)いいかえれば、当局がおまえを欲しいときは、もうおまえを手に入れている。必要なのは事務手続だけなんだ”というマーク・トウェイン並みの辛辣さにもビックリ。

      50年代に発表された「地球防衛軍」は冷戦ネタで、ロボットの計略に恐怖した後で人類以上の大人な対応に諧謔心をくすぐられます…“いっしょに働く人間には外交はいらない。会議室のテーブルではなく、仕事の現場で問題を解決していくからだ”という台詞は、あらゆる肥大した産業に今なお響く箴言ですよね。

      これまた50年代の「世界をわが手に」はノー・フューチャーな閉塞感から流行する世界球の扱いを巡り、やや訓話めいた哲学的な会話劇が展開します。
      世界球の発想にバイオスフィア・プロジェクトを連想しましたが、そこに万人の慰み物というシニカルさを加味した辺りがユニークです。
      そして“行き場をなくした大量のエネルギーが体の中に溜まっている。発散できないエネルギーがね。そして、閉じこめられたエネルギーは腐ってゆく。攻撃的になる。(中略)破壊したいという本能的な欲望なんか存在しないんだよ。あるのはエネルギーだ――そしてそのエネルギーは、チャンスさえあれば、どこにでもはけ口を見出だそうとする”という指摘は、ベトナムの仏僧が説いた言葉と驚くほど一致しています…潜在する怒りの感情を建設的に開放する事、それが出来なければ現実も本編のような結末を迎える気がします。

      「非(ナル)O」は古典SF「非Aの世界」がネタ元だそうで、自分の感情と思考を自在に操れる“二元的な考えかたを排した非アリストテレス哲学”の実践者たち非A人へのオマージュ作品なのだそうですが。
      完全に倫理的で人間的感情を持たない非O人は“完全なる経験論者だ。倫理的な禁忌や道徳的文化的タブーに惑わされることがない。パラノイドは、ものごとをありのままに見る。実際には、彼らだけが正気なんだ”と説明され、彼らがヒトラーの著書「我が闘争」を理解している事までは面白く読めるのですけどね…そういえば「成恵の世界」ってアニメがあったけど、どんな話なのかちょっと観てみたくなりました。笑

      いかにも50年代らしい「訪問者」やスティーヴン・キングを思わせるサスペンス「吊るされたよそ者」、小品ながら先日の「ウォンテッド」よりは面白い映画になりそうな「フード・メーカー」だけでなく「マイノリティ・リポート」までも50年代に発表されていたんですね…先日の「ノパルガース」頃がパルプSFの後期と思ってましたけど、チープな冒険活劇調SFと同時代に本書の主だった作品も書かれていたとは!
      いやはや、多少は知った気でいた海外SF史ですが大甘でした…精進します。笑


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      【最近みたDVD】「スキャナー・ダークリー」| 2019.07.27
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        | books | 2013.04.30 Tuesday | comments(0) | trackbacks(0) |
        最近読んだマンガ
        浦沢直樹×手塚治虫「プルートウ」3巻

        4巻を過ぎての再読です…ウランとプルートゥの交流を軸に、光子ロボットのエプシロンと反ロボット教団のアドルフが初登場です。

        中央アジア紛争の発端は、旧ペルシア王国内での人道主義に反するロボット虐待や差別と大量破壊ロボット製造疑惑でした…トラキア合衆国が主導したボラー調査団の派遣と、ウヤムヤのうちに始まった紛争の鎮圧を要請された世界最高の7体。
        その調査団メンバーと7体のロボットを標的とする殺害/破壊行為の謎を、もはや単純化した勧善懲悪で語れる時代ではありません。

        ユーロポール捜査官のゲジヒトもまた7体の内の1つであり、亡き兄の復讐を誓うアドルフは教団の活動方針に利用されていきます。
        7体の中で唯一人、紛争への徴兵を拒んだエプシロン…世界中から非難されながらも、今こそ憎しみの連鎖を断ち切れと訴えます。
        彼の言葉どおり「大義なき争い」となった中央アジア紛争、その渦中で目撃された巨大な人影こそが「大量破壊ロボット=ボラー」なのか…日本に潜伏していたプルートゥの二面性と、謎めいたアブラー博士の目的は何なのか?

        しかし上手いですね見せ方が、未来世界にベタな昭和ギャグをまぶしてみるだけでなくカット割りで映画的なユーモアを演出したり…でもひょっとしたら同じクライム・サスペンス「MONSTER」の手法で、舞台を過去から未来に移したようにも思えなくはなかったり。
        夏目房之介による巻末あとがきで“浦沢的主題”として挙げられた「記憶」や「人間性への懐疑」は、P.K.ディック直系という感じですね。


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          | comic | 2013.02.07 Thursday | comments(0) | trackbacks(0) |
          最近みたDVD
          「ブレードランナー」

          今から7年後のL.A.を舞台にした、クライム・サスペンス調のSF映画だ…しかし公開から30年も経っているとはね、大都市の超高層ビルが油井のように火を噴き上げるのもご愛敬。
          ハリソン・フォード演ずるデッカードは元刑事、ブレードランナーと呼ばれる凄腕の「レプリカント処刑人」だった…仮初めの記憶を与えられていた試作型のレイチェルに惚れてしまい、職務命令との板挟みに。

          ネクサス6型は全面的に人間を凌駕する能力がある代わり4年前後で寿命が尽きる、シャトルで反乱を起こし地球に潜伏した彼らの願いは切実なものだった…そもそもチェコ語の労働に由来するロボットは動物や下層人種が果たしてきた下働きの代替案に過ぎない、そんな人間の傲慢さをレプリカントの涙は雄弁に語る。
          虐げる存在に感情を求めてしまうのは何故か、理性を追究しながら暴君であろうとする人間とは何者か?
          クライマックスの、双方共に動かない右手…残された時間を、如何に生きるか?

          実は公開当時、画面は暗いしストーリーのディテールも理解できなかった。
          原作者のP.K.ディックよりシド・ミードの視覚効果に目を奪われていたけれど、それでもラストのシークエンスは温かな雨のように沁みて、SFの本質は哲学である事を感じたものだ。
          ヴァンゲリスの「ブレードランナー愛のテーマ」の優美さは、アラン・ルドルフ監督の「トラブル・イン・マインド」のテーマ(MARK ISHAM & MARIANNE FAITHFULL「The hawk」と並ぶシンセ映画音楽の名曲だ。

          このDVDには「完全版」「ディレクターズ・カット(最終版)」「ファイナル・カット」が収録されているので、日を改めて観てみるつもりだ。


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            | cinema | 2013.02.06 Wednesday | comments(0) | - |
            最近読んだマンガ
            浦沢直樹×手塚治虫「プルートウ」1巻

            タイトルには“鉄腕アトム「地上最大のロボット」より”と但し書きが付き、作者クレジットにも“長崎尚志プロデュース 監修/手塚眞 協力/手塚プロダクション”と付いてます。
            しばらく前に3巻だけ読んで、なんというか(ふーん)という感じだったのですが…甘かったかもしれません、かなり引き込まれます。

            アトムが登場するのはラストで、しかも普通の少年です…いやもちろんロボットなんですけどね、主人公もユーロ連邦のゲジヒトというロボット刑事なのです。
            スイスの異常な山火事とロボットの残骸、ドイツで殺されたロボット法擁護団体幹部…ゲジヒトがうなされ続ける悪夢と唯一体の「人間を殺したロボット」、ロボット同士が殺し合った中央アジア紛争という歴史。

            各地で原因不明の破壊が相次いでいる“最高性能のロボットたち”の中には、ゲジヒトやアトムのように人間と見分けがつかないタイプもいます…旧式のロボットでも心はあるのですが、法律で権利を保証されてはいてもロボットと人間の意識には未だに大きな隔たりがあるのでした。
            P.K.ディックの作品に込められた“どこまでが人間で、どこからが人間じゃないのか”というテーマが、ここにも表れています。


            次巻

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            【最近読んだマンガ】浦沢直樹×手塚治虫「プルートウ」1巻| 2013.01.14
            【最近読んだマンガ】浦沢直樹×手塚治虫「プルートウ」2巻| 2013.01.17
            【最近読んだマンガ】浦沢直樹×手塚治虫「プルートウ」3巻(再読)| 2013.02.07
            【最近読んだマンガ】浦沢直樹×手塚治虫「プルートウ」4巻| 2013.02.01
            (原作)
            【最近読んだマンガ】芳崎せいむ(漫画)「うさぎ探偵物語」1巻| 2015.12.01
            【最近読んだマンガ】芳崎せいむ(漫画)「うさぎ探偵物語」2巻| 2015.12.08
            【最近読んだマンガ】きら「SQ[エスキュー]」| 2015.12.29
            (“江戸川啓視”名義)
            【最近読んだマンガ】クォン・カヤ(作画)「プルンギル ―青の道―」2巻| 2012.10.25

            〈手塚治虫〉関連記事:
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              | comic | 2013.01.14 Monday | comments(0) | trackbacks(0) |
              最近読んだ本
              ライマン・フランク・ボーム(著)、ウィリアム・ウォレンス・デンズロウ(画)、宮本菜穂子(訳)「オズのふしぎな魔法使い」

              亀井俊介なる人物と巽孝之が監修を務める「アメリカ古典大衆小説コレクション」の2巻目で、全12巻の内では「ベン・ハー」と並ぶ著名な作品です。
              子供の頃に読んだり、テレビで観たりしてきた物語ではありますが…こうして大人向きに訳された本作を読み直してみると(こんなにも面白かったのか!)と、文字どおり「目からウロコの落ちる思い」でした。

              前半でドロシーたちはエメラルドの都へと辿り着いてしまい、西の魔女を退治するよう命じた偉大な魔法使いも中盤で舞台から退場してしまいます…失意のドロシーが旅発つ南の国への新たな冒険と意外な魔法でカンザスへ帰り着くまでの、ストーリーテリングや伏線は“RPGの祖”と詠われる「指輪物語」と並ぶ現代ファンタジーの源泉と言って差し支えないでしょう。
              しかしドロシーが養女で養い親は無愛想で、その上カンザスが灰色に褪せた荒れ地だったなんて!

              本作が書かれたのは1900年、ワイルドウェストが消滅しローラ・インガルスは成人しヨーロッパ富裕層にグランドツアーが流行った時代…「奇跡の少年」から「テルミン」へ移行する、オカルティズムとテクノロジーとが同居していた時代の空気を解説する巽孝之の文章も非常に興味深いです。
              マーク・トウェイン作「アーサー王宮廷のヤンキー」ウィリアム・モリスによる「ユートピア便り」の系譜や、商魂逞しい著者の波瀾の実生活とルイス・キャロル作「不思議の国のアリス」と本作の関連性など。

              余談ですがP.K.ディック(数多くの作品が映画化されているSF作家)に多大な影響を与えたのも、著者の没後も書き継がれたオズ・シリーズなのだとか。


              関連記事:【最近みたDVD】「オズの魔法使い」| 2013.03.11
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                | books | 2013.01.09 Wednesday | comments(0) | trackbacks(0) |
                最近みたマンガ
                寺沢武一「SPACE ADVENTURE COBRA THE PSYCHOGUN VOL.1」

                これは先日買った、プレイステーション・コミックという代物です。
                要するに(ゲーム機で見るケータイ・コミック)というところですね、紙芝居に効果音が付いた感じです。

                リリースが'98年という事は、とっくに連載終了してますよね?
                本作は新たに起こした専用ストーリーなのでしょうか、火星を舞台に美女博士と化石虫の秘密に迫ります。
                もちろん海賊ギルドとのドンパチはありますし、宿敵クリスタル・ボーイも登場しますが…「VOL.1」だけあって、面白くなってきたところで幕切れです。

                僕としては原作の第1話を期待してたんですよ、あの「トータル・リコール」みたいな…というか順序でいえばP.K.ディックをコブラがパクったのだとしても、連載開始でガッチリ心を掴まれたエピソードなので最も印象深いのです。
                とりあえず何巻まであるのか分かりませんが「VOL.2」を入手するのも難しそうな気がします、まぁ必死になって続きを見ようって気持ちにはなりませんけど。

                所要時間はオートプレイ遅いモードで1時間ちょっと、最速でもオープニングからスタッフロール&次回予告まで見たら同じ位じゃないかなと思います。
                作者は連載当時から(?)CGで原稿制作を始めていましたよね、でも本作では原作と原画のみを担当されたようで…データベースのショボいタートル号とか、本編のコブラが小悪党じみた表情なのとかはCG原稿を流用すればマシになってたんじゃないのかと勝手ながら残念に思ってしまいました。
                以下の画像は原作の第1話より。
                スペース・コブラ 1(←左クリックで拡大表示されます)
                スペース・コブラ 2(←左クリックで拡大表示されます)
                スペース・コブラ 3(←左クリックで拡大表示されます)

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                  | comic | 2012.09.01 Saturday | comments(0) | trackbacks(0) |




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